目次

巻頭言 理事 中本英之
総会関係
  【2020年度通常総会報告】
職場で頑張っています 会員 伊藤良子
定年まで頑張りました 賛助会員 福岡県朝倉農林事務所 髙松義孝
お知らせコーナー
編集後記
奥付

巻頭言

『自分を信じて継続就労』

理事 中本 英之(なかもとひでゆき)

ご挨拶など

みなさんこんにちは。中本英之と申します。

今回の通常総会では、議長を務めました。Zoomを利用した初めてのオンライン総会にもかかわらず、多くの会員の皆様にご参加いただき、また議事進行にご協力いただき、誠にありがとうございました。

私は今から8年前48歳の誕生日の直前に、原因不明の視神経の萎縮により、ほぼ1日で現在の視力となりました。(右:手動弁、左:0.01中心暗点) 当時は、岐阜市の営業支店で管理職を務めておりましたが、発病から5か月後に東京に転居した後、発病から9か月後に復職できました。

当たり前ですが、発病当時は視覚障害についての知識はゼロでしたので、岐阜アソシアさんにお話を聞きに行ったり、視能訓練士の浅野先生に残存視力の使い方を教えていただいたり、たくさんの方に支えていただきました。この場をお借りし、御礼申し上げます。

自分を信じて継続就労

復職に際し、自分では、「もう営業職は無理だから本社の管理部門か何かに配属になって、給料もかなり下げられるのかなぁ」と思っておりました。しかし、予想に反して復職したのは、営業部署でした。

配属になったのはメンバー15人くらいの営業部署です。もちろん私が最年長かつ社歴も一番長い社員でした。メンバーは社歴の浅い社員が多く、私の強みである営業経験や商品知識、マネジメント力など大いに役に立ったようで、「今まで真面目に仕事をしてきて良かった」と思ったことを思い出します。

今後について

タートルでは芹田事務局長の元で、主に事務局業務に携わっております。引き続き当法人の成長に微力ながら尽力してまいりますので、よろしくお願いいたします。

コロナ禍の中、会社がいつどうなるかわからない状況ですし、年齢的にもそういう状況であると思っています。こればかりは、私の力ではどうにもできませんし、どうにもならないことをあれこれ考えることは止めました。

私にできることは、自分を信じて、社会経済状況の変化に対応すべく努力し続けることだと思っております。

総会関係

【2020年度通常総会報告】

認定 特定非営利活動法人タートル 2020年度 通常総会 資料

1.日時 2020年6月27日(土)10時~12時(受付9時~)
2.場所 オンライン、Zoomにて実施
(東京都新宿区四谷本塩町2-5
(社福)日本視覚障害者職能開発センター

総会次第

1.開会     理事長挨拶
2.総会成立報告
3.議長選出
4.議事
第1号議案 2019年度事業報告および決算報告について 
第2号議案 2020年度事業計画案について
第3号議案 2020年度予算案について
5.その他
6.閉会 

◎1号議案の1 2019年度事業報告について

■活動総括 理事長 松坂 治男 

積極的なイベント・タートルサロン・Zoom体験会・相談会等の活動が評価され、新規会員数が34名(正会員:24名、賛助会員:10名)と会員の増加に繋がった。
また、Zoomの導入により、安定した接続環境を整えることができ、遠距離という壁を感じないようになった。
資金面では、会員数の増加及び視覚障害者に特化した実証実験及びアンケート調査の協力により、繰越金を増やすことができた。
「認定NPO」の更新準備も順調に進み、東京都への更新手続きは完了している。
日本視覚障害者職能開発センターから活動拠点としての場所の提供等、ご支援ご協力をいただいている。
25周年記念誌の作成については、それぞれの事業が積極的に展開している現状では、取り組みが困難という結論に達した。

■相談事業
副理事長 工藤 正一 
理  事 熊懐 敬  

1.2019年度の相談実績(カッコ内は前年度実績)
(1)総件数784件(928件)、実人数334人(349人)のうち、初めての人は190人
(注)前年比減少は、国家公務員関連の減少、10月の台風襲来、新型コロナの影響など、ロービジョン個別相談を実施できなかったこと、一部、集計方法の変更等による。
(2)疾患別内訳(人):網膜色素変性症81、緑内障37、先天性疾患15、レーベル病12、黄斑ジストロフィー10、眼瞼痙攣4、錐体ジストロフィー3他
(3)相談方法別内訳(延べ件数):電話 267、メール 418、面談相談 99、うち、眼科医を加えたロービジョン就労相談会25(31)
(4)相談後の状況(人)(カッコ内は実質の相談対応者227人中に占める割合)、就労継続97(43%)、転職・再就職・新規就職22(10%)、復職13(6%)訓練中22(10%)、就活中17(7%)、休職中11(5%)離職5(2%)盲学校等への進学・通学4(2%)、療養中6(3%)、その他15(6%)

2.掲げた目標の遂行状況
(1)これまでの取り組みの一層の充実
①電話やメールによる相談には的確・迅速に対応するよう努めた。
②きめ細かいフォローに努め、消息不明の人が減少、相談後の就業率も上昇した。(前年度55% → 58%)
(2)相談スタッフの増強により、タートルサロン・交流会後の相談希望者に分担して、対応するなど、円滑な個別相談ができた。
(3)各地区拠点スタッフとも、常に情報共有し連携して対応した。
(4)相談情報のデータ蓄積作業については、年度後半から体制を充実し遂行できた。

3.各団体への協力と連携
(1)他団体イベントへの出張相談により、当事者の掘り起こしとタートルのPRを行った。
4月:JRPS神奈川「横浜アイフェスタ」、5月:JRPS千葉「アイフェスタ千葉」、7月:日本ライトハウスオープンデー、7月:全国ロービジョンセミナー
(2)関連団体イベントへの協力と連携
5月:第20回ロービジョン学会学術総会」で取り組み事例の紹介とアピールを行った
。【演題】「認定NPO法人タートルにおける就労支援のための相談対応と支援内容」
 8月:「就労支援機関情報交換会」の発足会合に参加、今後の連携を確認した。就労支援団体、訓練施設等23団体が参加 日本視覚障害者職能開発センター

■交流会事業

(1)東京会場担当 理事 重田雅敏 

〈交流会〉講演と懇談会
8月17日(土)会場:TKPスター貸会議室四谷 講師:島袋 勝弥氏「中途視覚障害で「壊れた」けれども、結構いい感じに復職した気がする」
11月23日(土)会場:日本視覚障害者職能開発センター 講師:澤田 優蘭氏「パラリンピックへの挑戦~諦めたくない夢がある~」
どちらも力強い内容でとても勇気づけられた。8月60名、11月59名の参加で、定員は60名でどちらも満席となった。Zoomにより大阪・福岡会場との中継が順調となり、好評だった。
3月は新型コロナウィルス対策のため開催を中止した。

〈タートルサロン〉
本年度9回実施し、多くの疑問に答えることができた。行事と重なった7月と、新型コロナ対策の為、2・3月は中止し前年度541名に対し本年度は400名の参加だった。

(2)大阪会場担当 理事 的場孝至 

8月交流会9名、11月交流会6名。テーマにより参加者層は違ったが、毎回初参加者があり、就労継続の具体的な事例、体験談を共有し、参加者の質問に対し全体でさまざまな情報交換ができた。
また、支援者に参加いただくことができ、各種訓練や支援制度について情報提供をいただいた。Zoomの接続により課題であった通信環境が改善された。

(3)福岡会場担当 理事 藤田善久 

8月交流会12名、11月交流会16名。どちらも会場はレンタルスペースルポ211で実施。実体験を含む講演で、共感する点が多々あった。Zoomに切り替えた初年度であったが、スカイプをはるかに超える安定した通信環境で参加者から高い評価を受けた。

(4)女子会担当 理事 松尾牧子 

9月16日 東京都障害者福祉会館「ネイルデザインの基礎知識とネイルケア」26名が参加。ヤスリを使った手入れは手軽で良いと好評だった。同日、参加者全員でランチ交流会を行い、情報交換の場とすることができた。

(5)Zoom導入と体験会実施 担当 理事 大橋正彦 

スカイプに代わる通信手段として6月総会、8月交流会でZoomの運用を開始。全国会員の交流機会を生むべく、Zoom体験のオンラインサロンを9月より計8回開催した。参加者も徐々に増加し、約50名が体験し、入会動機にもつながるようになっている。

(6)新企画実施担当 理事 神田 信 

 12月21日タートルサロン開催前に、日本盲導犬協会による盲導犬歩行体験会を行った。参加者は9名。盲導犬について見識を深め、実際に歩行体験を行った。

■情報提供事業

1.IT事業理事長 松坂 治男 
(1)Webの管理(外部委託)行事の案内:3回、「情報誌タートル」:4回、お知らせ等を掲載した。
(2)メーリングリストの管理(外部委託)タートルML・会員専用ML・役員連絡用ML・タートルML 2019年4月1日~2020年3月31日:1,016件
視覚障害者本人からの悩み、本の発刊や他団体の行事のお知らせ、各種講座の情報や実務で使用しているパソコンの操作方法など、活発な意見交換が行われた。
(3) 総会・交流会(2回)の各会場との中継の通信手段をSkypeからZoomに変更した。
(4)大学・企業の視覚障害者対象のアンケート調査への協力
① ピッキング作業を支援する実証実験:16名参加
② D社 音声合成機能についてのアンケート調査:20名
③ 筑波技術大学 スマートスピーカのアンケート調査:126名
④ 筑波技術大学 キャリアについてのアンケート調査:78名

2.情報誌発行事業 理事 市川 宏明 
・計画どおり年間4回発行。第47号~50号、墨字400部×4回
・会員には希望によりメール版、DAISY版、テープ版を提供。
・施設名称(事務所住所)変更に伴い、告知関係を一部変更。

■セミナー・啓発事業 副理事長 新井 愛一郎 

1.実践的ビジネススキル勉強会の開催
(1)実施内容
日時:2019年4月27日(土)講師・テーマ:北島恵以子氏 「ビジネスマナー第2弾、実践編」参加:49名(東京27名、大阪13名、福岡9名)
内容:第1弾の「基本編」を踏まえ、「実践編」として具体的な場面設定を行い、参加者の実演、講師の講評という形で実施した。実際にやりながら参加者相互で評価しあうことができ、新しい形の勉強会にすることができた。
日時:2020年2月1日(土) 講師・テーマ:岩本好之氏 「ロジカル コミュニケーション」参加:60名(東京42名、大阪9名、福岡9名)
内容:我々視覚障害者にとって、業務、日常を問わず、コミュニケーション術は重要と考え、今回のテーマを設定した。受講後、参加者にアンケートを実施し、満足度や感想などをリサーチした結果、勉強会への満足度は高く、継続的な開催を希望する声が多かった。
(2)勉強会成果発表
10回の勉強会の成果のまとめ作業をしてきたが、最終的な発表は次年度に持ち越された。成果を有効に活用するためにも作業を進めたい。
(3)次年度に向けての課題
次年度の勉強会は、Zoomを使って3会場以外の希望者も参加できるよう検討する。

2.啓発活動
・スタッフが参加するイベントにおいて、積極的にタートルの活動紹介等を行った。計画的な取り組みができるようにこれらを啓発活動として位置づけて活動したい。
・会員にタートルパンフを送り、みんなで配布活動をしていくことは諸事情で年度内に実現できず、次年度の課題となった。
・啓発のための講演・セミナーの提案については、新たな活動はできなかった。これまでの在り方を見直しながら、いろいろな状況の中でできることを考えていきたい。

■ボランティア関係業務 理事 市川 宏明

1.ボランティアの現況(東京)
・交流会等タートルの行事に協力して頂ける方12名登録。(2年以上連絡がない方を削除)
・誘導ボランティアの配置は総会及び交流会(年4回)。
基本3~4名を1回の行事に配置。
・ボランティアの募集は情報誌のお知らせコーナー、Web、知人などへの呼びかけ。
・ボランティア意見交換会実施。参加5名+タートルスタッフ。

2.東京以外のボランティアの状況 (各拠点会場)現状は登録数が少ない。

特記事項
・8月開催となった交流会では実施会場の変更もあり、事前の下見、誘導経路の調査などを入念に実施。当日はボランティア人数も増やし、運営実施。事故なく無事、終了した。

◎第2号議案 2020年度事業計画(案)について

■2020年度活動方針 理事長 松坂 治男 

ここ数年進めてきた「新会員の獲得」「役員の若返り」「財政の安定」の3つの目標も順調に達成し、新たな未来に向けて変革していく年である。
新型コロナウイルス問題で、今までの活動ができなくなったということで停滞するのではなく、このような状況だからこそ、各事業のオンラインでの実施等に向けた体制の充実等を図り、新たな活動の可能性に向かって前進していきたい。

■相談事業
副理事長 工藤 正一 
理  事 熊懐   敬 

1.相談対応の一層の充実
(1)新型コロナ問題をふまえ、電話・メールによる相談対応の体制を充実・強化する。
(2)緊急事態宣言下でも、電話・メールでの相談が可能なことを告知する。
(3)メールでの相談を促進するため、ホームページ上に、相談用のメールフォーマットを設置する。
(4)スタッフによる個別相談会については、各地区拠点スタッフとも連携し、オンラインでの対応を検討する。
(5)相談対応を実りあるものにするため、スタッフ相互の事前の打合せ、事後のフォローを励行する。
(6)交流会、サロンとの連携を強化し、当事者のフォローや新規案件の発掘に努める。

2.相談データの蓄積と活用
(1)当事者のフォローや実績の把握、統計的な分析に活用するため、引き続きデータの蓄積を行う。
(2)データ登録には多大な工程を要することから、一定の要因を確保する。
(3)多人数で効率よく処理するために、現状のクラウド上の保存システムが最適か検討し適宜見直しを行う。
(4)作業の簡素化、必要なアウトプットデータ等の観点から、統計書式の見直しが可能か検討する。

3.眼科医、関係機関との連携の強化
(1)眼科医をまじえた相談会は、従来のかたちでは継続が困難になりつつあることをふまえ、ロービジョンケアに詳しい眼科医との連携を検討する。
(2)地域障害者職業センター、訓練施設、ハローワーク等、関係機関との連携も一層強化する。
(3)AMED研究の成果物「(視覚障害者の)就労支援マニュアル」を活用する。眼科医、訓練施設、各地の障害者職業センター、ハローワーク等にタートルパンフレットと共に配布する。

4.他団体との協力と連携、出張相談等
7月:日本ロービジョン学会学術総会でのタートルの取り組み発表
9月:日本視覚障害者職能開発センター主催40周年記念イベント(予定)

■交流会事業 理事 重田 雅敏 

1.交流会(9月・11月・3月)その他の月にサロンを開催する。昨年は8月に会場変更、11月は第4週土曜日に実施変更があり、準備や誘導、階段トイレ等、慣れない会場のため課題が多く出された。
今後は会場や期日の変更がないよう努めたい。また、定例の会場が参加者の増加で手狭なため、対策を検討したい。
2.九州地区のタートルの認知度向上を目的に、年に一度は福岡県以外で開催したい。
3.女子会の方向性を明確にし、年1~2回実施したい。もっと参加者同士で話をしたいという要望も多く、Zoomを利用して各拠点での女子会をつなぎ、交流を図ることも検討したい。
4.Zoomによる会員の交流は、継続して期日を固定し、月1回程度の開催を行い、その中で、テーマを決めたサロンを実施する。予めテーマを定め、関心のある参加者を募り、情報交換や問題解決を模索するサロンを会員限定で新たに企画する。

■情報提供事業

1.IT事業理事長 松坂 治男 
(1)Webの管理(外部委託)は、HPにお知らせや「情報誌タートル」を掲載する。
(2)メーリングリストの管理(外部委託)はタートルML・会員専用ML・役員連絡用MLの管理と運営。
(3)タートルの過去のデータ管理についての検討。
(4)大学・企業による視覚障害者対象のアンケート調査及び視覚障害者関連調査に協力。

2.情報誌作成事業 理事市川 宏明
(1)会員/非会員を問わず、中途視覚障害で悩んでおられる方に役立つ情報誌の提供に努める。6月、9月、12月、3月の年4回発行予定。
(2)基本媒体は墨字。メール配信、DAISY版、テープ版を会員の希望に応じ1種類を提供。
(3)協力セミナーの告知など誌面の内容に合致したトピックの掲載も検討していく。

■セミナー・啓発事業 副理事長 新井 愛一郎 

1.実践的ビジネススキル勉強会
(1)年3回の勉強会を開催
①アンケートでニーズがあったコミュニケーションスキル、仕事でのWindows10の困りごとなどを取り上げ、10月、12月、2月の3回実施する。
②ジェイリース株式会社様のご支援によりテレビ会議で東京・大阪・福岡を結び、さらにZoomを活用して、より広い地域での視覚障害者の就労、生活の向上に寄与する。
(2)勉強会の成果物の活用
①第1回から第9回までの内容(講演部分)をタートルHPにわかりやすい形で公開し、見えなくても仕事にかかわる具体的な作業を実際にこなせることを、広くアピールしていきたい。
②質問内容を含んだ詳細の内容については、実際の活用に役立てていただくように、希望される方ごとにメールで提供したい。
(10回目の勉強会はワークショップ形式だったので全体をこちらに含めていく。)なお、2020年2月(第11回)からの勉強会については、講演の音声をHP公開するなど考えていきたい。

2.啓発活動
(1)イベントへの参加について、啓発活動としてきちんと位置付けていき、どのように会として臨んでいくかをみんなで確認して、体制を組んでいく。なお、情報を広く寄せていただき、研究発表などは、期限を考え、計画的に取り組み、活動成果を多くの人に知ってもらうようにしていく。
(2)タートルパンフレットについては、関係機関の名称が変わり改訂版が作成された。これを契機に、会員に毎年定期的に送ることを行っていく。その際、「受診している眼科の先生へ」、などとテーマを決めて送りたい。
(3)啓発のための講演・セミナーの提案を行う。 見えなくても働き続けたいという、基本テーマについてタートルのメンバーは、体験をとおして多くの方へ伝えることができると考える。いろいろな形態で行ってくことを考えたい。

■ボランティア関係業務 理事 市川 宏明

(1)募集(各拠点共通)ボランティアセンターのWeb他、情報誌配布を利用。
(2)内容 
①ボランティア内容の精査を継続し、より皆様に活躍していただける環境を整備する。
②ボランティア募集からOJTなどのプロセスを明確化して効率的に運営をする。
③誘導/接遇等の研修の実施。
④意見交換会の実施。

職場で頑張っています

『送り続けよう、自分へのエール!? もう一度職場で輝く自分に』

会員 伊藤良子(いとうりょうこ)

人生の半ばで視覚障害者となった私が、5年のブランクを経て会社員に復帰してから、6月で1年が経ちました。私が病気と障害のある自分を受け入れ、白杖を持って再び働くことが出来るようになるまで、大変な気持ちの葛藤と、長く重苦しい時間を要しました。今日はこれまでの日々を振り返ってみたいと思います。

私は網膜の病気で、視野障害と視力の低下から40歳で障害者手帳を申請しました。それからは障害者枠で5年ほど働いていたのですが、その頃はまだ白杖も使わず、パソコンも健常者と同じものを使えていたので、会社に病気のことを伝えてはいるものの、特別な配慮などはお願いしていませんでした。今思えば、自分の見え方や、苦手なことなどを何も話していないのですから、仕事上の配慮や、周りからのフォローを受けることが出来ないのは当然です。職場に自分の居場所を作ることは出来ず、結果仕事を続けることが辛くなり、私は会社を退職しました。もう2度と外で仕事なんかしない。これからは障害者として隠れて生きていこう。そう考えていました。

この頃の私は、病気と障害のある自分を受け入れることが出来ていませんでした。まるで人ごとのような、だけど到底受け入れ難い気持ち。でも、今ならそれも無理ないかなと思えます。静かに今の自分を見つめることが出来るようになるには、まだたくさんの時間が私には必要でした。

しばらく悶々とした日々を過ごし、ようやく同じ病気の方々と交流したりするようになりました。そこで出会った、前向きに生きる仲間との交流は、私に力を与えてくれました。そして初めて白杖の歩行訓練を受けることにしました。仕事で通い慣れたこの道を、今の私は白杖を持って歩いている。前から来る人達は、私を避けて歩き去っていく。悲しくて腹が立ち、訓練中に過呼吸状態のようになったことを覚えています。

しかし、それでも少しずつ、色んな経験を重ねて行くうちに、今の自分を受け入れられるようになっていきました。

そんな頃、私の意識が変わる決定的な出来事が起こりました。実家の父が、仕事中に階段から落ち、頭を打ったことが原因で寝たきり状態になったのです。当時父はとても健康で車を運転し、パートで仕事も続けていました。その父が起きることも、食べることも、話すこともできなくなったのです。

私は、しばらく実家に滞在して、母と毎日病院に見舞いました。目を開けているのに体を動かすことも、話すこともできない父を見つめながら、私はこう考えるようになりました。
「私は、視覚障害者になったけれど、まだ視力がないわけではない。サポートは必要だけれど、1人で飛行機に乗って実家まで帰ってきた。歩ける、話せる、食べられる…。私はまだまだなんだって出来ているではないか。それをこの程度の不便で弱気になり、これから何十年も隠れて生きていこうなんて、父親に申し訳ない。こんな弱い自分は父の前で捨てて、前に進む強い自分に変わらなければ」と。

ほどなく支援施設に通い始めた私は、仕事への復帰を目指すようになりました。5年ぶりに仕事復帰をするにあたり、私は心に決めたことがあります。これからは、白杖を持った障害者の自分として仕事をする覚悟を持つ、ということです。言葉を変えると、今の自分を受け入れ、自分を周りの方にわかってもらう努力をするということでした。

私は、父のことがきっかけとなり、「もう一度外へ出て、見えづらさを抱えて仕事をする苦しさ、悲しさ、もどかしさ…、だけど同時に、周りの人たちと信頼感で繋がり、仕事を通して得られる楽しさと喜びを、思う存分味わおう。生きていることを楽しもう。」そう決めました。そして今、それは叶っています。

視覚障害者になっても前向きに働き、周りの人の温かさを感じながら幸せに生きることが出来ます。そのためには自分を責めないこと、自分が一番の心友になって、自分を応援し続けることだと思います。一緒に頑張りましょう!

定年まで頑張りました

『定年まで働いて思うこと』

賛助会員 福岡県朝倉農林事務所 髙松義孝(たかまつ よしたか)

○はじめに

私は、福岡県庁に就職し、農業改良普及員として働き始めました。主な業務は、農業の生産・経営技術指導でした。

20歳台の半ばに、緑内障と診断され、車の運転ができなくなりましたので、農林事務所に転勤しました。46歳の時、白内障と緑内障の手術を受け、眼内レンズを入れ、かなり見えるようになりましたが、54歳で網膜剥離を起こし、見える左眼の視力が0.2に、中心視野10度となりました(右眼手動弁)。

令和2年3月末日で定年退職し、再任用職員として働いています。今まで支えていただいたタートルの皆様に厚く御礼申し上げます。

○視覚障害者は白杖を持って歩かなければならない

初めて白杖を持つときは、勇気がいるものです。でも視覚障害者が、定年まで働くには、白杖歩行が必須です。道路交通法第14条第1項に(目が見えない者等の保護)で「目が見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む。)は、道路を通行するときは、政令で定めるつえを携えなければならない」と書かれています。

タートルのMLを読んでいると、たまに白杖無しで歩いていると書かれていることがありますが、これは大変危険なことです。事故が起こった時、白杖を持っていると、加害者や警察の対応が全然違います。また、多くの白杖利用者が駅のホームを利用すれば、現在問題になっている駅ホームドア設置について、国や鉄道会社も、もっと積極的になると思います。

○私のスケジュール管理とiPhone

紙の手帳が見えなくなったので、Wordでスケジュール管理をするようにしました。

私のスケジュール管理の方法ですが、自宅のPCにおおもとのスケジュールをWordで作成しています。毎日加筆しており、順番は急ぐもの順です。その日終わらなかった業務は、切り取って次の日に貼り付けます。このデータを、ゴシック太字で紙に印刷したものと、iPhoneには同じデータをメールしておきます。iPhoneのメールは、ボイスオーバーで読み上げることができ便利です。定期的にバックアップを取っています。

このスケジュールは、仕事とプライベート兼用です。職場で決定した業務は直ちに自宅のPCにメールします。外出先で思いついたことは、iPhoneのSiri機能を利用し、メールで自宅へ送ります。自宅に着いたメールをコピペして、おおもとのスケジュールに足してゆきます。このスケジュール管理で、仕事の能率が格段に向上しました。

○障害者差別解消法&改正障害者雇用促進法の施行で潮目が変わった

平成28年4月、一般を規制する障害者差別解消法及び、雇用の分野を規制する改正障害者雇用促進法が施行され、この中で事業者に対し合理的配慮の提供義務が課されました。 私の職場では、全職員が差別解消法の研修を受講しました。

これらの法律の施行前は、障害者に対し、差別的発言をする人がごく一部にいました。研修を受講することで、障害者への差別的な発言はなくなりました。また、研修後、合理的配慮の職員対応マニュアルが作成され、職員の意識も変わりました。仕事で利用する拡大読書器やスクリーンリーダーなど必要なものは、予算要求をすれば、購入してもらえるようになりました。人事評価も行われており、給与に反映されるので、これも一定の抑止力になっていると思います。

現在、各自治体で、「障害者活躍推進計画」が作成されつつあります。福岡県の場合は、労働組合の1職能である「障害労働者ネットワーク」が、計画の作成に参加し、障害者の現状を反映した計画となっています。

労働組合については、各職場の現状は様々だと思いますが、職員を当局から守ってくれるのはやはり労働組合ではないかと私は思っています。

今後、このような法整備や計画の作成が進み、視覚障害者がもっと働きやすい環境になることでしょう。

○地方と農業

タートル会員は、首都圏など大都市在住者が多数のように感じます。人口が集中し、仕事も多いので、当たり前のことですが、地方にも多くの人が住んでおり、視覚障害者もたくさんいます。障害者に対してのいろいろな情報やサービスなどは、IT化で都市と地方の差は縮まるかと思っていましたが、ますます拡大しているように感じます。こんな状況下でタートルがZoomによるオンラインサロンを始められたのは、とても意義のあることです。都市の方も地方の方も同じ条件で意見交換ができます。タートルが地方の会員を増やし、活動を活発にしていただくことを願ってやみません。

また、私は農政の仕事をしていますが、都市部への農産物は、ほとんどが地方で作られたものです。近年農村も高齢化、過疎化が進み、農産物の供給はどうなるのか心配しています。日本の食料自給率は30%台で北朝鮮並みです。経済力があり、食料を輸入できるからまだまだ良いですが、餓死者が出ている北朝鮮のことは他人事とは思えません。

国産農産物は、価格が高めではありますが、多くの補助金が使われているため、価格以上の価値があると私は考えています。できるだけ国産農産物を購入いただき、日本の農業を支えていただけたらと思っています。

○おわりに(今後のタートルに期待すること)

もっともっと視覚障害者が企業や官公庁で働く必要があると思います。働く人が多ければ多いほど、周囲の視覚障害者に対する理解が深まってゆきます。 総務省の指導により、VMware社のHorizon Clientが、グループウェアを利用している企業や官公庁に導入されつつあります。JAWSでもPCトーカーでもインターネットへの接続が困難なこの製品は、視覚障害者の就労の妨げになっています。視覚障害者がもっと声を上げないと、今後スクリーンリーダーで対応できない製品が導入される可能性があります。省庁の皆さんに視覚障害者への合理的配慮を求めたいものです。

また、私はアルミ製の折り畳み白状を使用していますが、これは、法定耐用年数4年と大蔵省令の耐用年数表に書かれています。

私は毎日通勤で使用しているので、2年しかもちません。白杖通勤する人の実態には合っていません。この省令を改正するには、財務省の職員の力が必要です。また法律の制定や改正については、国会での承認、可決が必要です。国会議員やキャリア官僚にも、視覚障害者が出てきてほしいものです。そうしないと、視覚障害者の視点が、国の施策に反映されません。

話は変わりますが、20年ほど前、「ビューティフルライフ」というドラマがあり、車いすの女性がヒロインで、ものすごい人気でした。このドラマ以降、車いすが普通の風景になった感じがあります。視覚障害者の小説で、「ヤンキー野郎と白杖ガール」というのがあります。この小説がドラマや映画になれば、世間の人たちが視覚障害者や白杖に持つイメージがかなり変わると思います。

また、視覚障害者の組織は全国や地方にたくさんあって、活動がばらばらなので、視覚障害者の力が弱いとも聞きます。日視連等視覚障害者団体を束ねる組織はあるのでしょうが、一致団結することが必要でしょう。そのイニシアチブを取れるのが、タートルだと考えています。皆さんの今後の活動に期待しています。

お知らせコーナー

ご参加をお待ちしております!!(今後の予定)

◎タートルサロン

毎月第3土曜日  14:00~16:00
*交流会開催月は講演会の後に開催します。
会場:日本視覚障害者職能開発センター(東京四ツ谷)
情報交換や気軽な相談の場としてご利用ください。

*新型コロナウイルス感染症の動向によっては、会場での会合が難しく、引き続き開催を見合わせさせていただきます。
※その場合にも、ZOOMによるオンラインでのサロンは引き続き行います。奮ってご参加ください(詳細は下記の事務局宛にお問い合わせください)。

一人で悩まず、先ずは相談を!!

「見えなくても普通に生活したい」という願いはだれもが同じです。職業的に自立し、当り前に働き続けたい願望がだれにもあります。一人で抱え込まず、仲間同士一緒に考え、気軽に相談し合うことで、見えてくるものもあります。迷わずご連絡ください!同じ体験をしている視覚障害者が丁寧に対応します。(相談は無料です)

*新型コロナウイルス感染症の動向によっては、会場に参集しての相談会は引き続き見合わせさせていただきます。
*電話やメールによる相談はお受けしていますので、下記の事務局まで電話またはメールをお寄せください。

正会員入会のご案内

認定NPO法人タートルは、自らが視覚障害を体験した者たちが「働くことに特化」した活動をしている「当事者団体」です。疾病やけがなどで視力障害を患った際、だれでも途方にくれてしまいます。その様な時、仕事を継続するためにはどのようにしていけばいいかを、経験を通して助言や支援をします。そして見えなくても働ける事実を広く社会に知ってもらうことを目的として活動しています。当事者だけでなく、晴眼者の方の入会も歓迎いたします。
※入会金はありません。年会費は5,000円です。

賛助会員入会のご案内

☆賛助会員の会費は、「認定NPO法人への寄付」として税制優遇が受けられます!
認定NPO法人タートルは、視覚障害当事者ばかりでなく、タートルの目的や活動に賛同し、ご理解ご協力いただける個人や団体の入会を心から歓迎します。
※年会費は1口5,000円です。(複数口大歓迎です)
眼科の先生方はじめ、産業医の先生、医療従事者の方々には、視覚障害者の心の支え、QOLの向上のためにも賛助会員への入会を歓迎いたします。また、眼の疾患により就労の継続に不安をお持ちの患者さんがおられましたら、どうぞ、当認定NPO法人タートルをご紹介いただけると幸いに存じます。

入会申し込みはタートルホームページの入会申し込みメールフォームからできます。また、申込書をダウンロードすることもできます。
URL:https://www.turtle.gr.jp/hpmain/

ご寄付のお願い

☆税制優遇が受けられることをご存知ですか?!
認定NPO法人タートルの活動にご支援をお願いします!!
昨今、中途視覚障害者からの就労相談希望は本当に多くあります。また、視力の低下による不安から、ロービジョン相談会・各拠点を含む交流会やタートルサロンに初めて参加される人も増えています。それらに適確・迅速に対応する体制作りや、関連資料の作成など、私達の活動を充実させるために皆様からの資金的ご支援が必須となっています。
個人・団体を問わず、暖かいご寄付をお願い申し上げます。

★当法人は、寄付された方が税制優遇を受けられる認定NPO法人の認可を受けました。
また、「認定NPO法人」は、年間100名の寄付を受けることが条件となっています。皆様の積極的なご支援をお願いいたします。
寄付は一口3,000円です。いつでも、何口でもご協力いただけます。寄付の申し込みは、タートルホームページの寄付申し込みメールフォームからできます。また、申込書をダウンロードすることもできます。
URL:https://www.turtle.gr.jp/hpmain/

≪会費・寄付等振込先≫

●郵便局からの振込
ゆうちょ銀行
記号番号:00150-2-595127
加入者名:特定非営利活動法人タートル

●他銀行からの振込
銀行名:ゆうちょ銀行
金融機関コード:9900
支店名:〇一九店(ゼロイチキユウ店)
支店コード:019
預金種目:当座
口座番号:0595127
口座名義:トクヒ)タートル

ご支援に感謝申し上げます!

多くの皆様から本当に暖かいご寄付を頂戴しました。心より感謝申し上げます。これらのご支援は、当法人の活動に有効に使用させていただきます。
今後とも皆様のご支援をお願い申し上げます。

活動スタッフとボランティアを募集しています!!

あなたも活動に参加しませんか?
認定NPO法人タートルは、視覚障害者の就労継続・雇用啓発につなげる相談、交流会、情報提供、セミナー開催、就労啓発等の事業を行っております。これらの事業の企画や運営に一緒に活動するスタッフとボランティアを募集しています。会員でも非会員でもかまいません。当事者だけでなく、晴眼者(目が不自由でない方)の協力も求めています。首都圏だけでなく、関西や九州など各拠点でもボランティアを募集しています。
具体的には事務作業の支援、情報誌の編集、HP作成の支援、交流会時の受付、視覚障害参加者の駅からの誘導や通信設定等いろいろとあります。詳細については事務局までお気軽にお問い合わせください。

タートル事務局連絡先

Tel:03-3351-3208
E-mail:m#ail@turtle.gr.jp
(SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)

編集後記

全国のタートル会員の皆様、いかがお過ごしでしょうか?

7月に熊本県を中心に九州や中部地方など、日本各地で豪雨が発生しました。自然災害はいつ発生するか分かりません。振り返ると、昨年8月には、九州北部豪雨があり、9月には、台風15号で関東地方にも被害が及びました。無いに越したことはありませんが、これからもいつ発生するか分からない自然災害のために、日ごろの備えが必要となりますね。

自然災害かどうかは別として、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関していえば、収まる気配を知らず、猛威を振るっている状況です。また、今年も猛暑がやってきて、8月は熱中症アラートが発令される毎日。一体私たちは「安心」を普通に享受できているのでしょうか?

普通といえば、一時導入が進んだテレワークが徐々に解除されている企業もあるようです。テレワークの普及が「普通」のワークライフになるはずが、寄り戻しが起こっているようです。出社する従業員が増えることで、今や通勤電車は満員。主要ターミナル駅付近にはだいぶ人が戻っているようです。

この時期、通勤をしている視覚障害者当事者もいらっしゃるかと思います。冬に向けて、油断をせず安心安全に暮らしてほしいと思うこの頃です…。

さて、今回の「情報誌」はいかがでしたでしょうか? これからも、会員の皆様に楽しんでいただけるような誌面にしていきたいと思っております。どうぞ宜しくお願い致します!!

(イチカワ ヒロ)

奥付

特定非営利活動法人 タートル 情報誌
『タートル第52号』
2020年9月27日発行 SSKU 増刊通巻第6847号
発行 特定非営利活動法人 タートル 理事長 松坂 治男