【インタビュー】独自の工夫で「見えにくさ」に挑戦を続ける探究者・ITエンジニアのKTさんの工夫に迫る!

ロービジョン(弱視)の見え方は人それぞれ、そのため「見えにくさ」に対応するための工夫はとても多様です。一人一人が自分の見え方に合わせて苦労しながら色々と工夫を重ね模索している方が多いのではないでしょうか。一方で他の人がどのような工夫で仕事の効率を上げているかを知る機会はあまり多くはありません。視覚障害者が実際にどのように仕事をしているかをご紹介するインタビューシリーズ、今回は独自の工夫でご自身の「見えにくさ」に対応しておられるITエンジニアのKTさんにインタビューし、その工夫の数々、そしてITの最前線で仕事をされているご苦労についてお話をお聞きしました。

KTさんのデスク回りの写真

KTさんプロフィール:
ITエンジニア。IT企業でプログラミングや検証、システムの運営構築など幅広い業務を担当。子供の頃から弱視。

専門性を生かし、IT企業の最前線で活躍する「フルスタックエンジニア」

― KTさんは、IT企業の第一線でお仕事をされているということですが、具体的にはどのようなお仕事をされているのですか?

KT:
私は3年前に転職して今の会社で仕事をしていますが、以前の会社にいた時と基本的にはあまり業務は変わっていなくて、プログラミングや開発したプログラムをサーバーで動作させて正常に動作しているかを確認するなど、システムに関わる全般をやっています。今の会社は、会社自体としてはデータ分析がメインなのですが、私はどちらかと言うとプログラム開発のほうが得意なので、そちらのほうを主に担当しています。

― そうするとプログラマーやシステムエンジニアといった分野のお仕事になるのでしょうか?

KT:
最近のIT業界では、プログラマーとかシステムエンジニア、ネットワークエンジニアというような業務の分類は、あまりしなくなっていて、求められているのはフルスタックなエンジニアです。システムは、ハードウェアの上にネットワークが載っていて、その上でプログラムが動作しているわけですが、プログラムの中にもOS寄りのところからアプリケーション寄りのところまでのレイヤーがありますが、その一部だけを専門としていてもなかなか仕事にならない。そこで、従来の業務分担にはとらわれないシステム全体を扱えるエンジニアが求められています。

― なるほど、そうするとKTさんは、その「フルスタックエンジニア」としてお仕事をされているということですね。具体的には、どのようなシステムを担当されているのでしょうか?

KT:
私の勤務している会社には、情報セキュリティ関係の研究データを集めているサーバーがありまして、具体的には、例えば、サーバーを運用しておくと外部からサイバー攻撃を仕掛けられるわけですが、それを観測して攻撃の傾向などを分析して研究データとして発表したり、そこから顧客に提供するデータを作成したりするのですが、そうしたシステムの構築や運用を担当しています。

― まさにITの最前線で活躍されているのですね。そういうお仕事の場合、目が見えにくいことはハンディキャップとはならないのでしょうか?

KT:
それは、業務の内容にもよりますね。単純にプログラムを作るだけであれば、それはハンディキャップにはならないですね。ただ、古いサーバーを並べてシステム構築する場合の物理的作業は、視覚に障害があるとやはり難しいですし、あとは画面を使うシステムの場合、その画面を開発する部分は、やはり厳しいですね。

― その辺りは分担して仕事をされているということでしょうか?

KT:
そうですね。画面部分のシステムはフロントエンドと言い、データ処理する部分はバックエンドと言いますが、私は主にバックエンドの部分を担当しています。例えば、以前関わったプロジェクトでは、フロントエンドの部分は外部に委託して開発していましたので、私はバックエンドの部分を担当し二つを接続して全体のシステムを構築しました。
分かりやすい例を挙げると、例えば、ショッピングサイトのシステムでも実際に注文を受ける画面は、写真があったりデザインされている画面があるわけですが、実際の注文データは住所だとか電話番号、商品名と数量、値段と言った数値データになりますよね。ですので、こうしたバックエンドのシステム開発であれば視覚に障害があっても全く問題なく仕事ができると思います。

― バックエンドの部分はテキストで処理できる部分だから、視覚に障害があってもハンディキャップにはならないということですね。ITエンジニアとしての専門性を高めていけば、視覚に障害があってもIT業界で活躍できるフィールドは広がっていくということですね。

自分自身の見え方に合わせてWindowsの設定を調整

― ところで、KTさんは弱視と伺っていますが、今はどのような見え方なのですか?

KT:
現在の視力は、右眼は手動弁(眼前での手の動きが分かる程度の視力)で、光と色も電灯の色が分かる程度です。左眼は0.02です。0.02と0.03の違いと言うと見えている方には分からないと思うのですが、ここには1.5倍の差があるわけです。例えば普通の人の視力が0.5と0.75という視力は、同じ1.5倍の差ですが、ここには車が運転できるかどうかに影響するような大きな差がありますよね。一方で、0.02と0.03は、見える人からは、どちらも同じぐらい視力が弱いとひとくくりにされがちですが、この間には、やはり1.5倍の視力の差があるわけです。実際、視力低下をする段階で、ここを通過するのは本人にとってはとても大きなことだと思っています。

― 0.03から0.02になった時期には、どのようなことが起きたのですか?

KT:
私の場合は徐々に徐々に進行していったので、視力が低下している実感は、あまりなかったのですが、外出の歩行時や商品の値札が見えづらいとか、そういうときに視力が低下してることを実感しました。逆にパソコンやスマホを使っていると、思い通りの大きさに字を拡大したり色調を調節できてしまうので、あまり視力低下に気が付かず、いつの間にか進行していたということにあとから気づきました。

― パソコンやスマホは視力の進行に合わせて色々と調整して使われていたのですね。そうした調整のノウハウやパソコンの使い方についても教えて頂きたいのですが、KTさんは、どのようにパソコンを使っているのでしょうか?

KT:
私は画面拡大とスクリーンリーダーを併用しています。Windowsについては、画面拡大は、Windows7まではZoomTextを使っていたのですが、ZoomTextの機能が拡張されるにつれて動作が重くなり、なかなか思い通りに使えなくなったことから、Windows10になってからはWindows標準の拡大鏡しか使わなくなりました。

― 元々、ZoomTextを使われていて、現在はWindowsの拡大鏡に移行されたと言うことですが、ZoomTextの方が機能は豊富だと思いますが、拡大鏡だけで機能的には問題ないのですか?

KT:
ZoomTextを使っていた時からそうだったのですが、色々な機能があっても、結局やりたいのは、まぶしさを押さえて、かつはっきり見たいということが目的なので、私はZoomTextでもそれ以上の機能は使っていませんでした。ですので、拡大鏡でも対応できたということだと思います。

― Windowsの拡大鏡には、全画面表示、レンズ、固定と3つのモードがあると思いますが、KTさんは、どのように拡大鏡を使われているのですか?

KT:
私は、全画面表示モードで色を反転して使っています。でも、拡大鏡のズーム機能はほとんど使いません。文字の拡大は、Windowsの標準機能やブラウザの拡大機能を使います。
Windows10の設定のシステムの中のディスプレイ設定に「拡大縮小とレイアウト」という設定項目がありますが、私は、この設定を175%に設定して画面表示を拡大しています。最近は、4Kのディスプレイなど解像度の高いディスプレイが出てきていますが、こうしたディスプレイで表示されている小さい文字を拡大するための機能が、このディスプレイの中の拡大機能です。

― Windowsのディスプレイ設定でご自身の見え方に合わせて設定を調整しておられるとのことですが、もう少し詳しく説明していただけますか?

KT:
Windowsのディスプレイ設定の中の拡大でできるのは、アプリのリボンやメニュー部分、デスクトップの表示などの拡大です。この状態で拡大鏡を立ち上げますが、拡大鏡では拡大せずに色反転のみをオンにします。
この時にWindowsで表示される文字にClearTypeフォントが使われていると拡大鏡の色反転で文字がきれいに見えなくなります。その原因は、ディスプレイの上のドットは色を表現するためにRGB3色のドットを横に並べて構成されていますが、WindowsのClearTypeフォントは文字の輪郭をスムーズに見せるためにこのRGBのドットの色を転用して使っていて、通常表示ではこれでうまくいくのですが、これを単純に色反転すると輪郭がうまく表現できなくなってとても見えにくくなります。私は、これがとても気になるのでClearTypeフォントをオフにしています。

― フォントの変更は、Windowsの設定で行っているのですか?

KT:
Windows10の設定 では、「個人用設定」の「フォント」の中に「ClearTypeテキストの調整」という設定があり、ここで「ClearTypeフォントをオフにできるのですが、この設定だけでは変更できない文字表示もあるので、私はWindowsのフォントを任意の物に変更すっるフリーソフトを使ってすべてのフォントを変更しています。

― なるほど、Windowsの設定だけでなく、フリーソフトも活用してメニューやリボンの文字を自分にもっとも見やすいように調整しているのですね。

27インチの高解像度ディスプレイを職場にも導入してもらう

― ところで、KTさんは弱視で見えにくいにもかかわらず、ディスプレイの設定にとてもこだわって、技術的にも探求され工夫されているようですが、こうしたこだわりはどこから来るのでしょうか?

KT:
「綺麗に見えている」ということに安心感ってありませんか。画面上で綺麗に表示されているからこそ、今の自分の視力でどこまで見えているかがはっきりと把握できる。人から提示されて見えるか見えないかではなくて、今の視力で見える範囲を自分で自覚して見ているということが大切だと私は思っています。そうすることで、目の異変にもすぐ気づくことができる。私は、家具の配置などにもこだわるところがあって、そういう性格も影響しているかもしれませんが(笑)。
ですので、私はディスプレイにもこだわっていて、今使っているのはグラフィックスのデザイナーが使う解像度の高い大画面のディスプレイで、値段も10万円ぐらいするものです。

― そういう高解像度のディスプレイは、職場にも要望して導入してもらっているのですか?

KT:
はい。今は新型コロナでテレワークも多く、在宅勤務の時は、自宅では自前のディスプレイを使っていますが、職場の私の席には4Kの27インチディスプレイを設置してもらっていて、職場では、それを使っています。

― こうした大画面のディスプレイの導入は、問題なく会社に認めてもらえたのですか?

KT:
はい。今の会社では必要性を理解してもらい、問題なく導入してもらえました。

拡大鏡で色反転、ブラウザのズーム機能で拡大し、スクリーンリーダーも併用

― Windowsの拡大鏡は色反転のみに使用してズーム機能はほとんど使わないとのことですが、具体的にはどのようにパソコンを操作しておられるのですか?

KT:
先程ご説明したように、Windowsのディスプレイ設定では拡大できるのはメニューやリボンの部分のみです。ですので、アプリケーションプログラムの中の表示は、例えばブラウザやOfficeのアプリケーションであれば、Ctrlキーを押しながらマウスのホイールを回すと画面拡大と縮小が自由に変えられるので、その時の状況に合わせて拡大率を変更しながら作業をしています。最近は、ブラウザ上で動作するアプリケーションが多いので、これでほとんど問題ありません。TeamsもZoomも、私はパソコン上ではブラウザ版を使っていて、この方法で画面を拡大して操作しています。

― KTさんが拡大鏡の拡大機能を使わないのは、何か理由があるのですか?

KT:
なぜ、私が拡大鏡の拡大機能を使わないかと言うと、拡大鏡の拡大機能はマウスの周辺のみしか拡大出来ないことから、マウスを動かしてスキャンしない限り、表示を見落としてしまうことがありますよね。でも、このディスプレイの設定で、例えば175%に拡大すれば、ディスプレイのサイズに合ったレイアウトで拡大されるのでそうした見落としが無い。
また、拡大鏡の拡大は表示されているドットを単純に拡大するので文字が少しカクカクした感じになります。それは、弱視で見えにくいと言っても、あまりキレイには見えない。そういうこともあり、私は、こういう使い方をしています。

― 確かにこの使い方だと、アプリケーションのメニューやリボンは表示が画面上に固定されるので画面の外にはみ出すことはなさそうですね。ところで、KTさんはスクリーンリーダーも使われているということですが、音声と画面拡大はどのように併用されているのですか?

KT:
スクリーンリーダーはNVDAを使っています。私は、まだ見ている領域が多い気がしていて、スクリーンリーダーは画面上の表示にマウスオーバーさせてその場所の文字を音声で読ませるという使い方をすることが多いです。メニューの項目などは目で見て操作していることも多いです。やはり、マウスを使ったほうが効率が良いこともまだまだ多いと感じています。

― スクリーンリーダーとして、オープンソースソフトウェアのNVDAを選ばれた理由は何かありますか?

KT:
あまり、特別な理由はないですね。私自身がソフトウェアエンジニアでオープンソースプログラムにも馴染みがありましたし、私は子供の頃から弱視でしたが、ずっと音声は使っていなくて、スクリーンリーダーを使ってみようかと思った時にオープンソースで無料のスクリーンリーダーがあるということでNVDAを使い始め、そのまま使っているという感じです。

Teamsで共有された会議資料をiPadで手元で拡大:iPadが弱視の就労環境を変えた

― KTさんは転職して今の会社で働かれているということですが、転職はどのように進められたのですか?

KT:
ちょうど今の会社が視覚障害を持っているエンジニアを募集していて、たまたまうまいタイミングで応募することができて転職することができました。中途で実績のあるエンジニアを探していたようで、話を聞きに行ったところうまくマッチングできたという感じです。人事部に視覚障害の方がいて、積極的に視覚に障害のあるエンジニアを採用していたことも大きかったです。現在、約10名の視覚障害者が働いています。

― まさに視覚に障害があっても技術力があれば活躍できる会社だということですね。社内では視覚に障害のある社員同士のコミュニケーションはあるのですか?

KT:
はい。Teamsでコミュニケーションしています。

― 視覚障害者のTeamsの利用は問題はなかったのですか?

KT:
Teamsは比較的スムーズに導入できましたね。全盲の人も問題なく使っているようです。私は、仕事ではパソコン2台と会社支給のiPadとiPhoneを持っていまして、オンライン会議はiPadで入っています。特に弱視の私にとっては画面共有された資料をiPadを手で持って、画面上で拡大して見られるというのは、とても使いやすくメリットが大きいですね。
最近は、会議室でのリアルな会議でもTeamsで資料を共有することが増えてきました。以前はプロジェクターで会議室のスクリーンに画面を投影していた時代もありましたが、これだと弱視にはスクリーン上の画面を見るのは厳しいです。でも、最近はTeamsで画面共有しながらその画面をスクリーンに投影するようになり、これだと手元のiPadでも資料の確認ができるので弱視にとっては、ある意味、素晴らしい状況が実現できています。

― 確かにiPadは弱視の就労環境を大きく変えましたよね。スクリーンに投影された資料を苦労して見ようとしたり、会議室で配布される紙の資料で四苦八苦する必要もなくなりますしね。新型コロナでテレワークが広がって、Teamsで画面共有するのが一般的になったことは大きいですね。

先行ユーザーとして社内システムの導入に関わり、問題点を事前解決

― ところで、社内のIT環境の変更や新しいシステムの導入に追随するのに苦労されている視覚障害者が多いと聞きますが、KTさんはどのように対応されていますか?

KT:
私の会社では、社内で導入するシステムについてもわりとオープンに情報公開されていて、こうしたシステムについては、先行ユーザーの募集があり、それに応募すると導入前に先行して使用することが出来ます。私は、その制度に応募しているので導入システムに関する情報が事前に送られてきます。
Microsoft365が導入されるときには、先行して使ってみて事前に課題を洗い出し、うまく使えない部分については、システム導入前に対策を相談するなど事前に対応することができました。
最近では、ビットロッカー(BitLocker)というハードディスクのデータセキュリティ機能について、パスワードの入力がスクリーンリーダーを起動する前なので音声では対応できない。一方でパスワードを入れ間違えるとパソコンがロックされてしまい仕事ができなくなることから、視覚に障害のある社員のパソコンにはこの機能の適用を免除してもらう代わりに、管理をしっかりやるということを制約するということで対応してもらったという事例もあります。

― それは、システム導入前に視覚障害者の視点でシステムをチェックして、事前に対応してもらっているということですか?

KT:
はい。その通りです。先程のビットロッカーの事例でも、その導入が会社のセキュリティ上の規則だからと言われてしまえばどうしようもないのですが、あらかじめ先行ユーザーとして課題を見つけ、こういう問題があるということを事前に説明できたことで、会社も視覚障害者特有の課題として理解してくれて、じゃあしっかりと管理すれば良いということで、社員を信頼して対応してくれました。

― まさに双方の事情をお互いに理解して合理的な範囲で折り合いをつける。合理的配慮の実践そのものですね。

電動昇降デスクとモニターアームで在宅勤務の環境を整える

― KTさんは、高解像度のディスプレイを使うなど仕事の環境にもずいぶんこだわられているようですが、他にどのような工夫をされていますか?

KT:
新型コロナ禍で、今は、ほとんど在宅で仕事をしていますので、私の自宅の環境についてお話をしますと、自宅にはMacを持っています。これもWindows パソコンと同様、大画面のディスプレイにつないでいます。Macには、VoiceOverというスクリーンリーダーがあるのですが、私はVoiceOverは使わずにスピーチを使っています。これはマウスで選択した範囲を読み上げるという機能です。NVDAにもクリップボードを読む機能がありますが、スピーチもそれと同じような機能です。弱視にとっては、この機能はとても便利です。読みたい場所を選択して音声で読ませて、しばらく耳だけで音を聴いて内容を把握するというような使い方ができます。特に、このスピーチと言う機能は声で文章を読ませながら別の操作が可能なので、例えばニュースを音声で聞きながら出てきた単語の意味を検索して確認するというような使い方もできます。実は、私はこの機能がけっこう気に入っています
Macはプライベート用で、仕事の方はWindows パソコンを使っており、会社貸与のノートパソコンをやはり大画面のディスプレイにつないでいます。

― 在宅勤務の環境もしっかりと整えているのですね。

KT:
最近、在宅勤務時には、私は電動昇降デスクを使っています。
このデスクは電動で高さを変えられるのですが、私は100cmぐらいの高さにしています。この高さだとちょうど立った時にディスプレイが目の前に来ます。また、モニターはモニターアームに取り付けていて、ディスプレイの高さは、これで微調整します。
弱視の場合、顔をディスプレイに近付けたくなるので、ディスプレイが机の上に置かれているとキーボードを置くスペースがなくなってしまう。この点、ディスプレイをモニターアームに固定することで、ディスプレイの下に空間ができて、そこにキーボードを置いて操作することができるようになります。
この状態で立って操作すると、ディスプレイの見たい場所に自由に体を動かすことができるので、座っているより楽に操作できます。

電動昇降デスクとモニターアームを使ったデスク環境(デスクは操作パネル付)の写真

― 最近、いくつかのIT企業で立ってオフィスワークを行うスタンディングワークがトレンドになっているようですが、KTさんのスタイルは、まさに最先端の働き方ですね。

KT:
はい。私は、大画面のディスプレイを使っているので端から端へ顔を動かすのはかなりの移動距離になり、座っていると無理な姿勢をすることになりますが、立っていれば右や左に一歩踏み出すことで楽に見たい場所に移動することができるようになります。
最近は、テレワークが多いので運動不足になりがちですが、これだと自然に身体を動かすことになり一石二鳥です(笑)。
今、私は、この働き方がとても気に入っています。

― KTさんはWindowsの設定や操作方法、また、ディスプレイの選定や立ったままのワークスタイルなど、自分の見え方に適したさまざまな工夫をされていますが、こうした工夫は、どのように学ばれたのですか?

KT:
私の場合は、すべて独学です。
私の方法が必ずしもすべてのロービジョンの方に当てはまるわけではないと思いますが、ロービジョンの見え方はさまざまなので、解決のための工夫やアイデアは、目の状態に合わせて色々試して見つけていくことが大切だと思っています。私自身も今まで色々試してみて、結果として自分に合わなかったものも多かったのですが、そうした試行錯誤の中で今の私のスタイルに到達したという感じです。ロービジョンの見え方は、さまざまだということで、一言で片付けられがちですが、まぶしいのが駄目なのか、暗いのが苦手なのか、拡大すれば見えるのか、視野が狭くて小さい文字の方が見えやすいのかなど、その人の目の状態にとって何が良いのか、いくつかの選択肢があって、そこから自分自身に合ったものを見つけていけるようなサポートがあるといいですね。

― 確かに視覚障害者の訓練というとスクリーンリーダーの使い方を学ぶということにどうしても焦点が当てられがちですが、もちろん、それも重要ですが、KTさんの工夫の数々をお聞きしていると、ロービジョンにとって残っている視力をどのように活用して仕事をしていくか、そのためにWindowsの設定やディスプレイの選定、さまざまなツールをどう活用していくか、そうしたノウハウの蓄積と情報共有も重要そうですね。今日は、とても興味深いお話を聞かせて頂きありがとうございました。

インタビューを終えて

IT企業でエンジニアとして幅広く活躍されているKTさん。子供の頃からロービジョンでありながら、その視力を最大限に活用するためのさまざまな工夫をされていて、まさに「見る」ことの探究者といった趣でした。ご自身の見え方に合わせたディスプレイの設定やモニターアームと昇降デスクを使ったリモートワークのデスク環境などは、視覚に障害があるかどうかにかかわらず多くの方に参考になる工夫だと感じました。
また、多くの働く視覚障害者の悩みである社内システムの新規導入や更新については、先行ユーザーとして視覚に障害のある社員が関わって、事前に課題を洗い出し解決につなげているという取り組みのお話がとても参考になりました。こうした取り組みは、他の多くの企業でも取り入れていただきたいと思いました。

参考情報

  1. 【Windows10の画面設定】表示サイズの変更 ディスプレイの設定を変えて小さな文字を読みやすくする(外部サイト)
  2. Windows 11 / 10 / 8.1 のシステムフォントを、任意のもの&任意のサイズ に変更する!(外部サイト)