No.6

タートル

1997. 8.1.
中途視覚障害者の復職を考える会
<第2回定期総会特集号> (タートルの会)



【基調講演】


中途視覚障害者の職場復帰に関する研究会報告書(概要)
労働省・障害者雇用対策課専門官 松原伸夫
1.中途視覚障害者の状況
(1) 視覚障害者は、その発障原因により出生時の損傷等によるものと交通事 故、労災など事故によるもののほか、糖尿病性網膜症などの疾病によるものに大 別され、このうち疾病を原因とする者が過半数を占めている。
 また、発障の年齢をみると、「18〜64歳」で視覚障害者となった者が約 半数を占め、12歳以下で発障した視覚障害者は全体の2割に満たない。
 また、年代的に見て職業生活の上でも、家庭生活の上でも責任ある立場の者 が在職中に受障することが多く、視覚障害が職域に大きな影響を及ぼすこともあ り、職場復帰が切実な問題となってくる。
(2) 中途視覚障害者は、一般に、障害の程度の進行に伴い生活面、職業面へ の影響が徐々に深刻化し、同一の環境での生活・仕事の継続が困難となり、職場 復帰を可能とするためには会社や周囲の関係者による長期的な視野に立った処遇 や人間関係等についての配慮など多くの整備、解決しなければならない課題があ り、直面する問題を家庭生活、職場の各環境・場面で解決していくことが必要で あると考えられる。
(3) 就職後中途視覚障害者となった場合、会社側も治療等のための休職を認 める場合が多いが、受障当初は本人、周囲とも生活面への影響を軽視し、休職期 間中に職場復帰のきっかけがつかめず、その後の準備もないまま離職するケース も多く、発症当初より計画的な職場復帰のための条件整備を進めることが課題と なっている。
2.職場復帰を促進するために
 職場復帰を円滑にするために、関係機関等において次のような条件整備が進 められることが望まれる。
(1) 地域レベルでの障害者関係の啓発・交流の場づくりなど、障害者を勇気 づけ、意欲を高める風土づくりに対する行政機関等による働きかけ。
(2) 医療リハビリテーションに係る条件整備
[1] 告知から障害受容への方向づけ、社会復帰に取りかかるための動機づけな どメンタルな面を含めた支援を行う体制の整備。
[2] 社会復帰の各過程をになう他部門や関係機関に関する情報の収集、関係機 関との間で社会・職場復帰までの一貫した連携体制の構築・強化。
[3] 医師、看護婦だけでなく医療ソーシャルワーカー、他のリハビリ機関の職 員、職場の上司や同僚等がチームを組んで相談にあたる体制の整備。
(3) 生活訓練に係る条件整備
 職場復帰後の職務を想定して、生活訓練の内容を職業リハビリテーションへ の円滑な移行に配慮したものとすること。
(4) 職業リハビリテーションに係る条件整備
 職場復帰後の具体的な職務内容を本人、事業所とともに検討し、それをもと にした訓練内容の設計、実施。
(5) リハビリテーション実施のための包括的な条件整備
 職場復帰に必要となるリハビリ要素の把握とそれをもとにした包括的なリハ ビリテーションの内容を医療・生活・職業の各リハビリテーション機関が連携を して検討・調整、役割分担をして実施できる協力・体制の整備。
(6) 職場復帰・定着に係る制度的な条件整備
[1] 各関係機関が連携しながら、職場復帰後の中途視覚障害者の職場適応・定 着の状況についての定期的な把握、支援する体制の整備
[2] 事業所において、障害者と事業所の橋渡し役となるキーパーソンの役割を 果たす者を確保することを働きかける体制の整備。
[3] 雇用管理等について、企業間で情報交換の場を持つこと。
(7) 職場における条件整備
[1] 視覚障害による情報アクセス上の問題解決等情報の入手環境の整備。
[2] 配置、職務分担については、人間関係にも配慮しつつ職務試行的に幅広い 可能性のなかで検討を行うこと。
[3] 復帰後の職務・職域は、段階的に複雑化、拡大化が図られることが望まし く、支援機器の導入についてもこれに応じて整備するなどの配慮。
[4] 復職後の諸々の問題の解決には、他の第三者機関と連携して状況を把握し 、アフターケアについて検討を行うこと。
(8) 職場復帰支援のコーディネート
 職場復帰のための条件整備を支援するために公共職業安定所、地域障害者職 業センター、障害者雇用支援センターが、中途視覚障害者の把握から、職場復帰 ・定着に至るまでの過程をフォローし、各過程における諸問題の解決について、 コーディネート的役割をはたすことが期待される。
3.支援・助成の課題
 円滑な職場復帰・定着を図るためには、障害者の交流の場づくり、職域開発 ・雇用管理に関する情報収集と実践、計画的・段階的な施設・設備等ハード面の 整備や職務遂行及び技術面の問題解決に関する人的なサポートの充実などが有効 な支援要素となっており、公共職業安定所などの関係機関で行っている各種助成 措置がこれらの支援ニーズに対応できるものとなるようそのメニューの検討、実 際の活用ノウハウの周知などに努めていくことが望ましく、具体的には、次のよ うな措置が望まれる。
(1) 障害者、雇用者の交流・情報交換のための場づくりについて行政機関に よる働きかけ。
(2) 復職後に整備する情報機器、支援機器について、段階的な機器の充実・ 更新に対応できる柔軟な助成措置の検討。
(3) 中途視覚障害者に対する個別的研修の実施を会社に動機づけさせる支援 ・助成措置の充実。
(4) 職場のキーパーソン、職場介助者、技術支援のための助言者などの人的 支援体制の整備は、視覚障害者の職域拡大に効果的であり、この面における助成 の充実。(単に助成制度を整備するだけでなく、人的支援を委嘱機関の斡旋、制 度を利用した具体的な支援に関する援助などソフト面の行政サービスを充実する こと。)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

【1996年度活動報告】

1.手記集の発刊について
 「視覚障害をバネとして」は、会発足以来、多くの当事者、家族・関係者に 届けられ、感謝の声が寄せられていることからも、それなりに役立っているとい えます。この手記集を何れ正式に出版したいという当初の願いは、2年を経過し た今、ようやく実現に向けて具体的に動き出したところです。
 内容については、会員内外の意見をできるだけ取り入れ、よりよいものにし ていく所存です。
2.相談活動の充実について
 本会は、会発足以来、相談活動、とりわけ初期相談に力を入れてきました。 この1年も、昨年同様、全国各地の当事者や家族・関係者から、職業継続、周囲 の人たちの視覚障害に対する理解など様々な問題に関する相談が寄せられました 。中でも、民間企業における解雇に関する相談が相次いだのが目立ちました。
 これらに対しては、会長以下、事務局を中心に連携し、当事者の人権と立場 を尊重しながら、できるだけ個別的・具体的に対応してきました。
 ちなみに、これらの中には、本会との繋がりが契機となり、この4月以降、 復職を果たしたケース(神奈川=Aさん、Bさん、群馬=Cさん)、現在復職を 目指して訓練中のケース、解雇予告を撤回させリハビリを受けているケース(東 京=Dさん)、解雇無効の裁判を2月に提訴したケース(大阪=Eさん)なども あります。
 このように、全国各地から様々な相談が寄せられるようになったこと自体、 会にとっては前進であるといえますが、まだまだ必要な情報に接することなく、 悩んでいる人が多いことは想像に難くありません。その意味でも、手記集が世に 出ることの意義は大きいといえます。
 他方、復職事例や会員が増えるにつれ、「復職(再就職)はできたけれど‥ ‥」に代表されるような、新たな問題が出てきたように思われます。例えば、機 器活用・操作技術などの支援が得られない、通勤・歩行に不安がある、人間関係 がうまくいかない、仕事が与えられない、研修を受けさせてもらえない、キャリ アアップに希望が持てないなど、さまざまな問題があります。これらの問題を整 理する中で、共通部分については、交流会などを工夫することで、ある程度対応 できる部分もあります。
 一方、相談に寄せられた悩みや要望に答えるためには、これまで以上に相談 活動の充実が求められ、単に情報を提供するだけでなく、具体的な支援の必要性 を痛感するところですが、現状では、そのようなニーズに十分応えることはでき ません。しかし、もし、会員それぞれの持てる力の発揮(体験やノウハウ等の提 供)があれば、それも不可能ではないと思われます。
3.研修制度等の確立について
 このように、様々な相談が寄せられていますが、それらの問題を解決するた めには、研修制度等の確立が求められています。
 昨年同様、交流会の中で、「中途視覚障害者と歩行問題」をテーマに学習・ 交流し、お互いに問題意識を高めることができました。
 中途視覚障害者が働き続けるためには、視覚障害を理由にした解雇禁止規定 の明文化を図ることが必要であり、少なくとも、歩行訓練、職業訓練等必要な技 能習得については、現任研修制度のような形で在職中の研修(リハビリ)が保障 されなければならないと考えます。
 「復職(再就職)はできたけれど‥‥」という言葉の後に続くであろう問題 は、当事者にとっては深刻な問題であり、そのまま問題を放置されることは、人 権侵害にも通じると思われます。だからといって、事業主を一方的に責めるわけ にもいきません。中途視覚障害者の生活と権利を守り、事業主の不安感や負担感 をできるだけ軽減し、問題を解決するための具体的な施策が切実に求められてい ます。
 そこで、会としては、そのような制度の実現をただ待ち望むだけでなく、会 としてできることから実践していく必要があると考えます。
 例えば、当面の課題として、会員のノウハウの蓄積とネットワークの構築が 必要です。そのために、各会員の持てる技術や得意とする領域の情報を把握し、 会員とのコンタクトを図りつつ、問題解決の動機付けとなる訪問による支援活動 なども必要だと考えます。このような具体的で実効ある支援活動を検討する余地 は十分あると思われます。
4.補助機器の導入推進について
 これについては、交流会や幹事会などの折に情報交換をしてきました。より 具体的なことについては、日本盲人職能開発センターの協力により、適宜対応し ていただきました。
5.交流・学習会について
 表記については、下記の通り、定期総会を含め年5回行うことができました 。参加者は定期総会での50名以上を除き、平均30名以上でした。その内容(要旨 )については、会報上で報告してきました。
[1]6月8日(土) 第1回定期総会
 テーマ:「障害者プランについて…解説」
 講 師:寺嶋 彰(厚生省障害者福祉専門官)
[2]9月7日(土) 交流会
 テーマ:「明日へ向かって〜再就職、そして今、作業所づくり〜」
 講 師:阿部貞信(近畿日本ツーリスト本社総務部嘱託、ワークアイ船橋理 事長)
[3]11月16日(土) 交流会
 テーマ:「差別の社会心理学的解釈」
 講 師:杉森伸吉(東京家政大学)
[4]2月1日(土) 交流会
 テーマ:「中途視覚障害者と歩行問題」
 講 師:渡辺明夫(国立身体障害者リハビリテーションセンター)
[5]3月8日(土) 交流会
 テーマ:「会社に戻って思うこと〜肩身の広い会社生活〜」
 講 師:田辺和平(コクヨ(株)東京支社ヘルスキーパー室)
6.会報「タートル」の発行について
 会報については、年3回(第3〜5号)発行し、フロッピィーディスク版、 カセットテープ版も用意しました。拡大文字版については今後の課題となってお ります。
 好評を博している「職場で頑張っています」コーナーは、会報の一つの柱を なす部分と考えていますので、今後の紙面充実のためにも、会員の皆さんの御協 力をお願いいたします。
7.調査・研究活動について
 会員のニーズ調査等についてはできませんでしたが、現在、調査方法、調査 項目などについて検討中ですので、是非、御協力をお願いいたします。
8.その他
 この1年間、会に関連する記事が「点字毎日」(以下、「点毎」)等に取り 上げられましたので、以下にその見出しを記しておきます。
 また、会の活動について、視覚障害リハビリテーション協会、全国視覚障害 者雇用促進連絡会、全日本視力障害者協議会、障害者の生活と権利を守る全国連 絡協議会などの機関紙等にも紹介されました。
◆1996年
・「中失者の復職を支援しよう〜タートルの会が初の総会〜」(点毎6月23日 )
・「人:航空無線通信所で働く下堂薗さん」(点毎12月8日)
・「リハビリで職場復帰を認めて欲しい〜解雇通告でタートルの会が支援〜」
 (点毎12月15日)
・「街の色人の詩 解雇通告 見えなくたって働ける」(毎日・千葉12月27日 )
◆1997年
・「リハビリ訓練が認められる〜解雇通告を受けていた郡さん〜」(点毎1月12 日)
・「中失で解雇通告相次ぐ〜タートルの会で支援策を協議〜」(点毎1月19日 )
・「通い慣れた道でも歩行訓練を〜タートルの会が歩行で勉強会〜」(点毎2 月16日)
・「視覚障害者の皆さんへ」(NHKラジオ2月23日、和泉会長出演)
・「NHKガイド」(ラジオ5月10日)
(工藤正一)

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

【1997年度活動方針】

1.今年度の課題
●手記集の12月9日発行
 私たちの体験を飾らずに表現し、一人でも多くの、孤立している中途視覚障 害者に対する呼びかけとする。その意味で、会全体で出版していく。会の予算か らの支出の確認と本を広める活動に全体で取り組んでいきたい。
●相談活動の更なる充実
 個別・具体的な相談活動をさらに重視する。会報での個別相談の呼びかけを 開始したが、手記集の発行を始め、これから増えていくと思われる。初期相談だ けでなく復職してからの問題も個々人の努力にまかせるのでなく、今年度から積 極的に取り組んでいきたい。私たちが、様々なニーズにどれだけ応えられるのか という問題はあるが、多くの会員の体験や・ノウハウを発揮すれば、可能性は広 がると思う。
●仕事の具体的イメージの獲得に向けて
 「私たちも具体的にこんな仕事ができる」。という提案をしっかりしていき たい。現在も会員の一人一人が補助機器の活用や人的支援を受けながら様々な仕 事をこなしている。私たちはそれらノウハウを一つ残らず集め、整理していくこ とは大切である。今年度は交流会や会報を積極的に活用しこの作業を着実に進め たい。そして、次のステップにしていきたい。
●会員間の多面的な交流を深めることにより、互いに持っている情報・ノウハ ウの交流を深める。
2.基本的な活動
●交流会
 今年度は仕事の具体的な調査・研究のため、会員自身が報告しあうような交 流会も何度か開催する。外部講師による講演会形式の交流会も続けたい。
●会報
 情報とノウハウの交流にとって会報発行の意味は大きい。内容の充実にさら に努力したい。多くの人に書いてもらうこと 、また、大きな活字の会報も考え ていきたい。
●幹事会
 今年度の課題を考えると幹事会の活動はさらに重要になる。しかし、会員が 気楽に参加でき、問題を一緒に考える集まりでもありたい。
3.長期的な課題
 少しずつ整理して、実現に向け次のステップにする。
●研修制度について
●補助機器の操作技術訪問支援
●インターネット活用
(新井愛一郎)

【総会に参加して・その1】

会員の皆様へ

視覚障害を理由とした
不当解雇と闘う元関西電力社員
原告 二見徳雄

 先月は総会に参加させていただきありがとうございました。多くの方から私 に対し、励ましをいただき、又、私の「支援する会」にも何人か入ってもらい感 謝しています。
 皆さんの発言やタートルの会の方針等を聞き、私の経過と比較すると先駆的 な運動をされていると感じました。
 それは、「初期対応の早さ」といいますか、郡さんの場合でも在職中に雇用 継続にむけた交渉を会社とされ、マスコミにも宣伝し解雇撤回を認めさせたこと です。
 私の場合は初期対応のまずさを今から思うと感じます。4年前に発病して、 2カ所の病院に入院しても視力が戻らない事がはっきりした時点で休職に入るの でなく、入るにしても、障害者を支援する会を調べケースワーカーの方にも相談 して、休職期間をリハビリとして過ごすように会社と話し合うべきでした。
 中途で障害をもった私には、まだ当時障害を認めるのでなく、いろいろな治 療をして治す気持が強かったので、「完治してから出社してくれ」との管理職の 指示に従い休職に入り、漢方や鍼も加えて治療に専念しました。
 反省のもう1つは、会社に対する私の甘い見方もありました。現実の職場に 肢体障害と人工透析の社員が2名いましたので、私の場合も、完治しなくても首 にはしないだろうと思っていました。そんな気持でしたので、手帳をもらう手続 きをしたのも昨年の8月です。そして医者の「中等度の労働は可能」との診断書 を会社に提出し、復職の話し合いを始めたのが、10月の末でした。
 その後は、パソコンが使えないを唯一の理由にした会社の態度が明確になり 、弁護士にも相談し、いろいろ雇用状況を調べていく過程で、大阪視覚障害者の 生活を守る会や皆様のタートルの会を知りました。
 その後はいろいろな方に出会い、励まされ、2月の提訴を迎え今日に至って いますが、視力の弱い私が最も困難に感じたのは、情報を得にくいことです。そ の点でもタートルの会から雇用状況の分かる資料をたくさん送っていただき、弁 護士も私も、当時本当に助かりました。
 以上が私の総会に参加しての感想ですが、中途障害者にとって不安な現実を 救ってくれるのは、相談相手、つまり「会」の存在を知ることだと思います。
 私たちはお別れした後、ホテルで1泊し、「寅さん」の柴又を見物して帰り ました。
 これからますます暑くなりますが、会の皆様、お身体をご自愛され、ご活躍 されることを祈っています。
(1997年7月8日)

◇二見さんの激励先と「支援する会」について
「二見さんの関西電力への原職復帰を支援する会」(略称:関西電力の二見さ んを支
援する会)の連絡先は下記の通り、二見さんの自宅となっております。当会と しても
できる限りの支援をし、今後の裁判の動きなどについては、本会報でもお知ら せして
いきたいと考えています。
 なお、「支援する会」への入会を希望され、同会ニュースなどをお読みにな りたい
方は、直接二見さんまで連絡して下さい。
二見 徳雄
〒591 堺市百舌鳥赤畑町 4288-16 TELFAX 0722-59-8734

郵便振替口座
加入者名  関西電力の二見さんを支援する会
口座番号  00980−6−31467
(個人会費 一口一千円  団体会費 一口三千円)

【総会に参加して・その2】

発病から現在まで

K.S(47歳・自動車会社勤務)

 私は、今から15年ほど前のある日の夕方、車の運転中に、人身事故を起こし ました。このころから、夕方から夜になると、周りが見えづらく感じることがあ りました。家族や周りの人の勧めもあって、大学病院に行き検査を受けたところ 、自分が網膜色素変性症にかかっていることが分かりました。信じられないと信 じたくないとの両方の気持ちで、別の大学病院にも行きましたが、どこの先生の 診断も同じでした。病気の説明で「難病のため、治療法が見つかっていない」と 言われたときのショックは、決して小さくはありませんでした。しかし、当時は まだ視力があり、仕事や生活に不自由を感じていませんでしたので、仕事のほう も頑張ってやっていましたが、2年ほど前から、細かい物や小さい字が、見えづ らくなってきました。そこで、昨年所沢の国立リハビリテーションセンターに行 ったことが、視覚障害者としての自分を認識するきっかけとなりました。ケース ワーカーの先生からは「あなたの障害の程度は、2級ありますので、今後の問題 を解決するためには、手帳を取得することが大事でしょう」と言われ、また、視 覚障害者福祉相談所などに行って相談しても、やはり手帳を取得することを勧め られました。そして、今年の1月に手帳を取得しました。
 病気の進行とともに、仕事や経済面のことなどが気になり始め、私と同じ病 気の人たちは、どのようにしてこのような問題を解決したのか、などを聞きたく 思い、網膜色素変性症の会に連絡したところ、会員のSさんをご紹介していただ きました。この時「タートルの会があり、一度参加してみませんか?」と言葉を 掛けられたのが、タートルの会との出会いでした。
 今年の3月に交流会に参加し、6月の総会にも出席しました。総会終了後、 出席者全員が自己紹介を行ったのですが、印象的だったのはその内容でした。出 席されている方は、ほとんど事務職の方で、復職に至るまでのお話、復職のため に活動している話、復職の支援活動を行っている話、これから復職の問題に取り 組もうとしている話などさまざまで、悩んでいる私としては、非常に励みになり ました。しかし、技能職という私の仕事柄、復職を会社と話し合うことは、難し いだろうと感じたのも、事実です。
 とにかく、親睦会に参加して驚いたのは、会員の皆さんが非常に明るいこと でした。ともすれば暗くなりがちになるかと思っていたのですが…。私も病気の 悩みや仕事の悩みなどの話ができたことがうれしく、久しぶりに自分の悩みを話 せる場が見つかったことで心の安らぎを感じ、家路につきました。
 現在は、仕事の合間に週に1回、高田馬場の日本点字図書館へ、点字の勉強 に通う毎日を送っています。早く点字を習得し、これからの道を考えたいと思っ ております。
 最後にこの文章を読んでくれた方へ:私の拙い文章を最後まで読んでくれた ことを感謝します。この文章が、以前の私のような方の助けとなれば、うれしい です。

…………………………

【総会に参加して・その3】

総会に初めて参加して

世田谷区役所 渡辺珠美

 梅雨の間の晴天にめぐまれた6月14日(土)。東京・田町の勤労福祉会館で 開かれた第2回定期総会に初めて参加させていただき、「こんなにも多くの人た ちが頑張っておられるのだなあ。」と、心強くもありまた、視覚障害者をとりま く状況の厳しさを痛感させられました。
 私は、緑内障により平成7年春より職場を離れておりまして、現在休職中で す。去年の5月より東京都失明者更生館で生活訓練、歩行訓練等を経て12月から 日本盲人職能開発センターで「音声ワープロ」の学習をさせていただき、7月以 後、区の総合福祉センターで引き続き復職のための訓練に入っております。
 視覚を患ってみていかに不自由なことの多いことか。そして今までの生活を 切り替えてゆく努力が必要か、ということを改めて実感しております。そしてこ のことは私一人だけの力ではなされ得ず、周囲の方々のお力添えを、街の中での 道案内なども含めて、お願いしなければなりませんし、そうした係わりの中にこ そ、一社会人としていかに社会に参加してゆけるかについての答えを見いだせる のではないかと思うのです。

◇会合日誌◇
◆97/5/30 幹事会(総会企画、
          出版企画)
◆97/6/14 第2回定期総会
◆97/6/27 幹事会(出版企画)
◆97/7/18 幹事会(交流会企画、
          出版企画)
  ……………
◇お知らせ◇
◎交流会の開催
 日時:1997年9月20日(土)
         14:00〜17:00
 会場:日本盲人職能開発センター
 内容:中途視覚障害の復職した仲間   からそれぞれの仕事内容と使用    機器等作業環境について具体的   な説明を受け、質問をする。
   (3名程度を予定)
……………
◇編集後記◇
 幹事会の交流会企画の案としては、9月、10月、11月の交流会を集中的にヒ アリングに当て、各自の仕事内容等を明確にし、資料づくりを行います。どのよ うな仕事をどのようにこなしているか。とりあえず、3回分9人程度の人数にな りますが、当会の仲間の中から選び、詳細に説明をしてもらい、不足分を質問で 補う。この録音をしっかり取り、文字化して整理蓄積します。われわれ当事者は もとより、後に続く中途視覚障害者、そして雇用側に対する貴重な資料として提 供できるものとなるはずです。会員諸氏の積極的参加を期待します。
 本号は「総会特集号」として発行したため、「職場で頑張っています」の代 わりに「総会に参加して」を掲載することとし、急遽3人の方に執筆をお願いし ました。快く引き受け早々に書いていただき感謝しています。なかでも二見さん は、これから長く闘いは続きます。ぜひ頑張って欲しいものです。皆さん、支援 に協力をお願いします。 点字や拡大活字の会報の要望が高まっています。幹事 会として具体化の方向を摸索しています。しばらくお待ちください。 (篠島永 一)
中途視覚障害者の復職を考える会
タートルの会
会 長   和 泉 森 太
 〒160 東京都新宿区本塩町 10-3
  社会福祉法人 日本盲人職能開発センター
 東京ワークショップ内 電話 03-3351-3188 Fax.03-3351-3189


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