第1回スクリーンリーダー・拡大機能利用のWindowsPC環境実態調査結果(その1)

スクリーンリーダーや拡大機能を使用する場合、通常より高いスペックのPCが必要と言われますが、実際にどのくらいのスペックのPCが使用されているのか、またその快適度について調査しました。回答対象のPCは、スクリーンリーダーや拡大機能をインストールしているもので、仕事用・プライベート用のいずれでも回答可としました。仕事用のPCの場合、併せて職種や業種を尋ねていますが、今回はPCのスペックについて結果を公表します。

調査期間:2021年11月1日~2021年12月28日

実施方法:Webフォーム

総回答数:117件

1.アンケート結果(PCについて)

  • 使用しているスクリーンリーダーの種類に関わらず、CPUはIntel(R) Core(TM) i5、メモリは8GB、ストレージはSSDが最も多く使用されていました。
  • 仕事用のPCは、プライベートに比べ、スペックがやや低く、特に事務系の業務では快適度が低い傾向がありました。
  • スクリーンリーダーや拡大機能の動作推奨環境を満たしていれば、快適度はプラスになる傾向はありますが、より高いスペックでもストレスを感じるケースもありました。

以下、アンケート結果の内容です。

1-1.回答対象のPCの用途

回答対象のPCの用途を尋ねました。内訳は、プライベートでの使用が44.4%、仕事での使用が55.6%でした。

PCの用途の円グラフ

1-2.PCの種類

仕事用・プライベート用ともにノートパソコンがデスクトップより多く、全体ではノートパソコンが65.0%、デスクトップが32.5%でした。

PCの種類の積み上げ横棒グラフ

1-3.Windowsの種類

2021年末時点ではWindows10が全体の94.0%を占めていて、Windows11は仕事で1件、プライベートで3件と、まだあまり利用が進んでいない状況です。Windows8.1以前のバージョンも全体の2.6%で使用されています。

Windowsの種類の積み上げ横棒グラフ

1-4.CPUの種類

CPUには「Intel(R) Core(TM) iシリーズ」や、「AMD Ryzenシリーズ」等、メーカーによるブランドの他に、「世代」という概念があります。この「世代」とはバージョンと同じようなもので、CPUの性能が上がると世代の数値が大きくなります。世代が新しい(数字が大きい)ほど性能が良くなるため、世代が古いCore i7より世代が新しいCore i5の方が性能が良い場合があります。そのため、今回は世代を区分して集計しました。

CPUの種類ではIntel(R) Core(TM) i5 第7世代以前のi5としてはやや古い世代のものが24.8%、その次にCore i5 第8~9世代が15.4%、Core i7 第8~9世代が12.8%、Core i5 第10~11世代が10.3%と続いていて、 Core i5とCore i7で全体の85.5%を占めています。

CPUの種類の横棒グラフ

1-5.メモリ容量

メモリはプライベート用・仕事用ともに8GBが5割を超えていて、全体の56.4%を占めています。次いで16GBが全体の20.5%となっており、8GBと16GBで全体の76.9%となっています。4GBは全体の12.8%で、仕事用の割合が高くなっています。

メモリ容量の積み立て横棒グラフ

1-6.ストレージの種類

ストレージはプライベート・仕事用ともにSSDが全体の69.2%と圧倒的に多い一方で、HDDの使用割合は仕事用が高くなっています。

ストレージの種類の積み上げ横棒グラフ

2.PCの快適度

2-1.全体的な快適度

PCの快適度を「非常に快適」~「非常にストレスを感じる」の7段階評価で尋ねました。「全体としては非常に快適」、「かなり快適」で47%を占めていますが、仕事で使用しているPCについては、「ややストレスを感じる」が20%あり、プライベートで使用するPCよりストレスを感じる度合いが高くなっています。

PCの快適度の積み上げ横棒グラフ

2-2.PCの用途別快適度

PCの快適度を「非常にストレスを感じる」~「非常に快適」を-3~3に点数化し、PCの用途別に快適度の平均を算出しました。平均値が3に近いほど快適になり、-3に近いほどストレスを感じていることになります。その結果、プライベートで使用は1.5、仕事で使用は0.8と、仕事での使用の方が快適度が低い結果となりました。

PCの用途別快適度の横棒グラフ

2-3.主な業務内容と快適度

主な業務内容ごとの快適度は、事務系0.5、技術系1.0、医療系1.3、教育・研究1.8、PC訓練・支援1.3、その他1.0となっています。事務系が他の業務内容より低くなっており、事務系の場合、実務で必要とされるスペックと釣り合っていないケースが多い可能性が考えられます。

主な業務内容と快適度の横棒グラフ

2-4.ストレージの種類と快適度

ストレージは、HDDが0.4、SSDが1.4と、SSDの方が快適度が高くなっています。これはSSDの方が処理が速いことが、そのまま快適度につながっていると考えられます。

ストレージの種類と快適度の横棒グラフ

2-5.CPU&メモリと視覚支援機能別の快適度

PCの快適度を、各スクリーンリーダーとZoomTextごとに、CPUの種類とメモリをクロスして集計しました。集計の際は、集計対象より高いスペックを必要とするスクリーンリーダーやZoomTextを併用しているサンプルを含むと、快適度の評価が正しくできなくなるため、JAWSはZoomTextの併用を除いたサンプル、PC-TalkerはZoomTextかJAWSの併用を除いたサンプル、NVDAはZoomTextかJAWSかPC-Talkerの併用を除いたサンプルでそれぞれ集計しました。

また、CPUはCPUのブランドや世代によって性能順が変わってくるので、下記のサイトを参照してください。

CPU性能比較(外部サイト)

また、快適度の評価がHDDかSSDかの影響を除外するため、ストレージはSSDのみで平均を算出しました。

※このセクションでは表が細かいため、表を画像に変換したものを使用しています。快適度の数値の高低を色の濃淡で表しています。
評価については言葉で解説していますが、具体的な数値をご覧になりたい場合は、後日公開するWordファイルかPDFをご覧ください。

【JAWS】

JAWSの推奨環境はメモリCore i5以上、8GB以上となっています。

JAWS System Recommendations(外部サイト)

SSDのストレージでJAWSを使っているケースでは、CPUはIntel(R) Core(TM) i5 第7世代以前~Core i7 第11世代、メモリは8GB~32GBの範囲の回答がありました。メモリが8GBあれば快適度は1.0~2.0のプラス評価となっており、CPUはIntel Core i5以上、メモリは8GB以上であれば、比較的快適であることがわかりました。ただし、CPUの性能やメモリが大きければ快適度が増すという結果になっておらず、Core i7 第10~11世代・メモリ32GBでも-1.0と、マイナス評価となっています。これは、同時に使用するアプリの影響や、サンプル数の少なさが原因と考えられます。

JAWSとCPUとメモリの快適度

JAWSのCPUとメモリごとの快適度の表
表のセルには凡例の値と近いセルの色がついています。

【PC-Talker】

PC-Talkerの推奨メモリ容量は、PC-Talker10で2GB以上(64bit版4GB)、PC-Talker Neoが8GB以上になっています。

PC-Talker 10(外部サイト)

PC-Talker Neo(外部サイト)

SSDのストレージでPC-Talkerを使っているケースでは、CPUはIntel(R) Core(TM) i3 第7世代以前~Core i7 第11世代、メモリは4GB~32GBの範囲の回答がありました。

こちらもCPUとメモリの大きさと快適度が必ずしも比例していませんでした。CPUの性能が高くなく、メモリが4GBの場合でも、作業内容によっては快適に使用できる場合もあるようですが、基本的にはメモリが8GBあれば快適度は1.0~2.5のプラス評価となっていて、CPUはIntel Core i5以上、メモリは8GB以上であれば、比較的快適であるようです。

PC-TalkerとCPUとメモリの快適度(SSD使用。ZoomText・JAWS使用を除く)

PC-TalkerのCPUとメモリごとの快適度 の表
表のセルには凡例の値と近いセルの色がついています。

【NVDA】

JAWSやPC-Talkerと併用していないサンプルが少ないので、参考値となります。
NVDAのシステム要件はWindows7以上で、150MB以上のディスク空き容量です。Windowsが動く環境であれば使えるということで、軽量なスクリーンリーダーとなっています。

NVDA 2021.3.3jp ユーザーガイド  システム要件(外部サイト)

SSDのストレージでNVDAを使っているケースでは、CPUはIntel(R) Core(TM) i3 第7世代以前~Core i5 第11世代、メモリは8GB~32GBの範囲の回答がありました。
Core i5の古い世代ではメモリ8GBが-1.3になっていますが、それ以外は1.0~3.0のプラス評価になっています。

NVDAとCPUとメモリの快適度(SSD使用。ZoomText・JAWS・PC-Talker使用を除く)

NVDAのCPUとメモリごとの快適度の表
表のセルには凡例の値と近いセルの色がついています。

【ZoomText】

ZoomTextでSSDを使用しているサンプルが少ないので参考値です。ZoomTextはメモリ16GB以上、SSDのストレージが推奨環境となっています。

ZoomText System Recommendations(外部サイト)

SSDのストレージでZoomTextを使っているケースでは、CPUはIntel(R) Core(TM) i5 第7世代以前とCore i9 第8~9世代、メモリは16GBの回答がありました。同じ16GBのメモリでも、Core i5は-1.0、Core i9では2.0となっています。

ZoomTextとCPUとメモリの快適度(SSD使用)

ZoomTextのCPUとメモリごとの快適度 の表
表のセルには凡例の値と近いセルの色がついています。

3.まとめ

スクリーンリーダーやZoomTextをインストールしているPCの快適度は、必ずしもCPUの性能やメモリの大きさに比例していませんでしたが、スクリーンリーダー利用の場合は、メモリ8GB以上、ストレージはSSDが目安であると言えます。また、ZoomTextは16GB以上のメモリとSSDが推奨されています。会社支給のPCの場合ではスペックが思うようにならない場合もありますが、なるべくスクリーンリーダーやZoomTextの推奨環境に合わせて、PCも見直したいものです。
次回は、スクリーンリーダー・拡大機能の使用状況と就労先との関係について整理したいと思います。

第1回スクリーンリーダー・拡大機能利用のWindowsPC環境実態調査結果(その2)

第1回スクリーンリーダー・拡大機能利用のWindowsPC環境実態調査結果(その3)