特定非営利活動法人タートル 情報誌
タートル 第23号

1998年10月9日第三種郵便物認可(毎月3回8の日発行)
2013年4月26日発行 SSKU 増刊通巻第4482号

目次

【巻頭言】

「2年間の大学院を修了して」

理事長 松坂 治男(まつざか はるお)

2010年は、人生の節目の満60歳で還暦を迎えました。

平成23年6月のタートルの通常総会で筑波技術大学の副学長小野束先生の基調講演を聴き、レゴというブロックを組み合わせて自動車を作り、それをプログラミングすることで制御するという話に興味を持ち、同年7月のオープンキャンパスに参加しました。そこで、小野副学長にお会いして、今年から始まった大学院の話を聞きました。入学要件が工学系の大学を卒業して、視覚障害者であれば、社会人枠で、小論文と面接で受けられることと奨学金が受けられ少ない学費で学ぶことができる旨を聞きました。8月に入試書類と小論文を提出し、9月に面接試験を受け、9月の中旬には、合格通知を受け取りました。わずか1ヵ月半前には思ってもみなかった大学院での研究者への道を進むことになりました。

入学して、大学院は、2年間の学習と、30単位の単位修得、そして修士の学位論文の提出が必要です。特に修士の学位論文は、8単位をしめています。そこで、修士論文のテーマをいろいろ考えた結果、近年急速に普及してきた情報機器であるスマートフォン・タブレット端末の利用状況の調査とユーザインターフェースについて研究することにしました。フラットな画面を指でジェスチャー操作することにより実行される小型コンピュータがどこまで全盲者に操作できるか、また、このような操作方式が、身近な情報機器の入力に波及して行くことにより、全盲者には操作できなくなるのではという不安から、このテーマを選定しました。

学生生活は、まず、横浜から茨城の筑波まで、片道2時間30分の単独歩行の移動で始まり、週3日の寮生活です。若い学生たちと一緒に勉強ができたことは、新鮮で若返った気持ちになりました。坂尻先生のご指導を受け、いくつかの学会発表を経て、どうにか修士論文をまとめることができました。

その論文は、次のURLで見ることができます。論文テーマ「視覚障害者のタッチスクリーン端末の利用とユーザインターフェースに関する研究」
http://hdl.handle.net/10460/1149

この2年間、貴重な経験をさせてくれた諸先生方、また、たくさんの仲間の協力と支援に感謝申し上げます。これから、ライフワークとして、いつでも、どこでも、情報の入手手段として利用できるタッチスクリーン端末の普及活動として講習会を開催していきたいと思います。

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【総会関係】

平成25年度NPO法人タートル通常総会開催のお知らせ

新緑の候、皆様におかれましてはご健勝のこととお慶び申し上げます。日頃は当法人の活動にご協力いただき、心より感謝申し上げます。
さて、平成25年度通常総会を下記のとおり開催いたしますので、万障お繰り合わせの上、ご出席願います。
総会の成立は会員総数の過半数出席(出席または委任状提出)が要件になっています。皆様の積極的な出席をお願い致します。
なお、本誌「タートル23号」掲載の議案を参照の上、別送のハガキまたはメールにて、総会への出席の可否をご連絡ください。
また、東京会場以外(大阪・福岡)でのスカイプ参加では議決権行使はできませんのでご注意ください。

日時:平成25年6月8日(土)
10:30〜17:00(受付10:00〜)
場所:(社福)日本盲人職能開発センター (地下研修室)
〒160-0003 東京都新宿区本塩町10-3
交通:四ツ谷駅(JR線、東京メトロ南北線・丸の内線)下車徒歩7分
駅からのガイド:9:30〜9:45の間、駅改札にガイドボランティアを配置します。
ガイドを希望される方は6月3日までに事務局までご連絡をお願いいたします。
連絡先(以下は委任状のアドレスではありません。)
 TEL 03-3351-3208
 メール  m#ail@turtle.gr.jp
 (SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)

●午前の部 10:30〜12:00
《平成25年度通常総会》
議題
第1号議案 平成24年度事業報告
第2・3号議案 平成24年度収支決算報告及び監査報告
第4号議案 任期満了に伴う役員改選について
第5号議案 平成25年度事業計画(案)
第6号議案 平成25年度収支予算(案)

●昼食 12:00〜13:30
★東京会場内は、食事が禁止されております。近くのお店にご案内いたしますので、希望者はまとまって行きましょう。

●午後の部 13:30〜17:00
《記念講演》
演題 日本盲人職能開発センターの視覚障害者への就労支援
講師 杉江 勝憲(すぎえ かつのり)氏
(社福)日本盲人職能開発センター 施設長

☆プロフィール
昭和22年 東京都文京区生まれ
昭和45年3月 社会学部社会学科卒業
昭和46年3月 高校社会科教員免許取得
昭和47年10月 国立塩原視力障害センター生活指導員
平成6年4月 国立身体障害者リハビリテーションセンター主任生活指導専門職
平成8年4月 国立福岡視力障害センター指導課長
平成11年4月 国立伊東重度障害者センター指導課長
平成14年4月 国立身体障害者リハビリテーションセンター指導課長
平成15年4月 国立神戸視力障害センター所長
平成16年4月 国立身体障害者リハビリテーションセンター理療教育部長
平成19年4月 (社福)日本盲人職能開発センター理事・総務部長・施設長

研究
平成16年
厚生労働科学研究「所得面等からみた身体障害者の生活実態に関する調査研究」分担研究者
平成17年〜18年
厚生労働科学研究「マルチメディアを活用した視覚障害者の教育訓練プログラムの研究開発」分担研究者

《参加者の交流》
★参加費(午後の部) 会員及び介助者は無料 非会員は500円

「タートル通常総会・記念講演」 スカイプ会場のご案内

◆大阪会場案内  担当理事 湯川 仁康

日時:平成25年6月8日(土)
10:30〜17:00(受付午前10:00〜)
場所: (社福)日本ライトハウス情報文化センター 4階 会議室3
〒550-0002 大阪市西区江戸堀1-13-2
☆大阪市営地下鉄四つ橋線 肥後橋駅北改札から2番出口を出てすぐ左
日本ライトハウス情報文化センターまでのアクセス
http://www.iccb.jp/access/
定員:24名  非会員であっても午前の部(総会)からの参加も歓迎します。
※参加費(午後の部) 会員及び介助者は無料 非会員は500円

【ご注意】当日、大阪会場では議決権の行使はできません。正会員の方は予め委任状の提出をお願いします。
※スカイプの通信状況により、聞き取りにくい場合があることを予めご了承ください。

◆プログラム
《午前の部》10:30〜12:00
◎特定非営利活動法人タートル通常総会
スカイプにて東京会場より中継します。

《午後の部》13:30〜17:00
◎記念講演
スカイプにて東京会場より中継します。
演題 日本盲人職能開発センターの視覚障害者への就労支援
講師 杉江 勝憲(すぎえ・かつのり)氏
(社福)日本盲人職能開発センター 施設長

◎交流
参加者近況報告・意見交換

◆申込方法
下記メールアドレスまでお申し込み下さい。
件名:「タートル大阪会場参加(お名前)」
本文:参加される方のお名前、会員・非会員の別、午前の部、午後の部、懇親会の出欠
※終了後、大阪会場でも有志による懇親会を予定しています。ぜひご参加ください。
締め切り:できるだけ6月5日(水)までにお願いします。
※タートル大阪会場連絡用メールアドレス(問い合先) e-mail:o#saka@turtle.gr.jp
 (SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)

◆福岡会場案内  担当理事 藤田 善久

日時:平成25年6月8日(土)
10:30〜17:00(受付10:00〜)
場所:福岡県立 ももち文化センター
   10:00 〜 13:00 3階 会議室6
   13:00 〜 17:00 3階 会議室5
〒814-0006 福岡市早良区百道2-3-15
福岡市営地下鉄空港線 藤崎駅2番地上出口より徒歩にて1分
※ガイドを希望される方は、6月5日までに福岡会場担当の藤田までご連絡をお願いいたします。
定員:18名  非会員であっても午前の部(総会)からの参加も歓迎します。
※参加費(午後の部) 会員及び介助者は無料 非会員は500円

【ご注意】当日、福岡会場では議決権の行使はできません。正会員の方は予め委任状の提出をお願いします。
※スカイプの通信状況により、聞き取りにくい場合があることを予めご了承ください。

◆プログラム
《午前の部》10:30〜12:00
◎特定非営利活動法人タートル通常総会
スカイプにて東京会場より中継します。

〈昼食〉 12:00〜13:30
昼食場所につきましては、ももち文化センターの別棟 1階にあります宝運楼(ほううんろう)にご案内いたしますので、ご希望の方はご利用ください。

《午後の部》13:30〜17:00
◎記念講演
スカイプにて東京会場より中継します。
演題 日本盲人職能開発センターの視覚障害者への就労支援
講師 杉江 勝憲(すぎえ・かつのり)氏
(社福)日本盲人職能開発センター 施設長

◎交流
参加者近況報告・意見交換

◆申込方法
下記メールアドレスまでお申し込み下さい。
件名:「タートル福岡会場参加(お名前)」
本文:参加される方のお名前、会員・非会員の別
締め切り:6月5日(水)まで。
※タートル福岡会場連絡用メールアドレス(問い合わせ先)
 e-mail:[省略]

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[第1号議案] 平成24年度事業報告

■相談事業  担当:工藤 正一

1.総論

1) 相談の基本的な方法は昨年とほぼ同様、全国各地の電話やホームページから入って来る通常の相談のうち、電話については、第一義的には専任相談員が在宅で専用電話とメールでそれに応え、ホームページから入って来た相談については、適宜各相談担当スタッフがその専門に合わせて対応した。また、平成23年度から新しく取り組んだインターネット通信のスカイプを活用した遠隔地相談会(スカイプ相談会)は、平成24年度も引き続き第2回目を開催した。さらに、中央から相談スタッフが出向いた地方相談会は実施できなかったが、必要に応じ、北海道をはじめ各地区担当理事と連絡を取りながら対応した。一方、各地区(福岡、関西、広島)では独自に相談会を実施するとともに、タートル交流会終了後実質的な相談会となることもあった。今後、交流会と相談会の連携が必要である。

2) 相談者については、視覚障害当事者や家族からが多い(192人)ことは当然のこととして、眼科医や産業医などからの相談が少しずつではあるが年々増えてきている。今年度は特に大企業の産業医からの相談が9件を数えたことは特に注目できる。これは関連学会等を通じて産業医に連携を働き続けてきた成果と考えられる。また、その他患者団体やNPO、医療機関、福祉施設、地方自治体(市区町村)、就労支援機関、弁護士等などからの相談や問い合わせも多く、相談の広がりが感じられた。

3) 相談内容は多岐にわたり、総合相談的な様相を呈しているため、できるだけ個々のニーズの正確な把握に努めた。その上で、相談スタッフが電話やメールで個別に対応したが、希望に応じて、さらに面接相談を行う一方、必要な場合には、適宜専門家にも同席してもらいながら、ロービジョン就労相談(平成21年度から開始)を行った。これらの相談に対しては、適切な情報提供をする必要があり、特に初期相談では問題点を整理し、次の段階にスムーズに繋げる必要があった。そのためには、特に就労事例や支援制度に関する情報が重要であり、それにはタートルの@就労啓発DVD「優秀な人材を見落としていませんか?」A「視覚障害者の就労の基盤となる事務処理技術及び医療・福祉・就労機関の連携による相談支援の在り方に関する研究報告」(平成20年度障害者保健福祉推進事業『障害者自立支援調査研究プロジェクト』)」などとともに、(独法)高齢・障害・求職者雇用支援機構の@「視覚障害者の雇用事例集〜支援機関を活用して職域拡大に取り組む〜」(平成23年3月発行)A「視覚障害者の職場定着推進マニュアル〜ともに働く職場をめざして〜」(平成22年3月改訂)B「中央障害者雇用情報センターリーフレット」(就労支援機器貸出制度など掲載)が役立った。

4) 雇用継続支援にはマネジメントとコーディネートが重要であることから、個々の状況に応じてそれらを行った。具体的には、眼科医や産業医をはじめ、ハローワークや地域障害者職業センターなどの職業リハビリテーション機関との連携を図り、障害の態様に応じた多様な委託訓練や、就労移行支援事業、ジョブコーチ制度、就労支援機器貸出し制度などの社会資源を有効に活用できるように支援した。その結果、再就職や職場復帰、雇用継続が図られるなど、一定の好事例も蓄積できた。

5) 職場復帰や雇用継続にとって、産業医の意見が重要となることに鑑み、ロービジョン就労相談ではできるだけ眼科医から産業医に情報提供をするようにした。産業医がロービジョンケアのできる眼科医と連携することで、保有視機能の状態や必要な配慮事項等の情報を共有でき、産業保健上からも適切な支援・雇用管理を行うことができたと考えられる。ちなみに、雇用継続のためには、在職中に医療→労働→福祉(労働で繋ぎ止めながら必要に応じて福祉に繋ぐ)という流れが、失業を防ぐためには特に重要であることを改めて確認できた。

6) このような相談の成果を関連学会等を通じて社会に還元しながら、眼科医療をはじめ関係機関との連携強化に努めた。具体的には、平成24年10月6、7日の両日開催された第13回日本ロービジョン学会学術総会(東京)において、「就労支援のための相談会と連携」(眼科医、就労支援機関との共同演題)を発表した。また、同年10月28日、京都にて第66回日本臨床眼科学会最終日に開催された第4回視覚障害者就労支援推進医療機関会議(日本ロービジョン学会主催・タートル協力)は約40人の参加で大きな成果を上げた。なお、同会議終了後、関西地区のタートル会員を中心にミニ交流会を開催した。さらに、眼科医療機関などが主催する講演会・交流会への参加・協力要請に協力した。

7) 最後に、私たちは、かつてより中途視覚障害者の就労継続のためには、誰もが最初にかかる眼科における対応の重要性、とりわけロービジョンケアの重要性を訴えてきたところであるが、厚生労働省は平成24年度から新しい診療報酬として「ロービジョン検査判断料」を新設したことは特筆できる。これが視覚障害者の社会参加、とりわけ就労継続に役立つものとするためには、ますますロービジョンケアとの連携が重要になると考えられる。

8) 以上のように、多くの関係者の努力によって、視覚障害者に対する理解はタートル発足(平成7年)当時から見れば着実に進んでいるとは言え、まだまだ一般企業で働くことの困難や課題も多かった。くしくも、今日の障害者の権利条約批准を巡る社会の動きに鑑みて、「4.合理的配慮等に関する事実」について、今回、初の試みとして調べてみたので、その結果を後述する。また、視覚障害者の最後の砦とも言える「あはき」(按摩マッサージ指圧、鍼、灸)に進路変更せざるを得ない場合も少なくなかったことから、「あはき」は重要な職域であることを改めて認識した。何れにせよ、視覚障害者が働き続けられるようにすることの意義について、更なる啓発が必要である。

2.相談件数

◆視覚障害当事者からの相談(192人)

平成24年4月から平成25年3月までの1年間に行った視覚障害当事者(代理相談含む)に対する相談の数は、実人員で合計192人であった。なお、この数はあくまで視覚障害当事者の数で、医療、福祉、就労支援機関その他関係者からの相談の数は含んでいない。ちなみに、この192人のカテゴリー別の実人員の内訳は、ロービジョン就労相談(33人)、面接による個別相談(7人)、スカイプ相談会(3人)、その他電話・メール等の相談(149人)であった。なお、2つのカテゴリーにまたがる場合は、重複しないように調整してある。(相談者数には家族や専門家などの同席者は反映していない。ちなみに、家族や専門家などの同席状況は以下参照。)

◆ロービジョン就労相談(33人)

開催回数:12回
相談者実人員:33人
相談者延べ人数:38人
(家族や専門家などの同席状況)
家族同席:9件
専門家同席:4件(弁護士、福祉専門家、教師、看護師)
産業医同席:1件
会社の人事労務担当者同席:1件
その他同席:1件(当事者の先輩)

◆面接による個別相談(7人)

開催回数:4回
相談者実人員:7人
専門家同席:3件(弁護士、あはき専門家、教員)

◆スカイプ相談会(3人)

開催回数:1回
相談者実人員:3人
専門家同席:日本ライトハウス指導員

◆その他電話・メール等の相談(149人)

実人員:149人

3.成果・特徴

個々の事例の中には数年にわたり継続して支援を行うことが少なくない。そのような中で、様々な困難を乗り越え働き続けていること自体がある意味では大きな成果であるとも言える。ここで、この1年間に、復職、再就職、新規就職、進学を果たしたものをあえて成果として示すと、職場復帰8人、再就職8人、新規就職2人、進学6人、合計24人であった。それらを見ると、委託訓練や就労移行支援事業、ジョブコーチが効果的に活用されたことが確認できた。また、中途視覚障害者の職場復帰、雇用継続のためには、ロービジョンケアと結びつくことの重要性や、産業医との連携も重要であることが示唆された。

以下、それぞれの成果の概要と、相談の中で、特徴的と感じたことを簡単に述べる。

1) 職場復帰事例
職場復帰については8人を確認し、その内6人がロービジョンケアを受けていた。また、委託訓練(在職者)を受けた者2人、自立訓練を受けた者6人であった。中には分限免職を撤回させて復職した者もあった。特筆できるのは、地元に適切な訓練の委託先がないため、東京の訓練施設に委託して受けることができた事例もあり、これを可能としたのは、産業医、眼科医、訓練施設同士の密接な連携があったからであった。

2) 再就職事例
再就職については8人を確認し、この内6人がロービジョンケアを受けていた。職業訓練では、国立職業リハビリテーションセンター、日本ライトハウスで各1人、委託訓練(求職者)2人、就労移行支援事業が3人、その他特に訓練を受けずが1人(ヘルスキーパー)であった。また、委託訓練を受けた2人がジョブコーチ支援を受けることができた。

3) 新規就職事例
新規就職については2人を確認し、2人共に視覚障害のためなかなか就職に結びつかず、大卒後に一定の職業訓練が必要であった。共に眼科から紹介を受け、ロービジョン就労相談を行う中で、それぞれの状況に応じて、1人は国立職業リハビリテーションセンターで、もう1人は委託訓練(求職者)で職業訓練を受けた。

4) 進学した事例
進学については、6人を確認し、この内3人がロービジョンケアを受けていた。進学先は、大学のPT学科1人、他の5人はあはき学科(大学1,特別支援学校4)であった。

5) 産業医が関わった事例
産業医が関わった事例が9人あった。何れも大企業の事例であり、産業医の後押しにより訓練に繋がったり、その結果、現在訓練中、あるいは職場復帰を果たしたりなど、複数の成果が確認された。中には、眼科医から要請を受けた職業センターのカウンセラーも同席し、職場の人事担当者も交えて復職について意見交換した結果、復職し、雇用継続ができた事例もあった。特に、複数の事例で、産業医に対する眼科医からの情報提供書が役立ったと考えられる。

6) 個別労働紛争解決制度等の活用
退職強要されているような深刻な相談が複数あったが、これらに対しては、個別労働紛争解決制度を紹介した。また、弁護士に繋いだケース、弁護士から相談があったケースが、合わせて9件あった。また、地方公務員の分限免職について、処分の取り消しを求めていたケースでは、処分が取り消され、職場復帰を果たした。

7) 人事院通知「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて」の活用事例
職場復帰・継続就労のためリハビリテーションを受けようとした時、職場の人事担当者が視覚障害者のリハビリテーションを理解できず、なかなかそれを認めてくれないという相談は依然として多い。そのような時、人事院通知「障害を受ける職員が受けるリハビリテーションについて」(注)に基づき、またはそれを参考にして、研修扱い又は病気休暇などで、自立訓練や職業訓練を受けた事例を紹介し、同通知を提供し、助言した。その結果、3人の教員が訓練を受けたケースを確認した。ちなみに、これまでにも本通知を示して交渉したことで訓練を受けたという事例は複数確認しているが、任命権者が本通知そのものを適用してそれを実行したかどうかは定かではない。また、民間企業の場合でも、この通知を示したことで、スムーズに訓練を認めてもらえたという事例はこれまでに複数あった。

〔注:解説〕
人事院は平成19年1月29日付けで職員福祉課長と研修調整課長連名の通知「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて」(職職−35、人研調−115)を、各省等人事担当課長あてに出している。そのポイントは、(1)けがや病気が治る見込みがなくても医療行為として行われるリハビリテーションは病気休暇の対象となり得ること(2)点字訓練や音声ソフトを用いたパソコン操作など復職に必要な技術を修得する訓練は人事院規則に基づく研修に含まれること、を各府省庁人事担当課長あて通知したもの。総務省を通じて各都道府県市町村まで通知されているが、認めるかどうかは任命権者の裁量にかかっている。

4.「合理的配慮等」に関する事実

障害者権利条約の批准等を巡る今日の社会の動きに鑑み、電話等による相談を受ける中で、「合理的配慮」等に関連するであろう具体的事実を拾い上げ、2つのカテゴリー(A:配慮があった事実、B:偏見や差別、本人のみならず社会の障害の受容欠損などにより、配慮されなかった事実)について、今回初の分類を試みた。なお、どのように整理するかという基本的な課題もあったが、ここではとりあえず、相談40事例について、暫定的に調べたものであるため、内容的にも不十分であることを予めご了解願いたい。また、事実の括弧内の数字は件数である。 (担当:下堂薗保)

A:配慮があった事実

1.周辺補助機器の導入配慮(4)
2.職業訓練の受講許可(3)
3.生活訓練受講許可(3)
4.現場部門から事務部門へ配置転換(2)
5.一般校から盲学校へ配置転換(1)
6.休職・訓練を容認(1)
7.リハビリテーション後、職場復帰を容認(2)
8.退職に対し、延長措置考慮(1)
9.退職金と補助機器の代金、希望通り容認(1)
10.本人に適した仕事を割り当てる(1)
11.何が適した仕事か、会社が、発掘に率先協力(1)
12.不自由に対して手を貸したり、工夫したり、居心地よいさわやか支援体制(1)
13.上司の励ましや優しい業務指導(しかし、接客業は視力低下では不可能とやむなく退職)(1)
14.会社が失明者の雇用経験がない現実に備えて、産業医自身が学習(1)

B:偏見や差別、本人のみならず社会の障害の受容欠損などにより、配慮されなかった事実

1.休職期間満了で退職強要(4)
2.職業訓練の受講に配慮なし(3)
3.職業訓練の意義を理解してもらえない(1)
4.職場内において、配置転換配慮なし(2)
5.ケアマネとして仕事をもらえない(1)
6.職場復帰しても仕事をもらえない(1)
7.中小企業のため、社内に対処できる仕事がないと解雇(1)
8.運転手は、目が悪いとできないからと解雇(1)
9.在宅勤務の予告が、事情が変わったと、突然解雇通告(1)
10.「見えなければ辞めるしかないね」と冷淡に突き放される(1)
11.そろそろ限界か、と圧力をかけられるが、職業訓練、補助機器、配置転換などの配慮なし(1)
12.ノルマを達成できなければ解雇、自分で就職を探すことになると通告される(1)
13.視力低下のことを説明、達成目標の数字の見直しを求めても、配慮なし(1)
14.目標達成が強いられ、ストレスが高じうつ症状を発症(1)
15.まったくの孤立無援状態(1)
16.補助機器の整備等考慮なし(1)
17.ただ、出社させるだけ、仕事をさせようとしない(1)
18.業務遂行能力低下が視覚障害のためと認めようとしない(1)
19.仕事が遅い、間違いがある、二重手間がかかる等と、欠点を指摘するだけ(1)
20.できる仕事は何か、協力してみつけようとしない(1)
21.社会は、視覚障害者を何もできないと、偏見的に見る風潮(1)
22.いやがらせ、皮肉、見下し、屈辱感等、精神的圧力(1)
23.一方的に賃金を引下げられ、退職誘導(1)
24.給与、大幅なカット(1)
25.進行性疾病と分ったとたん、見えなくなったとき対処できないからと解雇(1)
26.見えないという状態を理解してもらえない(1)
27.雇用主のパワーハラスメント的言動(立腹、許せないとの反発感)(1)
28.一家の主、障害受容ができないため、仕事、家族の日常生活等に悪影響(1)
29.見えない者は不用と、親族会議で離婚を強いられた(1)
30.育児中の母親の視力低下に、家族は対処法、協力の仕方が分らない(1)
31.視力低下に伴う、看護師という職務の継続就労に不安感(1)

■交流会事業報告  担当:大脇 俊隆

1.全般

・平成24年度も従来どおり復職、再就職、就労継続について情報提供、会員相互の交流、情報交換の場所の提供に努めた。
・ 年間コンセプトを「我々も応変力を高めよう〜状況の変化に対応し、自分たちも変わろう!」とした。

2.スカイプを利用しての交流会を3回実施した。

@ 2012年7月28日 講師 重田 雅俊 (しげた まさとし)氏
演題:「壁に当たったとき」 〜60年を振り返って〜
参加者人数:東京37名、名古屋4名、大阪18名、広島6名、福岡12名 合計77名
A 2012年9月8日 講師 清水 晃(しみず あきら)氏
演題:「信じる気持ちとつながる心」
参加者人数:東京51名、名古屋3名、大阪14名、福岡14名 合計82名
B 2012年2月16日 講師 荒川 明宏 (あらかわ あきひろ)氏
演題:「スマートフォンで生活がどう変わるのか」
参加者人数:東京54名、名古屋6名、大阪11名、福岡12名 合計83名

・交流会に女性の参加者がより多く見られた。
・交流会終了後の懇談会への参加者の皆さんが、話を聞いてもらいたいという切実な危機感を参加者全員で共有した。
・講演中に中断したり、ノイズやハウリングで聞きづらい時もあるなど、平成24年度もスカイプ使用時での交流会開催の通信環境の改善を図ることができなかった。対策等、引き続き課題である。

■情報提供事業報告

T IT事業   担当:松坂 治男

1.Webの管理(外部委託)

行事等のお知らせ:6回、「情報誌タートル」:4回を掲載した。
玉手箱にデータを追加した。「視覚障害者の雇用継続支援実用マニアル」
Webの「テキスト広告」については保留とする。テキスト広告の依頼が改善されないため、掲載は断念した。
寄付金・助成金のページの新設は、予算の関係で、来期に行う。

2.MLの管理(外部委託)

会員の情報交換等が行われている。

3.スカイプを利用した交流会開催時の通信環境の改善

「車両競技公益資金記念財団」の助成金でパソコン・マイク・スピーカを整備し、仙台・名古屋・大阪・広島・福岡に設置した。
まだまだスカイプでの交流会の中継が不安定である。引き続き改善を図る。

U 情報誌作成事業  担当:長岡 保

1.全般

計画通り、第19号から22号まで、年4回の情報誌を発刊した。

2.特に着意した事項

(1) 昨年に引き続き、「お知らせ」のコーナーで、タートルの年間の活動、今後の予定等を努めて早い時期に周知するよう配慮した。
また、相談活動、必要な事務連絡については、初めて情報誌を見る新しい会員の方にも漏れなくお知らせするため、毎回、ほぼ同じような内容を継続的に掲載した。
(2) 内容的には、【職場で頑張っています】と【定年まで頑張りました】のコーナーを、毎回掲載する予定だったが、22号は、【定年まで頑張りました】の投稿の調整が上手く行かず「職場で頑張っています」を2件掲載することとなった。

■セミナー開催事業  担当:新井 愛一郎

1.理解のための出前セミナー

(1)スタッフでの集まりを持ち、理解のためのセミナーをどのような内容にしていくのかの検討をおこなった。
(2)視覚障害者理解のための「出前セミナーお試し会」の開催
10月23日、日本盲人職能開発センターの協力を得て、4社が参加し、体験セミナーを行った。
・ 参加した企業は、具体的な雇用についての問題意識があった。
このような企業には、これまでタートルが行っている相談活動の内容をセミナーとして開催する必要があるのではないか。
・ 理解のためのセミナーを「出前」として行う場合の内容の詰めと、具体的な開催計画が課題である。

2.第5回視覚障害者雇用継続支援セミナーの開催

@ 開催実績
11月21日開催  中野サンプラザ(於)
・ITの職業訓練が具体的な雇用にどう結びついたのか
・雇用・定着にあたっての企業の不安をどう解消したのか
講師: 大内 朋恵 氏
国立職業リハビリテーションセンター 職業訓練部 訓練第三課 主任職業訓練指導員
・64名参加。昨年より少し減ったが、基本的に幅広い層からの参加はあった。
・参加費(資料代)を有料とした。
A課題等
・国立職業リハビリテーションセンターとの繋がりを持てるようになった。今後の継続的なつながりをどうしていくのか。
・当事者の事例発表では、活用できるITスキルの大切さが語られた。
・当事者が業務遂行の中で実践している工夫等を、みんなで出し合い、整理し交流することの大切さが提起された。
・これまでのセミナーの成果を整理して提起した。

■就労啓発事業  担当:安達 文洋

 出前セミナー等、セミナー開催事業に協力した。

■助成金関係   担当:湯川 仁康

 助成金の情報収集に努め、タートルの事業に合致すると思われる4件の申請を行い、内以下の2件の助成が決定した。

1.申請先:日本郵便株式会社
助成名:平成25(2013)年度 年賀寄附金配分申請
申請年月:平成24年11月
申請事業名:視覚障害者の就労のための啓発用「ガイドブック」作成事業
助成額:800,000円(事業費900,000円)

2.申請先:田辺三菱製薬株式会社
助成名:難病患者団体支援活動「手のひらパートナープログラム」
申請年月:平成24年11月
申請事業名:中途視覚障害者の就労継続相談・交流会事業
助成額:680,000円(事業費800,000円)

■ボランティア   担当:長岡 保

1.全般

平成24年度のボランティア事業は、視覚障害当事者で運営するタートルの行事に対し、ボランティアの協力を得て、参加者の安全と円滑な事業の運営に寄与できたものと思料する。
6月に懇談会を実施し、協力をする側と、依頼する側の意思の疎通を図ることが出来た。

2.ボランティアの現況等

(1)年度当初5名であったが、現在、6名の方に登録を頂いている。
ただし、2名の方が、交流会等、出かけての協力が、難しくなってきたと言うことで、パソコン等による自宅での事務協力を申し出ている。
(2)8月の宿泊全体役員会時においては、ボランティアの協力がいただけず、役員の家族の支援を頂いた。

3.問題点

支援を必要とする時期に、必要な人数の協力が得られない場合がある。結論として、ボランティアの人数が足りないと考える。対策として、協力してくれる方を募るとともに、交流会等の場を活用し、情報提供を呼びかけていきたい。

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[第2、3号議案] 平成24年度収支決算報告及び監査報告

平成24年度 特定非営利活動に係る事業会計収支計算書

平成24年4月1日から平成25年3月31日まで
特定非営利活動法人タートル

T 経常収入の部
[表データ 省略]

U 経常支出の部
[表データ 省略]

〔平成24年度 会計監査報告〕

平成25年4月10日   監査の結果、相違ないことを認めます。
監事     伊吾田 伸也  印
監事     大橋 由昌   印

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[第4号議案] 任期満了に伴う役員改選について

総会の場において、立候補、推薦、情況により、理事会から提案等をお願いするように考えております。

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[第5号議案] 平成25年度事業計画案

■相談事業計画

@ 相談事業については、基本的に前年通りであるが、電話、メール、個別面接相談、ロービジョン就労相談に加えて、今年度から、新しく取り組まれるタートルサロン(交流会)の参加者に対する相談会を行う。
A 前年度に引き続き、従来の当事者による相談会をベースにしながら、できるだけ専門家の協力を得て、就労継続のための相談の質的向上を図る。
B 地方における相談を支援するため、スカイプ相談会をはじめ、各地区担当理事の要請があれば、現地相談にも可能な限り対応する。
C 相談担当が、相談のノウハウを共有できるような、簡易なマニュアルの作成については、引き続き検討していく。
D 眼科医や産業医などとの連携を深めるために、次の行事に参加・協力する。
・第14回日本ロービジョン学会学術総会(10月9、10、11日、岡山県倉敷市)
・第5回視覚障害者就労推進医療機関会議(11月3日、パシフィコ横浜)

■交流会事業計画

1.相談活動を定例化し、またタートルの存在をより身近なものにするため、相談会と懇談会を合わせた場を新設し、毎月1回実施する。
@ 名称:タートルサロン
A 実施日時:毎月第3土曜日の午後2時から4時まで
B 場所:日本盲人職能開発センター 1階会議室
C 担当:工藤、重田、スタッフで参加できる方
D 内容:特にテーマなどはもうけず、集まった方の話を聞き懇談する。
E 事務局の発送作業や各班の打ち合わせも平行したり時間をずらして実施可能。

2.タートルサロンの実施に伴い、交流会の内容を整理し、時間短縮を図る
@ 実施回数:交流会は、これまでどおりスカイプを利用して年3回実施する。
A 実施する月:9月、11月、2月の3回
B 実施日時:第3土曜日の午後2時から5時まで
C 内容:第1部 講演会(2時間程度) 第2部 タートルサロン(1時間程度)
ア、講演会の主な内容(スカイプ使用)
理事長挨拶、講師紹介、講演、各地と結んで質疑応答、事務連絡や情報提供
イ、タートルサロン(スカイプは使用しない。)
司会挨拶、参加者自己紹介(声出し)、懇談、居残り相談の確認など

3.スカイプの安定化を図る
@ スカイプについての知識や技術を向上させる。
A 設備や使用環境を改善する。
B スカイプ不調時の対策を強化する。
C スカイプより信頼度の高い情報共有手段を模索する。テレビ会議など。

4.講師の選定を迅速に確実に行う体制を作る。
@ 広くスタッフに呼びかけて、4月中に3人の講師について目処を付ける。
A 講師選定の目安
ア、情報機器や職業など、新しい情報や知識について話せる人(9月交流会)
イ、障害者の就労や福祉制度について話せる人(11月交流会)
ウ、働いている様子や経験談を話せる人(2月交流会)
その他、要望や推薦が強く出された講演者
B 仕事の流れや分担をはっきりさせて協力して取り組み、理事が最終責任を持つ。

■情報提供事業計画

T IT事業

1.Webの管理(外部委託)
 ・お知らせ・「情報誌タートル」を掲載する。
・寄付金・助成金のページを新設する。

2.MLの管理(外部委託)

3.スカイプを利用した交流会開催時の通信の安定を図る。

U 情報誌作成事業

1.全般
25年度も引き続き、会員はもとより、会員以外で中途視覚障害で悩んでおられる方に役に立つ情報誌の作成・提供に努める。
その際、タートルの活動、動きがわかるような予定、内容等に配慮するほか、年1〜2回寄付金の紹介コーナーを追加する。

2.発刊予定
 5月、9月、12月、3月の年4回の発刊を予定する。

■セミナー開催事業計画

以下の活動を就労啓発事業チームと協力して進める。
スタッフの取り組みを強化したい。

1.視覚障害者理解のための出前セミナー
対象になる企業等の違いにより2つの形に分けて実施を計画する。
@ 視覚障害者雇用に対して具体的な問題意識を持っている企業相談活動をセミナーとして行えるのではないか。
9月までに関係機関と話合いを持ち、可能性を検討し、具体的なプランを考える。
A 視覚障害者について初歩的な理解を目的としたもの(昨年企画した「出前セミナーお試し会」のようなもの)
セミナーの内容詰めと、具体的な開催計画をたて、就労支援啓発のガイドブックを活用して、試行的に実施。10月と2月を予定する。

2.視覚障害者雇用継続支援セミナー
今年度(第6回)は行わずに、以下の点について整理していく。
@ これまで5回のセミナーで提起した課題の取組状況の把握と、今後の対策を考える。
A 業務遂行上での工夫や、スキルなどを交流・蓄積していく必要がある。
MLや機関紙、タートルサロンなどを活用して情報交換を行う。

■就労啓発事業計画

「就労支援のためのガイドブック」作成事業に対し、年賀寄付金配分の助成をうけることになったので、これを1,000部作成する。
また、これを関係機関に配布し、アンケート調査を行う。

■助成金申請

平成25年度各事業計画に合致する助成金の情報を入手し、各事業担当理事と協調しながら申請していく。

■ボランティア

1.全般
25年度も引き続きボランティアの協力を得て、各種行事、活動に際し参加者及び会員全員の安全と円滑な活動の実施に寄与すべく、協力者の確保に努める。
その際、誘導ガイドのほかに、事務局等の協力を受けられるボランティアの発掘にも努める。

2.25年度の重点事項
(1)ボランティアの募集
東京都及び、新宿区の社会福祉協議会等を通じ、ボランティアの募集を依頼する。
また、会員等を通じ、協力者の情報の入手に努める。
(2)協力者との懇談会を継続して行う。

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[第6号議案] 平成25年度収支予算(案)

平成25年度 特定非営利活動に係る事業会計収支予算書

平成25年4月1日から平成26年3月31日まで
特定非営利活動法人タートル

T 経常収入の部
[表データ 省略]

U 経常支出の部
[表データ 省略]

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【2月交流会講演】

『スマートフォンで生活がどう変わるのか』

株式会社 ラビット 代表取締役
荒川 明宏(あらかわ あきひろ)氏

皆さんこんにちは。本日講演させていただきます荒川と言います。障害は、全盲です。宜しくお願いします。

本日は、スマートフォンについて講演させていただきます。読まれる方は少ないと思いますが、点字毎日などの雑誌に書いたり、少ない時間ですが、NHKのラジオにも出演させていただきました。皆さんは、いろんな面で興味があるのではないかなと思います。

これから話をさせていただきますが、スマートフォンに機種変更をしたらいいという話ではないので、くれぐれも勘違いだけはしないようにしてください。皆さんの携帯も、いつ故障するのか分からないわけです。例えば、交流会を終えて帰宅する際に、携帯電話を落として壊したため、機種変更をしなければならない場合や、同じ携帯電話の部品が無いために、スマートフォンに変えなければならないかもしれません。そのようなことがあった場合のために、スマートフォンがどういうものであるかを知っていただきたいと思います。

いろんなビジネス業界を見渡しても、社内でのスマートフォンの使用は当たり前という時代になっています。ある企業では、各職員の固定電話を廃止して、スマートフォンに切り替えている企業があります。どのようなシステムかと言いますと、社内は無線ランを組み、内線として使用しつつ、外線はそのまま使用できるというものです。今の時代、デスクにしがみついて仕事をすることではなく、どれだけ外でアクティブに仕事ができるのかが重要ですので、デスクから、固定電話がなくなっている時代となっています。

例えば、一昔前の企業では、高額な交換機を導入して、電話を繋いでいましたが、今では月々8,000円程度で、インターネットが交換機の役割をするシステムなどがあります。そうなると、iPhoneが内線電話の役割も果たすことになるわけです。私の会社も導入していますが、そのような時代となっています。当然、私もボタン式の方がいいわけですが、使い易いとか、使い難いという問題ではなく、時代が変わってきていることを知っていただきたいと思います。

スマートフォンに切り替えるメリットは、3つあります。
1つ目は、ソフトバンク、AU、ドコモというキャリアがあるわけですが、キャリアを限定しなくてもいいところにあります。今までであれば、見えない方が音声で確実に操作しようとすると、10人のうち8人が、ドコモのらくらくフォンでしたが、キャリアを限定しなくてもいいわけです。
2つ目は、電話の機種を選ばないということです。皆さん、このスマートフォンが欲しいなと思えば、そのスマートフォンが使えるわけですから、自分が本当に気に入ったものを選べるというメリットがあります。
3つ目は、高機能で様々なことができることです。携帯電話では、数社同時の通話はできませんが、スマートフォンであれば、インターネット通信のスカイプが使用できるため、数社同時の通話ができるわけです。

高機能がゆえに、複雑且つ使いづらいというデメリットも見えてきますが、使えるのであれば、こういうふうにも使えるというところもあります。しかし、講演終了後、所要のため帰宅しなければなりませんので、申し訳ございませんが、スマートフォンがどのようなものであるのか、皆さんに触っていただくことができません。本日は、iPhoneとAndroidのスマートフォンを2機種持参しましたが、簡単に外観を説明しますと、デコボコは一切ありません。Androidのスマートフォンでは、電源、音量のスライド、パソコンでいうスタートのホームの3つがボタンとなっているだけで、あとは平たくて何もありません。iPhoneでは、電源、ホーム、マナーモード、2つの音量ボタンの5つしかありません。

どのようにして使うのかというと、画面に文字がいろいろ出ているのですが、画面に指を触れたまま手を離さずに、画面を掃除するような感じで撫でるようにします。ファイルマネージャー、乗換案内プラス、ラジコ、ドキュメントトーカ ボイスナビ、デイジーフォン、ニュースブラウザなどというふうに、指で触れた画面のアイコンを読み上げてくれます。極端に言うと、覚えなくても偏りなく万遍に触れていけば、どのようなアイコンがあるのかを読み上げてくれます。

それでは、電話をかけてみます。例えば、0を入れるのであれば、0の場所を指で触って、ポンポンと素早く2回叩くと、0が入力されます。このようにして文字入力をしていくわけですが、当然画面をタッチするよりも、ボタンの方が早く入力できます。私は、iPhoneを使った場合、キーボード入力よりも断然遅いのですが、それなりにメール返信などしたり、ある程度使えるようになりました。スマートフォンというのは、パソコンが小型化したものに、電話機能が付け加えられたものだというふうに思えば、マイナスイメージはありません。

では、スマートフォンを使う場合には、どういうふうにしたらいいのかということです。iPhoneの場合は、お店でのiPhone契約後、その場で店員さんに「ボイスオーバーという設定をして下さい」と頼めば、30秒で音を出すことができます。このように音がその場で出せるので、そこから先は利用者次第というのがiPhoneです。

これに対して、もう1つAndroidというOSがあります。よく聞くWindows XPとかWindows7などいろいろあると思いますが、同じようにAndroid4.0とか2.3など、いろいろAndroidのバージョンがあります。Androidというスマートフォンは、このAndroid4以上のOSであれば、音を出すことが可能です。Windowsのパソコンで音を出す場合には、PC-Talkerや、Focus Talkというソフトの4万円が必要となり、JAWSに至っては15万円という値段がするのです。Androidのスマートフォンを音声化するためには、ドキュメントトーカfor Android という990円のソフトを購入しなければなりません。その他、3〜4本のソフトをインストールしなければならないのですが、ソフトバンク、au、ドコモのお店に行って、「契約しますので、ドキュメントトーカfor Android などをインストールして下さい」と言っても、「そのようなソフトについては、インストールなどの対応はしません」というのが、お店側のマニュアルとなっています。しかしながら、お店には販売ノルマがありますので、お店が混雑していない時間帯や、節度無く言うのをやめれば、インストールしてくれる店員さんが結構います。私も、過去にそれぞれ別のお店に行って、全部で4回インストールしてもらいましたが、お店の人は操作方法を知りませんでした。私はそれなりに詳しいので、私の説明通りの操作をお願いしましたが、その通りにしてもらえずに、2時間半程度をかけて設定してもらいました。

このドキュメントトーカfor Androidというのを入れて、スマートフォンをやると、電話やメールは別として、どのようなことができるのかということです。私が一番面白いと感じた中に、ドキュメントトーカ ボイスナビという無償のソフトがあります。このボイスナビというのをオンにして歩道を歩くと、ビル名や店舗名を言ってくれます。例えば、読み上げ距離の設定を100メートルにした場合、範囲内の店舗名を読み上げてくれます。しかしながら、次々と読み上げられる店舗名が雑音と感じますので、「距離20メートル以内の店舗名を読み上げる」という設定にすると、快適に歩くことができます。健常者と一緒に歩いても、全ての店舗名を言ってはくれません。私は、バスなどの公共交通機関に乗車している際、これをオンにして、「いま、どこを走っているのだな」というふうに経路を確認しており、面白いなという感じで使っています。しかし、このように興味感覚でおこなっておけば、いざタクシーに乗って、道に迷った場合でも、付近の店舗名、ビル名、交差点名などがわかるので、結構役に立ちます。

その他、radikoとかワンセグなどを聞けますので、結構面白いです。ワンセグなどの受信精度を比較すると、正直言って、どこかの会社よりも、スマートフォンが上回っていると思います。radikoなどは、普通のパソコンで聞くのと同じように聞けるので、きれいに聞けます。

自宅で原稿などを書いたりする時には、パソコンの電源を入れて、メールの受信確認ができるわけですが、そうでない時は、毎朝メールを受信確認すると、約200通のメールを受信しています。ほとんどはメーリングリストなのですが、その中に重要なメールも5〜6通ありますので、一通り聞かなければならないわけです。しかし、会社に出社後、200通のメールを確認していたのでは、仕事になりませんし、出社すると同時に、社員からの質問などに回答するのと併せて、的確な指示を出す必要がある立場なので、暢気に朝からメールを読む時間はありません。あまり良くないことと思いつつも、電車の中や、歩いている途中に、スマートフォンでメールを一通り確認して、出社するようにしています。

当社にいる数人の健常者の社員には、強制的にスマートフォンを持たせて、「外出先で、全てのメールの確認をしなさい」「社内のパソコンでは、メールを見てはいけません」「帰社後、すぐに仕事ができる体勢をとりなさい」というような指示を出しています。このようなことができるのは、スマートフォンの特徴でもあり、様々なことができます。

パソコンのインターネットを使って、いろんな情報を検索される皆様は、目的の情報を見つけるのに、結構苦労されていると思いますが、スマートフォンでは、iPhoneやAndroidの携帯でインターネットが使えると、ものを見つけるのがとても簡単なのです。何故かといいますと、健常者向けへのコマーシャルが、それほど出ていないということと併せて、スマートフォンの画面は小さいので、必要な情報がコンパクトに書かれているからです。ということは、余計なコマーシャルを聞かずにすみますし、視覚障害者にとっては必要な情報だけが書かれているので、検索がとても便利なのです。

しかし、インターネットを使うと、上部の3分の1程度が同じリンクという場合や、コマーシャルという場合もあります。諸官庁のホームページを閲覧しても、広告が掲載されているので、結構大変ですが、スマートフォンや、携帯用に作られているホームページでは、容易に情報へのアクセスがし易いというメリットがあります。まだAndroidで操作したことはありませんが、パソコンでPDFファイルを読むのは大変ですが、iPhoneを使うと簡単に読めるのです。

これは、見える・見えないに関係なく、私がスマートフォンを使う中で、唯一嫌なところは、新幹線内で文字入力をする際、表面に凹凸の無い画面を触って文字入力をするため、aを押すつもりが、隣のsを押してしまい、ミスタッチが多くなるということです。

本日、当社の土屋も一緒に来てお手伝いをさせていただいておりますが、明日も一緒に宇都宮への出張となっています。移動中の新幹線の車内で、「仕事をしよう」ということで、仕事をするわけですが、私より若い彼は、すぐに「疲れた」というのです。何故かというと、「新幹線は揺れるので、目が疲れる」と言うのです。私は目が見えないので、新幹線の中で仕事をしても、目が疲れることはありませんから、目が見えないことも、考えようによってはメリットがあると思います。そのようなことで、私は新幹線の中でもパソコンを開かずに、全てiPhoneでメールなどを確認したり、ちょっとした原稿を書いたりしています。

まず、iPhoneを購入する際に、注意すべき点が数点あります。つい最近直ったのですが、またいつおかしくなるかわかりません。その1つに、メール本文に書いてある数字を中国語や、韓国語のように読み上げていました。例えば、「13時30分、秋葉原駅で待ち合わせ」と書いてあれば、「××時××分、秋葉原駅で待ち合わせ」と読み上げて、肝心な内容がわからず、日本語処理の制度があまりよくないと感じていました。いまは、数字を中国語で読み上げることはなく、正しく読み上げてくれるので、ある程度は使えるのではないかと思います。

2つ目に、Androidのスマートフォンの場合は、驚くほど電池の消費が早いため、1日2回の充電は当たり前なので、使用者の方から「こんなの電話機ではないですよね」というような声がよく聞かれます。また、社内でお客様を踏まえて、1時間程度のミーティングをおこなう際に、お客様から、「すみません。ミーティングの間、スマートフォンに充電しますので、充電器を貸してください」というように、ミーティング中に充電されるお客様がいます。iPhoneは電池の消費量が少なく、ある程度大丈夫なのですが、スマートフォンの場合、駅まで行く間に、先ほど言いましたナビゲーションなどの読み上げ機能を使うと、100%の電池残量が、60%となるため、いかに電池消費量が早いのかということがわかります。Androidの携帯は、出始めといいつつも、数年経過しています。逆にスマートフォンはブームとなって日が浅いため良い商品が出ていませんが、夏辺りに1日1回の充電をおこなえば、iPhone並みの機種が発売されるという報道が、新聞に掲載されていましたので、スマートフォンの購入は、しばらく待ったほうがいいのかなと思います。

iPhoneの場合を例にして、文字入力の操作方法を説明します。私の設定では、画面上にアルファベットのキーボードが、「a s d f g h j k l」と表示されており、指で触れていくと入力できるようになっています。例えば、青という漢字を入力する場合で説明します。「a」を入力したい場合、画面を指で触れながら、「a」と読み上げたところで指を離せば、「a」が入力されます。次に、「o」を入力する場合は、同じように画面に指を触れながら、「o」と読み上げたところで指を離せば、「o」が入力されます。画面には、「青」の漢字が表示されているので、そこをタップすると漢字が入力されます。ようは、慣れれば簡単ということです。

現在、このようなものを視覚障害者が、本当に使えるのかどうか、当社とメーカー2社を合わせた3社で、数名の視覚障害者の方に機械を貸し出して、使えるか否かを実験しています。その講習では、私が講師をしたわけですが、実験開始から約2週間経ち、皆さんiPhoneからメールを送信できるようになるのと併せて、「指がつりそうだ」などという声が上がっています。

iPhoneと同じように、スマートフォンにも、話しかけると教えてくれる機能があります。例えば、「近くの駅を教えて」と言えば、「駅が15件見つかりました。都営地下鉄東京都交通局新宿線 曙橋駅 新宿区」というふうに教えてくれます。また、「曙橋駅は、ここから近いのですか」と言えば、「東京地下鉄株式会社有楽町線 市ヶ谷駅 新宿区」というように、現在地点から近い順番に読み上げてくれます。このように、ある程度のものが検索できるのです。人前ではやりづらいことなのですが、「新宿から、東京までの経路を教えて」と言えば、検索できたと思います。このように便利な機能が使えるわけです。

あと視覚障害者が苦手としているものが、メモを取るということなのですが、そういう場合には、スマートフォンのボイスメモの機能を使って、ICレコーダーのように、自分の声を録音しておけば便利です。また、ICレコーダーでは、「何月何日に録音」ということを読んでくれませんが、スマートフォンで録音すると、日付まで読み上げてくれます。例えば、自分でボイスメモを取って、「メールを送る」というボタンを押すと、そのメモを自分のパソコンに送信することも、容易にできます。実際の実験をしていないので何とも言えませんが、パソコンを使ったことがない人と、スマートフォンを使ったことがない人と、同じレベルの視覚障害を持つ方が一人ずついた場合、どちらの方がメール送信を早くできるようになるのかといえば、おそらくスマートフォンの方だと思います。

いま皆さんは、スマートフォンなどを使うのは、絶対に嫌なのです。1番の理由として、人間は新しい物に対して、自然と拒否から入るからです。「これは嫌だな」という時点で、脳が嫌だという信号を送ったものに、人間は楽しくないから、勉強する気もありませんし、覚えようとする気もありませんので、必然的に自分の中に壁を作り上げてしまうのです。もう1つは、いままで使っていたものが使い易いという気持ちがどこかにありますので、いままで使っていたものを使う傾向となるわけです。普段からそれしかないのであれば、慣れるのは早いのですが、以前から使い慣れたものを知っているため、慣れるまでの時間が必要となるわけです。

私は、iPhoneや、Android、らくらくフォン、を使っていますが、結局パソコンを使うので嫌なのです。しかし、急いでいる時を省いて、「iPhoneで検索しよう」、「Androidでメール送信をしよう」などというふうに、自分に目標を立てて、わざと自分を追い込むようにしています。人間というのは、慣れるまで苦労しますが、慣れてしまえば応用もできるため、比較的に使いこなせると思います。

お店に行って、「音の出るスマートフォンを見せてください」と言っても、容易に見せてくれませんが、当社ではそのような機械を知っていただくためにも、社内には触ることができる機械を置いています。いつ、自分がスマートフォンを使わなければならない環境に陥るのかわかりませんので、「使う・使わない」ではなく、新しい情報を知っておくことが大切だと思います。

私も人間ですから、使い易いとか、使い難いなどと思うことが嫌なので、私は日常的に、プラス思考で物事を考えるように決めています。それから、ものすごく嫌な性格の人と出会ったとしても、その人を避けるのではなく、嫌うのでもなく、自分への修行のためだと思い、常に人間として気を付けるようにしています。そのように心がけると、次々にいろんな人との出会いが生まれて、本当にいいなと実感しています。

話は飛びますが、先週名古屋で講演する前に、店名は言いませんが、駅前の大手牛丼屋さんに入店したところ、「盲導犬はダメですよ」と言われましたので、「本当に盲導犬ですよ、ダメなのですか」と尋ねましたが、入店を拒否されました。以前の私であれば、「それはおかしいでしょう」などと言って怒っていましたが、その時は、「すみません。わかりました」と返答した後、決まり事であれば、堂々と書いてくれるだろうと思い、「申し訳ないのですが、チラシに『盲導犬の入店は、今回お断りしました』と一筆書いてください」と穏やかに言いました。

その後、店員の方が本部に対応を確認された後、「盲導犬は大丈夫です。確認のために、盲導犬の証明書を見せてください」と言われました。盲導犬を持つと、盲導犬の証明書が手帳サイズで交付されるのですが、ホテル横の牛丼屋さんでしたので、あいにく証明書を携帯していなかったのです。私は、これはまずい、こんなところでお姉さんにやり込められるのは嫌だなと思いましたので、盲導犬の首輪に書いてあるナンバーを見せて、「これが証明書です。よく見てください。ナンバーが書いてあるでしょ」と返答したところ、店員は手帳の交付を知らないため、「はい、わかりました」と素直に言われました。内心、騙して悪かったなと思いました。

うまくまとめることができませんでしたが、これにて私のスマートフォンにおける講演を終わらせていただきます。皆様、ご静聴誠に有難うございました。

☆講師プロフィール☆
株式会社ラビット代表取締役。
現在46歳。
9歳で失明し、日本ライトハウスの情報処理科を卒業後、一般企業でのSE、アメディアでのソフト開発などを経て独立。
スマートフォンに関しては今年1月13日のNHKラジオ「聞いて聞かせて」にも出演。
4年前から盲導犬クォーツと更に行動的に全国で活動中。

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【定年まで頑張りました】

「リハビリのお蔭で定年退職できました」

会員 高野 昭男(たかの あきお)

福岡県宗像市の高野昭男です。2年前に定年退職をしました。支えてくださった方々に感謝の気持ちを込め綴っていきたいと思います。

「緑内障の疑いがあります」50歳の健康診断で告げられました。毎年、健康診断を受けていましたがこれが初めてでした。近くの眼科で受診しましたが、「正常眼圧緑内障」でした。それから、目薬と投薬で症状の進行を遅らせる治療が始まりました。しかし、数年後には、パソコンや書類の文字が読めなくなりました。通院先の眼科では投薬治療だけなので、真綿で首を絞められているような苦しみの日々が続きました。平成17年の年末に「仕事ができないので今年度末に退職します」と上司に伝えました。

しかし、今でも不思議な縁と思っていますが、翌年1月偶然に柳川リハビリテーション病院の高橋先生(現在、北九州市立総合療育センター勤務)を知ることができました。初めて受診した時から、「定年まで働きたい」へと私の人生は大きく舵を切り替えることになりました。

ところで、私は政令都市勤務の地方公務員で、主な仕事は水質などの分析やそのデータ報告・維持管理の助言でした。目の症状は中心視野が欠けるもので、試験管の目盛や分析機器のディスプレイが読めなくなりました。ということは分析業務が全く不可能になってしまったことを意味します。当時は、視覚障碍者イコール情報障碍者でもありましたので、相談する手段も見つからず将来の不安はありましたが、退職しなければどうにもならないと思っていました。ところがどうでしょう、この世界に、「拡大読書器」やら「スクリーンリーダー」など多くの便利な道具があるじゃないですか!そして、それらの手段を使って働いている人がいること。これこそ私が知りたかったことだったのです。

まだ辞職願は提出していませんでしたので、高橋先生のアドバイスに従って、急遽大阪市にある日本ライトハウスの生活訓練を半年間受けることにしました。その時、初めて1種2級という身体障碍者手帳を取得しました。日本ライトハウスでは、白杖を使って外出訓練、点字の読み書き、パソコン訓練など復職した場合に役立つ訓練のほか、目が見えないとできないと思っていた調理実習や編み物などにも挑戦しました。ここでの訓練の一番の収穫は「工夫すればどうにかなる」ということでした。復職後の不安はありましたが、本当に楽しく充実した半年だったと思っています。

さて、復職に際して、いろいろと配慮してもらい、配属先を長年勤務した下水道局で水質データの処理を担当することになりました。配属後に最初に視覚障碍者対応に機器の整備をしてもらいました。スクリーンリーダーは"JAWS"のインストール、とA4のスキャナの接続をしました。拡大読書器だけは自己持ち込みでした。

ところで、当初与えられた「水質測定値のデータベース」をマイクロソフトアクセスで構築する仕事は、技能が不足していたため、外部委託となりました。しかし、次に与えられた「入力されたデータをエクセル形式の月報に出力」する仕事は、職員の協力もあって完成にこぎつけました。それから少しずつアクセスやエクセルのマクロ・VBAを勉強し、JAWSも並行して勉強しました。

音声読み上げで仕事をするものだから午後4時ごろには頭がボーっとしたこともありましたね。ところで、仕事の中では様々な会議がありますが、その資料が読めなかったり、メモができなかったりと苦労しました。市販のICレコーダーを買ったりしましたが、使い勝手が悪く役にたちませんでした。現在発売されているポケットサイズのプレクストークなら会議録も作成できたとおもいますが。

その後は、長く勤めた部署でしたので、いろいろな分析結果をデータベース化することに努力しました。自分なりに精いっぱいの務めを果たしたと思います。

在職中、私は、障碍をもつ今の自分、障碍のない自分を常に比較してきました。それによると、10〜20パーセントの評価がいいところです。わかりやすく言えば、今の私が2週間かかった仕事を晴眼の私は1日でできるのが、10パーセント、1週間かかってした仕事を1日で終えるのが20パーセントとなる計算です。要するに、仕事ができていないという自己採点です。

退職して2年が過ぎましたが、この自己採点に疑問が湧いています。「晴眼の自分」に過大な評価を与えていたことです。仕事に対する"集中力"は「障碍のある自分」より大分劣ると思います。また、見えるがゆえに、日々の仕事を淡々とこなしていくだけの人生だったかもしれません。おとぎ話の「ウサギとカメ」にたとえるなら、いつの間にやら、ウサギ(晴眼の私)を、カメ(今の私)が、追い抜いたのではないかと思えるのです。ありえない「晴眼の自分」を過大評価してきた事自体が無意味なことだったのです。懸命に頑張ってきたことは確かなことですから。

次に、職場の人間関係に繋がる、歓送迎会、忘年会、職場旅行等ほとんど参加するように努めました。上司や同僚からのアフターファイブの誘いも同様です。誘われたら「断らないこと」ですね。相手は迷ったうえで誘っているかもしれませんから。ところで、毎年、人事異動で新たに人間関係を築かねばならないのですが、特に私の知らない若い職員相手にコミュニケーションをとることは容易ではありませんでした。私自身は一日中、イヤホーンをつけてパソコンに向かっていましたから、相手も声のかけようもなかったのでしょう。こんな時、アフターファイブのお誘いは、人間関係の交流にはもってこいでした。現在はどこの職場でも以前と比べて仕事は密になっていますので、仕事が終わったあとでしかいい人間関係を築けないのかもしれません。

話は変わりますが、私が定年まで勤めることができたのは、市当局や職場の理解があったことはもちろんですが、もう一つ、藤田さんの存在も大きかったとおもいます。藤田さんは、事故で失明された方で、私と同時期に高橋先生の勧めで大阪市の日本ライトハウスで視覚障碍の生活訓練を受けた同期生です。彼は、復職という目標に向かって、いつも夜遅くまで予習・復習をしていました。また、職場の上司にはメールで訓練内容やパソコンのスキルアップの連絡を欠かさずにしていました。私はほとんどしませんでしたので、もっとメールをして上司や人事関係者の理解を深めるように努めれば良かったと思っています。私は半年後に、彼は一年後にそれぞれ復職することができました。復職してからは、職場が近かったこともあり、しばしば飲食をし、息抜きをさせてもらいました。彼は今、タートルの九州担当理事をしており、様々な相談に乗って頑張っています。身近にこのように頑張っている人がいたから私も定年まで頑張ってこられたと思っています。

本題から逸れますが、先述した日本ライトハウスでのリハビリテーションが今の私の原点ですので書き加えたいと思います。今は、組織名が変わっているようですが、当時は職業訓練部と生活訓練部があり、それぞれ就職に向けた訓練、復職に向けた訓練などをしていました。職業訓練部のことはよく知りませんが、生活訓練を終了した人がいくことが多かったようです。生活訓練部は、視覚障碍者が、社会生活を自立できるように訓練する施設で、私や藤田さんのように復職を目指す者もここで訓練を受けていました。

突如、訓練をすることになり、私には何もかも初めての経験になりました。私は寮生活をしますので、初日から訓練です。指導員に連れられて、近くの銭湯に行き、一緒に風呂に入ります。一人で大丈夫という許可がでるまで同行してくれます。ここの風呂屋は、いわゆるスーパー銭湯らしく、サウナや薬風呂もありました。喜んでいいのか悪いのか、休憩室には、生ビールやおつまみまで販売していました。確か風呂の日(23日)はビールが半額?だったと記憶しています。

訓練センター内は、訓練生同士が衝突しないように右側通行が徹底されています。食堂も右のドアから入って反時計回りで食事トレイを受けとります。食事のテーブルの場所も決まっています。食後はトレイを返却口に返し、別のドアからでていきます。これらは全て視覚障碍者への配慮なのです。そういえば、魚料理が出ましたが、調理のとき骨を全部取り除いていました。魚の骨がのどにささらないための配慮です。一方、納豆が全く食卓にのぼらなかったのは、どんな配慮だったのでしょうね。

さて、訓練の時間割ですが、月曜〜金曜日の午前3時間午後4時間でしたが、半分以上は自習となっていました。訓練プログラムは、歩行、点字、情報、福祉、感覚、墨字、クラブ活動、日常、グループ情報、文章、編み物、ロービジョン、IT講義、特別講義等がありました。午後のプログラムの前の10〜15分間、訓練生と指導員全員で、食堂、廊下、炊事場、洗面所、トイレの掃除をします。視覚障碍者にとって清潔にすることは、一番難しい問題ですよね。この体験は、今は我が家の風呂の掃除で役立っています。

歩行訓練は、3時間連続で訓練をします。電車の乗り降り、乗換、アイマスクをしての訓練がありました。歩行訓練の自習は一人で同じコースを歩くことです。最初は近くの駅まで、次にちょっと遠くへ、最終的には訓練と同じところまで行くことです。天王寺動物園、道頓堀、大阪駅、御堂筋等行った記憶があります。

パソコン訓練は、XPリーダーというスクリーンリーダーを使っていました。情報と文章がパソコン訓練のプログラムでした。「情報」はエクセルやワードなど実践的な訓練で、ショートカットやテクニックを教わりました。「文章」は、指導員が読み上げる新聞の切り抜き記事を録音し、それをワード文章に起こす訓練で、漢字変換ミスのないものに仕上げる必要があります。議事録作成と同じです。ブラインドタッチは基礎の基礎で、相当練習しましたが、今でも遅いですね。

点字訓練は不安がありましたが、適切な指導でどうにか読み書きができるようになりました。今は、点字図書を借りて読むことはありませんが、年2回発行される「ライトハウス通信」を毎晩数ページ読み返すことを続けています。でも、なかなか上達しません。

「感覚」というプログラムは、鈴の入ったもので、ドッジボールやテニス、卓球をします。耳で方向や遠近の感覚訓練をするもので、なまった体をほぐしてくれました。

「クラブ活動」は、息抜きのための楽しいひとときです。習字クラブや茶道クラブ、軽音楽、カラオケなどがありました。私は「社交ダンスクラブ」で技を磨きましたが、今は踊る機会もなく宝の持ち腐れです。

「日常」は、家庭生活で必要な技能訓練をします。調理や果物の皮むき、たこ焼きの実習までしました。このプログラムは訓練生の要望に応えてくれます。

ほかにも、いろいろなプログラムがあったようですが、楽しい訓練でした。食事はおいしくて、ご飯も大盛、そのため半年で5キロも太ってしまいました。

終わりに、ここで出会った若い二人について書きたいと思います。この二人も私に勇気と希望をくれた人たちです。一人は、全盲の女性で、幼いときは、光が見えており、時々懐中電灯の光を見ていたそうです。ところが、ある日その光が見えなくなり、電池切れと考え、家中の懐中電灯で確かめたそうです。と、完全に見えなくなった幼い時の思い出を語ってくれました。盲学校に入り、小さな指で点字を泣きながら覚えたそうです。点字を覚えないと教科書が読めないからだそうです。彼女の人生はほとんど、点字の世界ですが、「文章」のプログラムでは、一字一句間違わないで、満点を取っていました。かな文字や漢字などこの日本に存在するなんて思ってもいなかったそうです。すごい努力だと今も思っています。彼女はその後、職業訓練部を出て、現在は市役所で福祉関係の仕事をしているそうです。

もう一人は男性で、学生時に視覚障碍になったと聞いています。盲導犬でよく一人で出かけていました。彼は職業訓練部を出て、数多くの企業を受けたようですが、すべて視覚障碍者という理由で断られたといいます。彼は故郷に帰って公務員を目指しますが、点字受験ができないことで、またも門前払いとなってしまいました。彼の素晴らしいことは、何年もかかって点字受験を認めさせたことです。しかも、何度もチャレンジして合格しました。

余談になりますが、もう一人、私と同室だった全盲の人のお話です。平気でパチンパチンと爪を切ったり、パソコンで商品を注文したりと晴眼者と同じように生活していました。ある日、私は手すりをもっておそるおそる階段を降りている横を、飛び跳ねるように降りていく人影、挨拶をかわせば、同室の人。あいた口が塞がらなかったのは当然でした。

様々な人との出会いがあり、これから先の勇気や希望を与えてくれた訓練でした。ただ感謝の二文字です。

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【お知らせ】

◆会員・賛助会員の募集

NPO法人タートルは、疾病またはけがなどで視覚障害者となった人が“仕事を続けて行く”ためには、どのようにしていったらいいのかを模索し、支援し合い、そして見えなくても働けることを広く社会に知ってもらうことを目的として活動しています。
人によって“見えない状況”はいろいろですが、見えなくても普通に生活し職業的に自立したいという願いは同じです。一人で悩まず、とにかく気軽にご連絡ください。一緒に考えて、着実に歩んで行ける道を模索しながら頑張りましょう。
また、タートルは、視覚障害者ばかりでなく、当法人の活動をご理解いただける晴眼の方の入会も心から歓迎します。

☆会員募集のページ
http://www.turtle.gr.jp/join.html

◆スタッフとしての協力者及びボランティアの募集

あなたも活動に参加しませんか
当法人では、相談事業、交流会事業、情報提供事業(IT・情報誌)、セミナー開催事業、就労啓発事業等を行っております。このような事業の企画運営にご協力いただき、一緒に活動するスタッフとボランティアを募集しています。事務局、イベントの運営、在宅での編集作業等、いろいろあります。会員としての活動協力は勿論、会の外からボランティアとしての協力も大歓迎です。
また、お知り合いの方で、協力いただける方をご存知でしたら、ご紹介いただければ幸甚です。
詳細は、事務局までお問い合わせ下さい。

◆ 会費納入ならびにご寄付のお願い

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平成24年度も終盤となりました。つきましては今年度会費の納入がまだお済みでない会員の方は、お手数ですが以下の振込口座に納金手続きをお願いいたします。
また、ご案内のとおり、当法人の運営は資金的に逼迫している状況です。皆様方からの温かいご寄付を歓迎いたします。併せてよろしくお願い申し上げます。

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加入者名:特定非営利活動法人タートル
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情報誌「タートル」は、墨字(印刷物)・DAISY(デジタル録音図書CD)・カセットテープ・メール配信の4種類を発行しております。会員の皆様にはその中からご希望の媒体でお届けしています。購読媒体の変更等につきましては、タートル事務局まで電話またはメールでご連絡ください。次号からお届けできるように手配させていただきます。

◆ 今後の予定

2013年度通常総会:6月8日(土)
交流会:9月、11月、2月の3回を予定
タートルサロン(新企画):毎月第3土曜日に実施予定(交流会開催月は講演会終了後)
タートル忘年会: 12月7日(両国)を予定

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【編集後記】

近年、会員の方で、定年を迎えましたという話を、時々耳にするようになりました。この3月末で定年退職された方も、何人かおられたようです。お疲れ様でした。また、4月から、新たに就職された方もおられるようです。どちらも、新たなスタート、ゆっくり歩んで頂きたいと思います。

タートルも、新年度をスタートしました。情報誌「タートル」も、会員の皆様にお役に立つ情報をお届けできるよう、担当として、努めさせて頂きたいと思います。会員皆様の、ご意見、投稿等をお待ちいたしております。

(長岡 保)

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