特定非営利活動法人タートル 情報誌
タートル 第11号

1998年10月9日第三種郵便物認可(毎月3回8の日発行)
2010年5月20日発行 SSKU 増刊通巻第3486号

目次

【巻頭言】

「視覚障害者が働くということの具体的イメージの共有」

理事 藤井 貢 (中国地区代表)

最近「タートルの役割とはどういうものか」ということについて議論する機会がありました。
会の名が示すとおり「中途視覚障害者の就労を支える」という会の目的ははっきりしていますが、視覚障害者がどう働け、どうくらしているかという視覚障害に対する社会の理解がすすんでいない現状を考えると、この会の目的というのは生易しい理解では十分ではないように思います。
就労継続、職場復帰、あるいは就職などその入り口は様々でしょうが、働こうとする私たちの思いと、雇用する側の思いが合致するところにはじめて「働く」ということが成り立つわけですから、その思いあるいは理解をどう合致させるのかというところにタートルの存在意義があるということはおぼろげながら感じているところです。

そのことを書く前に私自身のことを書いてみたいと思います。
思い返しますと、私自身は、障害を持って休職もせず、なんとか20年近く働き続けることができました。実のところ、視野が狭くなり視力も低下を続ける中、書類も読めなくなって、どう仕事を続けるか具体的イメージも持てないでいる時期がありました。「視覚障害になったからといって働けないなんておかしい!」と漠然と考えながらただ通勤を続けるばかりでしたが、本当にうろたえていたのは私よりむしろ周囲だったのではないかとも思います。私をどう扱ってよいかわからなかったのです。

それでも今日までやって来られたのは、それなりの理由と裏づけがあったのだと今になって考えられるようになってきました。もちろん一番大きな要素は自分の決意だったとは思いますが、その決意を支えてくれたのは「仲間」の存在とスクリーンリーダーとの出会いでした。とにかく展望が持てたのです。これは、職場も同じだったのではないかとも感じています。
そんな中、我流でしたがパソコンを覚えながら、職場を観察して自分に出来る仕事を探して、仕事を確保してきました。展望と安心感が私を支えてくれたのです。

また、漠然と「働き続けてやる」という私の想いを理論付けてくれたのは、タートルの皆さんとの出会いでした。働いている人に出会って、私のイメージに確信が持てたのです。

当時、既にパソコンなどの情報機器を活用した職能訓練は存在していましたが、それを学ぶためには「病気休職」という選択肢が考えられましたが、これは実は,危険な選択肢でした。障害に「治癒」はありえません。復帰できるかどうかは相手次第でした。そこで私は休まないで仕事を確保する道を選んだわけです。

今日状況は大きく変わりつつあります。公務員については人事院・総務省、民間では厚労省などの通達があって、少なくとも就労継続については「病休」を活用した職業訓練が制度として認められることになったのです。
当事者側と、雇用者相互に理解が進んでいる証拠ではないでしょうか。
その道をきりひらくためにタートルは大きな役割を果たしてきたと思います。

ところで、話は冒頭に戻ります。
今、障害者には「働く権利がある」と大上段に唱えても、未だ、それだけでは「働く」ということを具体化するのは難しい現状にあります。それでも、状況は大きく改善しつつあります。パソコンなど機器の発達によって私たちにも雇用者側にも選択の幅が広がってきたのです。
ここが大事なのです。

私たちは、中途で障害を持った時点で、希望を失い、自分の可能性を否定しがちです。ですが、現に仕事をし、職域を広げて働いている人が増えてくれば、働こうとする私たちにも雇用しようとする側にも次第に視覚障害者が働くということの具体的イメージが持てるようになってきているのです。
具体的イメージが大切なのです。タートルの役割は、そんな当事者が集まって、互いを支えあいながら、自分のあるいは雇用者の可能性を広げて行こうという趣旨や目的があるのではないかと考えています。

希望を捨ててしまえば可能性はなくなりますが、可能性があれば希望があり、希望は可能性を切り開くという相互補完の関係が、螺旋状に私たちが働くということをあたりまえにしていくのではないかと思います。なんだか抽象的ですが、私を支えてくれたのはそんなふうにして螺旋的にイメージを拡大できた体験だったのではないかと感じています。

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【1月交流会記録】

視覚障害者の社会・福祉制度の有効活用について

東京都視覚障害者生活支援センター 石川 充英 氏

皆さんこんにちは、今ご紹介をいただきました、東京都視覚障害者生活支援センターの石川と申します。今日は、社会制度、主に福祉制度ということで、それを有効に活用するためのポイントを、お話させて頂きます。

タートルの皆様をはじめ視覚に障害のある方の不安は、視力の低下あるいは環境の変化による、仕事を含めた日常のパフォーマンスの低下ではないでしょうか。昨年の夏、私どものセンターでは、就労をしている視覚障害の方15名に、訓練施設で役立った訓練と、就職後にフォローを希望する訓練などについての聞き取り調査を行ないました。その結果、役立った訓練として、最も多く挙がっていたのは歩行訓練、続いて点字の訓練でした。フォローの希望として多かったのは、パソコンの職業的な使い方、それから歩行訓練でした。このことは、視力の低下や環境の変化によって、単独歩行が難しくなった時には歩行訓練を、また、新たな仕事の内容や多様化への対応、新しい仕事の獲得をするためにはパソコンのスキルアップ、パソコン実務レベルのフォローを希望されていると考えられます。

これらの他にも何らかの要因よって、低下したパフォーマンスや生活の質に対して、家庭や職場でのQOLの向上した生活を送るためには、どのような社会制度を利用したらいいかという観点で、今日は4つのカテゴリーに分けて、お話をさせて頂きます。

1つ目が技術を身に付けるための制度、2つ目が用具の給付や貸与の制度、3つ目が所得の保障や年金、公共料金などに関する制度、最後に、行動範囲を拡大するための制度です。既にご存知の方は、知識の整理ということで、お聞き下さい。

4つのカテゴリーの説明をさせていただく前に、社会制度、特に福祉制度を利用するために、押さえておかなければならないのが、「障害者自立支援法」です。それについて最初にお話をします。障害者自立支援法は、2005年に成立して、2006年から順次に実施されています。障害者自立支援法の導入のポイントは大きく3つです。1つ目は福祉サービスの一元化、2つ目は障害者がもっと働ける社会に、3つ目が利用したサービスの量や所得に応じた公平な負担です。1つ目の福祉サービスの一元化については、従来の制度を大きく変えました。今までは、身体障害、知的障害、精神障害という形で、障害別に分かれていましたが、これを共通のサービスとしました。障害者自立支援法では、自立支援給付と、地域生活支援事業という枠組みが導入されました。自立支援給付は更に、3つに大きく分かれます。1つ目が障害福祉サービス、2つ目が自立支援医療、3つ目が補装具です。障害福祉サービスは、更に介護給付と、訓練等給付に分かれています。

もう一方の地域生活支援事業は移動支援、日常生活用具の給付または貸与、その他の日常生活または社会生活支援などがあります。皆様方が聞きなれている言葉と対照させますと、歩行訓練等の生活訓練は、自立支援給付の障害福祉サービスの訓練等給付。ホームヘルプサービスは、自立支援給付の障害福祉サービスの介護給付。歩行訓練などの訪問による指導は、一部を除いて地域生活支援事業に。ガイドヘルプサービスは、地域生活支援事業の移動支援。日常生活用具は地域生活支援事業の日常生活用具の給付または貸与という位置付けです。これらの名前は、後でお話をする費用負担に大きく関わってきます。

従来は施設に入所して、訓練を受けるという表現をしておりましたが、障害者自立支援法では入所という表現ではなく、日中は訓練等給付、夜は居住支援事業である施設入所支援という、2つのサービスを利用するというように変わりました。つまり自立訓練を実施している施設は、日中活動のサービスを行っていることを表しているだけですので、入所での訓練を希望される場合には、施設入所支援を行っていることを確認して下さい。

障害者自立支援法の2つ目のポイントは、障害者がもっと働ける社会にということです。一般就労への移行を目的として、就労移行支援事業と、就労継続支援事業が創設されました。就労移行支援事業は、一般企業などへの就職を希望する人に、一定期間就職に必要な知識及び能力の向上のために、必要な訓練を行うとされています。国立障害者リハビリテーションセンター、函館・塩原・神戸・福岡の各視力障害センターで、従来から行っていましたマッサージなどの三療養成施設は、この障害者自立支援法に基づき、就労移行支援事業として訓練が行われています。

障害者自立支援法の3つ目のポイントは、利用したサービスの量や、所得に応じた公平な負担です。障害者自立支援法では、サービスの利用料に応じて、原則1割を支払う応益負担となりました。この1割負担は、世帯の収入に応じ、1ヶ月の上限負担額が、4つの区分で設定されています。市区町村民税の課税の世帯の方は、上限負担額は37,200円。非課税世帯の方は24,000円、非課税の方で、障害者ご本人の収入が80万以下の方は、15,000円です。生活保護を受給の方は負担なし、と設定されています。これはもともと障害者自立支援法が発足した当時の費用負担の最高額でした。これに対して、2度の軽減措置が加えられ、平成22年1月現在では、32,000円の方は9,300円に、24,000円の方は3,000円に、1,500円の方はそのままで、市区町村民税の所得割額が16万以上の方(年収600万円くらいの方)ですと、この軽減措置は受けられず37,200円のままです。収入に応じて、軽減策により安くなる方と、そのままの方もいるということです。これは実際訓練にかかる費用に対しての負担額です。訓練施設で食事を申し込む場合や入所で訓練を受ける際には、この他に食費や光熱費がかかります。これに対しても軽減措置が講じられるようになりました。

この障害者自立支援法に対して、長妻厚生労働大臣は2013年の8月までに障害者自立支援法を廃止し、仮の名前で「障害者総合福祉法」というのを実施すると明言しております。恐らくこれは以前のような形の応能負担になるのではないかと言われています。

ここまでの障害者自立支援法と、タートルの皆さんが利用するサービスとの関係で見てみますと、次の5つになるかと思います。1番目は自立支援給付の中の訓練等給付、2番目として自立支援給付の中の補装具、3番目は地域生活支援事業の中の移動支援、4番目は地域生活支援事業の中の日常生活用具の給付と貸与、5番目が地域生活支援事業の中の視覚障害者の緊急生活訓練事業になるかと思います。

先程のカテゴリーに戻りまして、1つ目のカテゴリーである、技術を身に付ける制度について、今度は利用される立場の方からお話させて頂きます。技術や知識の習得、あるいは適切な用具の活用や相談出来る仕組みとして視覚障害者のリハビリテーションがあります。そのリハビリテーションの中核をなすのが、生活訓練と職業訓練です。生活訓練は、日常生活で生じる課題に対して保有視覚の活用、補助具の活用、代行技術の習得によって、その課題の解決や軽減を目的としたプログラムです。

生活訓練の大きな柱としては、移動に関する歩行訓練、移動以外の動作に関する日常生活動作訓練、点字やパソコン、デジタル機器の利用に関するコミュニケーション訓練、ルーペや拡大読書器などの保有視覚の有効活用に関するロービジョン訓練です。これらの生活訓練は、障害の程度や年齢、生活環境、生活目標に応じ、個別プログラムを作成し、実施されます。働いている方には、歩行が非常に重要と思います。歩行訓練という名前で行っております。視覚障害生活訓練専門員(通称歩行訓練士)が、視覚障害の方に対して、適切な長さに処方された杖による単独歩行を、可能にするための訓練です。一般的に訓練は、歩行訓練士とマンツーマン形式で行われます。視覚の状況や単独歩行歴、歩行経路の環境把握度などの個人要因、歩行経路の難易度等、環境要因によって、時間数やトレーニングの内容は異なります。また、日常的に使う歩行経路では、条件や時間帯を変えながら、繰り返し訓練を行い、再現性を高めることで、安全性を担保しています。

日常生活動作訓練は、職場や家庭生活を送る上で、お茶を入れるとかコーヒーを入れる、電話をかける、衣類を見分ける、買い物をする、洗濯をするなどの動作に対して、視覚以外の感覚の活用や補助具の活用、今までの習慣的行動の変更などによって、一人で出来るようになるための訓練です。日常生活動作訓練は、多岐にわたることから、必要性や到達目標、経験、生活習慣、視覚障害の状況などを考慮し、プログラムが作成されます。

コミュニケーション訓練は、点字・パソコン・デジタル録音機器などの訓練です。パソコンでは、職業訓練の前の基礎段階で、キー入力から始まり、ワープロやメール、ブラウザなどの使い方などの紹介をしています。パソコン訓練の例として、今私どもの施設に、70過ぎくらいの全盲の女性の方が来られています。短歌・俳句などがとてもお好きな方で、以前は自分でよく投稿していたそうです。しかし、視覚に障害を負ってしまったため、それが出来なくなり、家族や近くの友達に代筆を依頼して、投稿を続けているそうです。誰かに依頼するのは、非常にストレスを感じるので、何とかならないのかというご相談を受けました。そこでExcelのセルを、1つの短冊に見立てて、そこに1つずつ短歌などを書いていただきました。投稿したい短歌にカーソルをあて、コントロールキーを押しながらJを押すとはがきの裏面にその短歌が選択され、印刷できるようなマクロを設定しました。また、宛名の印刷にもマクロを設定し、コントロールキーを押しながらTを押すと、短歌係御中、コントロールキーを押しながらHを押すと俳句係御中と印刷されるように設定しました。その方は、パソコン入力がまだスムーズにいきません。短歌や俳句は、思い立ったときにすぐに入力しないと、忘れてしまうのだそうです。録音機器もうまく操作が出来ないというところが問題になってきました。シールに声を吹き込む音声ペン(タッチメモ)の使い方を工夫し、単語カードにシールを貼り付け、思い立ったときに、単語カードの丸いシールにタッチペンを近づけ、短歌を忘れないうちに録音します。そして後で聞いて、パソコンに入力しています。今では、タッチメモとExcelを使い、一生懸命書いては、選んで投稿されています。生活訓練では、今のような個別のプログラムを組み、かなり細かいところまで本人のニーズを聴きながら、おこなうことがあります。

ロービジョン訓練では、遮光眼鏡やルーペ、拡大読書器などの光学的な補助具の紹介などを行っています。

更に、訓練の他に、面接や相談、情報提供なども行っています。面接や相談では、今後の訓練の進め方や心理面を考慮しながら、地域で生活するための障害福祉サービスの利用の方法や、家族との調整、職場との調整なども行っています。

ここで、生活訓練が受けられるところを紹介いたします。東京近郊では、私が勤務している、新宿の東京都視覚障害者生活支援センター、所沢の国立障害者リハビリテーションセンター、上尾の埼玉県総合リハビリテーションセンター、厚木の七沢ライトホーム、横浜市総合リハビリテーションセンターです。東京都視覚障害者生活支援センターは平成22年4月以降は日中活動、いわゆる通所のみとなりますが、国立リハセンター、埼玉県総合リハセンター、七沢ライトホーム、横浜市総合リハセンターでは、施設入所支援も行っています。大阪近郊では、日本ライトハウス、神戸視力障害センター、神戸アイライト協会が自立訓練を行っています。このうち施設入所支援を行っているのは日本ライトハウス、神戸視力障害センターです。福岡近郊は、自立訓練として行っているのは、福岡視力障害センターです。この福岡視力障害センターは、施設入所支援も行っています。自立訓練として、歩行訓練を行っている施設では、旅費や交通費の関係で回数の制限はあるものの、自宅周辺や通勤経路の訓練も行っています。

パフォーマンスが低下したとき、視力が低下してしまって、全体的にいろいろなことがやり辛くなったときには、今お話ししたような自立訓練の施設で、生活訓練を受けることをお勧めします。一方、歩行訓練だけを受けたいという場合には、訪問指導がお勧めです。東京近郊での訪問は東京都全域、埼玉県全域、神奈川県ですと横浜市や藤沢市、茅ヶ崎市などで行っています。また東京では、武蔵野市、荒川区、国分寺市に視覚障害の生活支援員がおりますので、自治体でも受けることが出来ます。大阪近郊での訪問で歩行訓練を行っているのは、大阪市、堺市、大阪府、京都府、神戸市、宝塚市などです。福岡近郊では福岡市と北九州市です。

自立訓練として行っている所は、先程の障害者自立支援法に基づいて最高額ですと、月額37,200円、9,300円、1,500円といった上限負担額を支払うことになります。地域生活支援事業として、市区町村が行っている訪問での歩行訓練も、自治体ごとに利用料金が異なります。自治体によっては無料で受けられる所もあります。

また、拡大読書器やルーペ、眼鏡などの相談や処方などの紹介を希望される場合は、ロービジョンケアと言うサービスを利用するとよいと思います。東京近郊では、国立障害者リハビリテーションセンターの第三機能回復訓練部、杏林大学病院のアイセンター、NPO法人東京ライトハウスの相談会など。大阪では近畿ビジョンサポート(KVS)。福岡では北九州市立総合療育センターの眼科などでロービジョンケアを行っています。

今お話しした以外でも各地の大学病院の眼科などでロービジョンケアが行われていますので、それを利用されるのもよいと思います。

生活訓練のほかに技術を身に付ける場として、仕事の技術といったものがあると思います。今会場となっている日本盲人職能開発センターは、職業能力開発促進法に基づいた職業訓練校としての委託を受けて、OA実務を行っております。大阪の日本ライトハウスの職業訓練部も同様です。障害者自立支援法では、新たに就労移行支援と就労継続支援というのが創設されました。先程もお話ししたように、マッサージ師の三療養成施設は就労移行支援になりますが、このほかに今後はパソコンを利用した職業訓練を、就労移行支援や就労継続支援のサービスとして実施する施設や事業所も増えてくると思われます。ちなみに私が所属している生活支援センターでは、今年の4月から就労移行支援事業を行うことになり、パソコンを利用した一般事務職に就職を希望する人に、サービスを提供します。また、ここ日本盲人職能開発センターでは訓練等給付のサービスとして、金曜日の夜にVBAのコースを設置しています。就労移行とか就労継続というと、すでに働いている方は利用出来ないような印象をお持ちになるかと思いますが、自治体がこれらのサービス利用を認めてくれればサービスの利用は可能です。ただし、これらのサービスを利用する際にも、先程お話した1割負担と所得に応じた上限額が適用されます。職業訓練としてパソコンの訓練を受ける場合でも、職業能力開発促進法に基づいた職業訓練校で受けるときには、訓練給付金が支給され、障害者自立支援法に基づく就労移行支援で受ける場合は、利用料を払わなければなりません。同じようなことを学ぶ場合でも、法律の違いで負担するのと受け取れるのと違いがあるので、頭の隅に入れておいてください。

障害者自立支援法で、障害福祉サービスを受けられますが、身体障害者手帳のほかに、障害福祉サービスの受給者証というのが必要です。受給者証の交付を受けるには、まず市区町村に申請をし、いくつかの聞き取り調査の結果により受給者証の発行となります。その受給者証の発行を受けて、サービスを提供する事業所や施設と、契約を結んで利用開始となります。障害者手帳を持っているだけではサービスが受けられないので、注意が必要です。

2つ目のカテゴリーは、用具の給付や貸与の制度についてです。今お話ししたように技術を学ぶだけでなく、用具を活用することも大切だと思います。身体障害者福祉法や障害者自立支援法では、補装具と日常生活用具と2つの枠組みで助成金が出るようになっています。

視覚障害の方の補装具としては、盲人安全杖(白杖)、義眼、眼鏡の3つが規定されています。これらは自治体が助成する上限額が基準額という名称で決められており、基準額の1割、および基準額を超えた分の金額は自己負担となります。つぎに日常生活用具として、盲人用時計、視覚障害者用ポータブルレコーダー、拡大読書器、情報・通信支援用具などが指定されています。先程の補装具は国で品目や基準額が定められていますが、日常生活用具は品目、基準額とも各自治体で定めていいとされているので、市区町村で、差が生じてきます。同じ日常生活用具でも、Aという市では基準額が100,000円に対して、Bという区では50,000円ということも有り得るということです。補装具・日常生活用具とも障害者自立支援法の中に位置付けられているので、給付や交付を受けた場合は、原則1割の負担が必要となります。補装具や日常生活支援用具の給付や交付を受けるときは、先に購入して領収書を自治体の窓口に持参しても受け付けてくれません。必ず先に自治体に申請をして、見積書を作ります。眼鏡や義眼に関しては、眼科の指定医の意見書の作成が必要となります。申請書に記入して見積書と意見書と共に提出すると自治体から助成金の支給決定の通知が来て、見積もりを取った業者にお金を払うことによって、品物を受け取るということになります。ちょっとした情報ですが、日常生活用具は多岐にわたりますので、まとめて申請するとお得だと思います。例えば、その方の1ヶ月の上限基準額が9,300円としますと、この時点で拡大読書器1つを申請しただけで19,800円ですから上限額を超えていますので、他の日常生活用具を同時に申請しても、9,300円以上支払う必要がないということになります。日常生活用具に関しては幾つかの物をまとめて、1度に申請される方がお得になると思います。ただし高額所得者の方、市区町村民税を46万円以上お支払いの方に関しては、これらの制度は適用されませんので、全て自己負担になります。また給付や交付を受けた品目には、耐用年数が決められているので、その年数内にもう1度申請することは、認められません。

カテゴリーの3つ目は、所得の補償や公共料金などに関する制度についてです。年金の受給について、質問を受けることがあります。平成14年に国民年金と厚生年金保険の障害認定基準が改正されました。この改正によって両眼の視野が5度以内の者が、2級に追加されました。

ホームページ上で調べてみますと、認定基準という表が出てくるのですが、障害の程度と状態という表の中には、1級は両眼の矯正視力の和が0.04以下の者、2級に関しては、両眼の矯正視力の和が0.05以上0.08以下の者、または、身体の機能の障害が著しい制限を受けるか、または、日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度の者というふうにしか書かれていなく、視野5度というのはどこにも明記されていません。この視野5度というのがどこに書いてあるかといいますと、その表とは別に認定要領という文書の中に記載されています。そこには、日常生活が著しい制限を受けるか、または、日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度の者が、両眼の視野が5度以内というふうになっています。眼科医がまれに認定基準の表だけを見てしまいますと、視野5度というのが明記されていないので、「あなたの目の状態では年金には該当しません」ということになってしまいます。以前には、眼科医を変えてみたところ、「十分に出ますよ」ということで年金の支給が開始された例もあります。また年金に関しては、網膜色素変性症のように先天素因の方の場合ですと、書類の記述によって厚生障害年金として受け取れなかったという例も聞いております。この方は、いわゆる初診日が厚生年金の期間中であったのですが、本人が眼科医に小さいときから網膜色素変性症で視力が悪かった、というふうに話をしてしまことをうけ、眼科医が先天素因と書いてしまったため、障害基礎年金の支給に留まってしまったという例もあります。

また最近の例ですが、傷病手当金を受給している人が、年金の申請をしまして、受給が決定しました。年金は申請日までさかのぼって支給がはじまりましたが、この間に既に受けとっていた傷病手当金の返金を求められました。同一障害を事由とする場合、障害年金と傷病手当金を重複して受けとることはできないということに関しての説明不足、または認識不足があったのではないかと推測されます。

年金に関しては、今受給している年金の他に、新たに受給出来る年金が生じた際には、その時点で比較をして、高い方の年金を選択することが出来るようになっています。

その他公共料金などに関しては、所得税、地方税の控除が受けられます。NTTの電話番号の無料案内、携帯電話の基本料金が割引になります。その他にも、マル優制度といって、障害者の方の、少額貯金の利子所得の非課税です。通常は、利子に対してお金を支払う際に、利子に対して20%ほどの源泉徴収が行われるそうですが、350万円までで障害者手帳をお持ちの方は、この分が非課税になります。

最後のカテゴリーとして、行動範囲を広げる移動支援事業があります。聞き慣れた言葉で言いますと、ガイドヘルプサービスがあります。このガイドヘルプサービスも、地域生活支援事業で、自治体が細かい部分を定めていいということになっています。従って、隣の区では通所で訓練を受ける際には利用出来るが、自分が住んでいる区では、そういったものは全く出来ないといったこともありますし、利用料金に関しても、全く無料の自治体もあるし、厳密に障害者自立支援法の上限負担額を求める自治体もあります。
これは自治体で決めていいという制度ですので、費用に関しては、各自治体に確認してください。

この他、移動範囲を広げる制度としては、鉄道やバス、航空の運賃割引、タクシー料金の割引、駐車禁止除外指定(視覚障害の手帳等級、1級から3級までの方と、4級の視力障害の方に対して所定の手続で、駐車禁止除外指定の認定が受けられる)などがあります。

最後に、事例を3つほどお話しして、終わりにさせて頂きたいと思います。1番目は、脳内出血によって視覚障害となり、休職期間で生活訓練を受けていた50歳代の男性の方の例です。脳の障害のため記憶することが苦手で、体力の低下もあり、訓練が進まない状況でした。職場と復職に向けての相談については、本人からもう少し状態が改善したらというお話があり、具体的な話し合いもしないまま、休職期間の延長を繰り返して、なかなか復職の目途がたちませんでした。

2番目は、入社時と異なる職種での復職を要望した方の例です。形としてはその要望が通って、生活訓練と職業訓練を受けることが出来るようになりましたが、少し無理強いをしたという表現が適切なのか、訓練を終了し、職場復帰したが、具体的な仕事をさせてもらえない状態が続いています。

3番目は、新しく採用された30歳代の女性の方の例です。視覚障害を初めて受け入れた会社で、障害のことや本人が出来ることを理解してもらうことが出来ずに居ました。会社の同僚は、腫れ物に触るような感じで、とりあえず来てくれればいいかな、という感じで扱われたので、ストレスを感じるようになり、職場の人間関係に疲れ、出社するのが嫌になり、医者からはしばらく休養が必要だと言われました。

昨年の12月、幕張で「障害者職業リハビリテーション研究発表大会」というのが行われ、その中の1つの発表で、精神保健福祉士の方が、就労において重要なスキルは、3つあると言っておりました。1番目は、ワークスキル、2番目としてソーシャルスキル、3番目としてメンタルスキルです。1番目のワークスキルというのは、業務遂行のための能力です。具体的には、体力、意欲、技術。言い換えると、モチベーションと言えるかと思います。2番目のソーシャルスキルは、対人関係を築くために必要な能力です。具体的には、協調力、適応力、対話力。言い換えると、コミュニケーション能力と言えると思います。3番目のメンタルスキルは、心の安定を保つために必要な能力、具体的には、ストレスに耐える力でストレス耐性、自尊心、そして成熟、言い換えると、セルフコントロールあるいは自分自身での感情操作と言えると思います。

事例の1番目の方はワークスキル、2番目の方はソーシャルスキル、3番目の方はメンタルスキルがそれぞれ不足、または欠如してしまったのではないかと思われます。

これらの3つのスキルは、バランスが保たれていることが大切だと言われています。1つのスキルが低下すると、それによって他のスキルの低下につながり、負のスパイラルに陥っていきます。例えば、風邪で数日間休むとワークスキルが欠如します。そうすると何となく次に出社したときに後ろめたい、会話がうまくいかない、そうするとソーシャルスキルが低下します。仲間の方とうまくいかないと、今度は心の面で、メンタルスキルが低下してくるという形です。更に、メンタルスキルが低下すると労働意欲が湧かなくなるので、またワークスキルが低下して、負のスパイラルに陥っていく。反対にどこか1つを無理すると、逆に他のところにも影響して、この負のスパイラルに陥ってしまうということにもなります。このような状況にならないためにも、適切な社会制度、特に福祉制度を上手に利用することが大切と思います。特に生活の質、あるいは、職場生活でのパフォーマンスの低下ということは、今お話をした3つのスキルのどこかに影響が出てきます。それを放置せずに、なるべく早い段階で、専門機関でアドバイスを受けていただき、これらの3つのスキルが相対的に低下する前に、手を打つことが重要と考えます。

つたないお話でしたが、時間になりましたので終わりにさせて頂きます。ご清聴有難うございました。

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平成22年度NPO法人タートル通常総会(開催のお知らせ)

NPO法人タートルは、平成22年度通常総会を6月19日(土)、日本盲人職能開発センター(東京・四ツ谷)にて開催します。
平成19年12月3日に登記後、NPO法人として2年少々活動してきましたが、今年度は役員の改選期に当たっており、人事の刷新を図る予定です。会員の皆様方の積極的な出席をお待ちします。
なお、総会の成立は、会員総数の過半数が要件になっていますので、別掲議案を参照のうえ、返信葉書の該当する番号に○印をつけて必ず6月10日(木)までに投函くださるようお願い致します。今回からメールでの提出も可能となりました。また、通信欄にご自由にコメントなどいただけましたら幸いです。

理事長 下堂薗 保

日時:平成22年6月19日(土) 午前10時〜午後5時
(受付10:00〜)
場所:(社福)日本盲人職能開発センター(地下研修室)
   〒160-0003 東京都新宿区本塩町10-3
   「四ツ谷駅」下車(7分)JR中央線、東京メトロ南北線・丸の内線

◆プログラム

〈午前の部〉10:30〜12:00
◎NPO法人タートル通常総会
(議題)
第1号議案 平成21年度事業報告(案)
第2号議案 平成21年度収支決算報告(案)
第3号議案 監査報告
第4号議案 平成22年度事業計画(案)
第5号議案 平成22年度予算(案)
第6号議案 平成22年度役員改選(案)

〈午後の部〉13:30〜17:00
◎記念講演
演題:「視覚障害者の就業拡大につなげるための新しい情報技術教育」
   ―筑波技術大学の情報技術教育の工夫や試みー
講師:小野 束(おの つかさ)氏 「筑波技術大学 副学長」
専門 「情報システム」、「情報バリアフリー」、「情報セキュリティ」
〈講師略歴〉
1975年:北海道大学大学院博士課程電子工学専攻修了、工学博士
山形大学医学部生理学教室、興和株式会社IT本部長等を歴任
ロボット、医療機器などの研究開発と企業化に従事
視覚障害を持った人との出会いが方向転換のきっかけ
2001年:筑波技術短大視覚部情報処理学科
2005年:筑波技術大学保健科学部情報システム学科教授、学科長、学部長等歴任
2009年:同副学長兼研究科長

◎交流
参加者近況報告・意見交換会

※参加費(午後の部) 会員及び介助者は無料 非会員は500円

出欠の連絡及び表決権の行使について(お願い)

●はがきによる表決権委任状

今回の総会から書面等(メール)による表決権の委任ができるようになりました。以下の書式は、はがきによる従来通りの表決権委任状の内容です。
別途郵送のはがきに必要事項を記載し、切り離して返信願います。

往信はがき(裏面)

「平成22年NPO法人タートル通常総会」
出欠の連絡及び表決権の行使について(お願い)

NPO法人タートルは、平成22年度通常総会を6月19日(土)、日本盲人職能開発センター(東京・四ツ谷)にて開催します。
平成19年12月3日に登記後、NPO法人として2年少々活動してきましたが、今年度は役員の改選期に当たっており、人事の刷新を図る予定です。会員の皆様方の積極的な出席をお待ちします。
なお、総会の成立は、会員総数の過半数が要件になっていますので、別掲議案を参照のうえ、返信葉書の該当する番号に○印をつけて必ず6月10日(木)までに投函くださるようお願いします。また、通信欄にご自由にコメントなどいただけましたら幸いです。

NPO法人タートル
理事長 下堂薗 保

返信はがき(表面)

〒160-0003 東京都新宿区本塩町10-3 日本盲人職能開発センター東京ワークショップ内
NPO法人タートル 事務局 行

返信はがき(裏面)

「平成22年度NPO法人タートル通常総会」
出欠の連絡及び表決権の行使について

差出人(正会員)氏名(     )

(該当の番号に丸印を付けてください。)
1.総会に出席します。
2.総会に欠席します。
欠席の場合、次のとおり議案につき表決を委任します。
@すべての議案について理事長に表決を委任します。
A他の正会員(    )を代理人として表決を委任します。

通信欄(ご意見等自由にご記入ください。今後、正会員でなく、賛助会員として協力したい場合は、その旨ご記入ください。)

●電子メールによる表決権委任状

今回の総会から書面等(メール)による表決権の委任ができるようになりました。以下の書式は、電子メールによる表決権委任状の内容です。
なお、あなた様は情報誌がメール配信希望となっていますので、はがきによる委任状は郵送されないことをご了知願います。
返信は、事務局(j#imukyoku@turtle.gr.jp)宛て願います。
(SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)

返信内容

「平成22年度NPO法人タートル通常総会」出欠の連絡及び表決権の行使について

差出人(正会員)氏名(     )
(該当の番号に丸印を付けてください。)
1.総会に出席します。
2.総会に欠席します。
欠席の場合、次のとおり議案につき表決を委任します。
@すべての議案について理事長に表決を委任します。
A他の正会員(    )を代理人として表決を委任します。

通信欄(ご意見等自由にご記入ください。今後、正会員でなく、賛助会員として協力したい場合は、その旨ご記入ください。)

◆大阪会場(スカイプ参加)のご案内◆

日時:平成22年6月19日(土) 午前10時〜午後5時(受付10:00〜)
場所:(社福)日本ライトハウス情報文化センター 4階 会議室3
  〒550-0002 大阪市西区江戸堀1-13-2
TEL 06-6441-0015(代表)
大阪市営地下鉄四つ橋線 肥後橋駅北改札から2番出口を出てすぐ左
定員:24名
※ご注意 当日、大阪会場では議決権の行使はできませんので、正会員の方は予め委任状の提出をお願いします。
なお、非会員であっても午前の部(総会)の参加は歓迎します。
※Skypeの通信状況により、聞き取りにくい場合があることを予めご了承ください。

〈申込方法〉

下記メールアドレスまでお申し込み下さい。
件名に「タートル大阪会場参加(お名前)」
本文に、参加される方のお名前、会員・非会員の別をご記入ください。
なお、会場の準備の都合上、6月16日(水)までにお申し込みください。

タートル大阪会場連絡用メールアドレス(問い合わせ先)
e-mail : o#saka@turtle.gr.jp
(SPAM対策のため2文字目に # を入れて記載しています。お手数ですが、上記アドレスから # を除いてご送信ください。)

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【総会資料】

平成21年度事業報告(案)

T 相談事業

日頃の相談活動を通じて、視覚障害となり誰もが最初にかかる眼科医療におけるロービジョンケアの重要性を痛感するに至り、平成21年度においては試行的に就労相談の中に眼科医の協力を得て必要に応じて原則月1回を目途にロービジョンケアを導入し、就労相談・支援におけるロービジョンケアの効果を確認した。その結果、当事者だけではできない相談支援ができ、相談の質の変化、相談の幅の広がりが認められ、相談の充実・強化に繋がった。中でも、ロービジョンケアのできる眼科医の下に、障害当事者とともに産業医が同席した相談では、その場で現場復帰の可能性についての情報交換がされ、現場復帰の実現に大きく寄与した。

中途視覚障害者の就労継続のためには、在職中から支援を行うことが必要であり、関係機関との的確な連携が重要である。そのような考えの下に、日本ロービジョン学会主催「第1回就労支援推進医療機関会議」に参加・協力し、就労支援に関心のある眼科医療関係者、職業リハビリテーション関係者が集い、連携のあり方について交流・意見交換を行い、お互いの理解を深めることができた。(タートル情報誌第10号参照)。また、関係諸機関との連携を強化するため、日本ロービジョン学会の学術総会や独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の職業リハビリテーション研究発表会などの場を活用し、中途視覚障害者の雇用継続支援に効果的な連携・支援のあり方などについてアピールした。

平成21年度における具体的な相談状況は次の通りである。

(1) 相談件数
相談総数(実人員)で108名、うち、個別面談52名(ロービジョン相談22名、福岡交流会4名を含む)であった。
(2) 相談の経路は様々であるが、タートルのホームページを見て電話やメールによるものが多い。次いで、眼科医や、福祉施設、障害者団体などからの紹介によるもの、ハローワークなどからの紹介によるものとなっている。新聞記事を見てというものもあった。
(3) 相談内容の多くは、本人や家族からの相談で、視覚障害が進んだ場合、どうすればいいかというものが多い。また、企業人事担当者や産業医が視覚障害となった従業員を心配しての相談もあった。
(4) 結果としては、悩みをよく聴き、相手のニーズを勘案しながら必要な事例を紹介し、平成20年度障害者保険福祉推進事業(障害者自立支援調査研究プロジェクト)報告書「視覚障害者の就労の基盤となる事務処理技術及び医療・福祉・就労機関の連携による相談支援の在り方に関する研究報告」(タートルホームページ掲載済み)などの資料・情報を提供するとともに、必要に応じてロービジョンケアに繋ぎ、実際にケアを受けてもらった。中には、個別ケースの内容に応じてプロジェクトチームによるチーム支援を行った。このようにして、初期相談の目的は達成したといえる。
(5) 相談を始めた当初に比べると、在職中の比較的早期の相談が多くなり、休職や病気休暇を経ての職場復帰や、いったん退職後の再就職の相談は少なくなり、その結果、休職せず、あるいは、退職に追い込まれることなく働き続けられるケースが多くなっている。
(6) 相談に関連し、「視覚障害者に対する的確な雇用支援の実施について」(平成19年4月17日、厚生労働省通知)および「障害を有する職員が受けるリハビリテーションについて」(平成19年1月29日、人事院通知)が有効に活用され、労働関係機関や眼科医、産業医などとの連携が図られた事例も少しずつ増えてきており、社会資源の活用という点では「障害の態様に応じた多様な委託訓練」の「在職者委託訓練」が効果的に活用されるなど、好事例の蓄積もできた。

U 情報提供事業

1. 「情報誌タートル」の発行 5回
500部4回 300部1回 合計2300部作成
第6号(2009年03月10日発行)
第7号(2009年05月12日発行)
第8号(2009年08月17日発行)
第9号(2009年12月19日発行)
第10号(2010年02月24日発行)
2. Webの管理
お知らせ・「情報誌タートル」の掲載
平成20年度障害者保健福祉推進事業の「視覚障害者の就労の基盤となる事務処理技術及び医療・福祉・就労機関の連携による相談支援の在り方に関する研究報告書」のWeb掲載
3. MLの管理
4. Skypeを使った関西・九州とのジョイント交流会の実施
地方会員の利便性をはかるため、Skypeを利用して、東京会場、大阪会場、福岡会場を結んで、講演の同時聴取ができるように実験的に実施した。

V 交流会事業

◆ 年間コンセプト
「視覚障害者の復職、再就職、就労継続についてともに考え、障害者として生き抜くヒントを出し合う」

1. 交流会
日時 2009年9月19日(土)
参加者総数90名
テーマ「仕事の事例紹介、社内で役立つ仕事と視覚障害でも出来ること」
講師 堀 康次郎(ほり こうじろう)氏 大阪ガス株式会社 導管事業部 大阪導管部
→グループ・ディスカッション
※新しい試みでインターネット通信ソフトのSkype(スカイプ)を使用して、東京会場と大阪会場を結んで同時進行で開催。

2. 地方交流会 in Fukuoka
日時:2009年10月11日(日)12:30〜16:30
会場:福岡市立心身障がい福祉センター(あいあいセンター)
参加者総数77名
〈目的〉
中途視覚障害となり、一度は就労が困難となったものの、ロービジョンケアと出会ったことで生活訓練や職業訓練などを受け、職場復帰を果たして就労を継続している仲間は福岡を中心に九州には少なくありません。しかし、日頃なかなかお互いに交流する機会がないため、各地に孤立して奮闘しているというのが実情です。
職場復帰をした後、どのような問題があり、それを克服するためにどのような工夫や努力をしているのだろうか。このような仲間たちが、一堂に集い、経験交流をする場が求められています。併せて、人生の半ばで視覚障害となって間がなく、必要な情報を求めている仲間にとっても、交流することにより、将来に希望を見いだし、一歩を踏み出すきっかけとなる場が求められています。
〈特別講演〉
「タートルからのメッセージ」
講師 下堂薗 保(しもどうぞの たもつ)
〈基調講演〉
「視覚障害者の就労とロービジョンケア」
講師 高橋 広(たかはし ひろし)氏 北九州市立総合療育センター眼科部長、日本ロービジョン学会理事

3. 交流会
日時 2010年1月16日(土)
参加者総数 87名
テーマ 「視覚障害者の訓練支援等について」
「社会制度、主に福祉制度」を紹介、そして有効活用するためのポイントは?
講師 石川 充英(いしかわ みつひで)氏 東京都視覚障害者生活支援センター 主任生活支援員
→グループ・ディスカッション
※新しい試みでインターネット通信ソフトのSkype(スカイプ)を使用して、東京会場、大阪会場、福岡会場で同時進行で開催。

4.交流会
日時 2010年3月20日(土)13時30分〜18時00分 (従来よりも30分早めて開催)
参加者総数 67名
「職場環境を考える」
講師:小川 敦史(おがわ あつし)氏 NSWウィズ株式会社 取締役ビジネスサポート部長
講師:前田 有香(まえだ ゆか)氏 NSWウィズ株式会社 ビジネスサポート部 所属
→グループ・ディスカッション
※インターネット通信ソフトのSkype(スカイプ)を使用して、東京会場、大阪会場、福岡会場で同時進行開催。

5.交流会マニュアル作成

W 就労啓発事業

平成20年度に実施したアンケート調査に基づき、民間企業・団体の人事担当者向けに就労啓発用DVDを200枚作成。
11月に開催されたセミナーで上映。来場者の評価は良かった。

X セミナー開催事業

1.ビデオの作成
就労啓発事業と協力してビデオを作成。

2.第2回視覚障害者雇用継続支援セミナーの開催
期日 平成21年11月18日
会場 中野サンプラザ
テーマ 「安全な通勤と仕事の内容・企業の不安を解消する」
参加者 90名
企業の人事担当、ハローワークなどの就労支援機関、医療機関、それに当事者と、各方面からの参加があった。
制作した啓発ビデオの上映、当事者からの体験発表、歩行・生活訓練と、職業訓練について専門家の先生の講演。さらにスクリーンリーダと拡大読書器の展示会など、盛りだくさんの内容で企画実施した。
体験発表や講演はきわめて実践的な内容であり、ビデオの初上映も、みなさんの好評を得ることができた。
そして、これら全体を通してかなり突っ込んだ、就労支援についての問題点を共有することができたと思う。
このようなセミナーは、今後につながる重要な活動だと確信した。
課題として、準備に着手するのが遅れ、積極的な呼びかけにおいて力が出し切れなかった点で、改善が不可欠である。

3.体験型の「雇用理解セミナー」
もうひとつのテーマであった「雇用理解セミナー」については、構想を練る段階から踏み出すことができなかった。

Y 経営担当

2009年度における経営担当の活動実績は次の通りである。
経営委員会を立ち上げ、経営活動の基礎を作成。
スタッフを対象に経営基礎研修を企画し、経営の基礎を学ぶ。
NPOタートルの理念、目標を明確にし、今後の活動の基礎を構築。

Z コンプライアンス担当

個人情報保護に対する基本原則を作成した。

1 基本方針
NPO法人タートルは、当法人が保有する個人情報の重要性を認識し、その適正な保護のために、個人情報の取り扱いに関する法令、国が定める指針、その他の規範を遵守します。

2 個人情報の適切な取得及び管理
当法人は、個人情報の取得に際しては、利用目的を明示し、かつ本人の同意を得た上で、その許諾の範囲内で利用します。

3 個人情報の利用及び開示
当法人は、個人情報の利用及び第三者提供に際しては、本人の同意を得ることとします。
ただし、次の場合はこの限りではありません。
@ 法令に基づく場合。
A 人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。

4 個人情報の委託の実施
当法人が個人情報の取り扱いの全部または一部を委託した第三者機関に対しては、委託先への適切な監督を行います。

5 個人情報の安全性確保の措置
当法人は、個人情報保護の取り組みが適切に実施されるよう、必要に応じて見直しを行い、継続的な改善に努めます。

6 個人情報の開示、訂正、削除等への対応
当法人は、本人から自己の個人情報について、開示、訂正、削除等の申し出があった場合には、速やかにコンプライアンス担当役員が対応します。

7 問い合わせ及び苦情への対応
当法人は、個人情報に関する問い合わせ及び苦情に対し、コンプライアンス担当役員が適切かつ迅速な処理に努めます。

以上

平成21年度 特定非営利活動に係る事業会計収支計算書

(表を省略しました。)

平成22年度事業計画(案)

T 相談事業

相談事業はタートルが任意団体として発足した当初から受け継いできた最も基本的で地道な活動であり、中でも初期相談がその中核として重要な位置を占めている。平成22年度においても基本的には現行の相談スタイルを継続することとしながら、相談の充実・発展のために、引き続きロービジョンケアとの連携を強化し、労働・福祉関係機関等との連携がより進展していくよう努めていく。

相談を実りあるものとするために、フォローアップのあり方や、遠隔地の相談・支援のあり方を検討する必要があり、そのために相談体制の人的強化を図ることとする。

中途視覚障害者の雇用継続を実現していくためには、タートルの存在と役割を積極的に関係者にアピールし、連携のための理解と協力の輪を広げていくことが重要であり、そのためにも、日本ロービジョン学会や職業リハビリテーション研究発表会などの場を活用し、タートルの取り組みをアピールするよう努力していきたい。

以上のことを基本に据えながら、平成22年度においては次のことを具体的に推進する。

(1) 相談体制の人的強化を図る。
(2) 初期相談を重視しながら多様な相談に迅速に対応する。必要に応じロービジョン相談(原則月1回)に繋ぎ、より質の高い相談に取り組む。また、それらのフォローアップにも努める。
(3) 地方における相談について、地区担当理事との連携を密にし、中央の相談のノウハウを共有できるようにしていく。
(4)日本ロービジョン学会などとの行事に参加・協力し、タートルの活動をアピールするとともに、第2回就労支援推進医療機関会議に協力する。

U 情報提供事業

1.「情報誌タートル」の発行
5月・9月・12月・3月の4回
内容として、総会・交流会記録に加え、会員が職場で頑張っている様子が伝わるような記事、また、定年を迎えた方に就労継続を成し遂げた苦労話などを執筆していただく。
会員のコミュニケーションツールとして、地域情報や多彩な情報を提供していきたい。
経費を縮小する対策として、交流会記録は基本的には録音からのテープ起こしをやめて、発表者に原稿を執筆していただくようにしたい。
発送費等の節約の目的を周知して、メール講読を促進する。
広告掲載、助成金等、事業費の確保を検討する。

2. Webの管理
お知らせ・「情報誌タートル」の掲載
Webに「テキスト広告」を付加。(副収入)

3. MLの管理

4. Skypeを利用した交流会の改善
各会場で、明瞭な音声で聞こえるように機器の見直し等を行う。
切断等のトラブルが発生した場合の、対処方法のルール化。

V 交流会事業

◆ 年間コンセプト
『視覚障害者が働くこと』についてのヒントを出し合う。

◆ 連続交流会の全国同時開催に向けて
・孤立している会員の「1人じゃない!」のフォロー。
・タートルの知名度アップ。
・2ヵ年計画でも少しずつ。
・初回参加者の再参加率が低すぎるのでは。
・雇用側や公的機関の参加者を増やし、タートルの活動をアピールしたい。
・固定会員を増やし、タートル運営の経費面でのサポートをしたい。
・今困っている人の精神的な支えになりたい。
・講演主体ではなく、参加者同志がもっと話せる会にしたい。
・必要な情報交換の場。
・常連さんも、日々のストレスを、ちょっと発散できる場。

1. 交流会 年間4回
仙台、東京、大阪、福岡の4会場をスカイプで結んで同時開催する。
地域交流会は全国のスタッフに呼びかけて検討する。
1回の交流会参加者数を仙台、東京、大阪、福岡4会場で合わせて150名に増やす。

2. 交流会マニュアルを活用する。

W 就労啓発事業

1.民間企業、団体などを選択して、効果のある就労啓発を行う。
2.セミナー事業と協力して第2弾の就労啓発用ビデオを企画・作製を検討する。そのための助成金を検討する。
3.経団連・連合、ハローワーク、ロービジョン学界などの団体にDVDなど紹介し、タートルへの支援協力を依頼する。

X セミナー開催事業

今年度のセミナー開催事業については、二つの課題を設定する。

@体験型の「視覚障害者雇用理解セミナー」
・本格実施にむけて、今年度前半は、これまで関係のある団体に対して、実験的なセミナー開催を働き掛ける。連合や、経営者協会などに働きかける。
・セミナー内容の確定と広報
上記を実施しながら内容を詰めていく。また、セミナーの広報をしていく。

(補足)
以下は、体験型の「視覚障害者雇用理解セミナー」のイメージです。
一昨年企業に対して実施したアンケートにより、視覚障害者の雇用にあたって、@通勤と移動への不安A見えない人にやらせる仕事がわからない、という不安、この2点の問題が明らかになりました。
雇用側でのこの2点の不安解消・理解を深めていく作業が大切であることが明らかになりました。
そこで、企業などに、この課題に対してセミナーの参加を呼びかけます。
このセミナーは、視覚障害者の理解を映像と体験の中から深めていただくものです。
とりわけ、具体的にできる業務の提案を行い、視覚障害者の業務を現実のものとして考えてもらうことを大切にしたい。
また、事務職には欠かせない、音声パソコンの理解にもつなげていきたい。
将来的には、毎月開催するようにしたい。
また、出前の企画も考えたい。
そして、このような活動から、活動資金の蓄積を行っていきたい。

1 内容
@啓発ビデオ上映
A白状歩行の体験
B音声や拡大によるパソコン操作の紹介と体験
C雇用助成制度のメリットの説明

2 対象
・企業や団体、公的な職場の人事関係者を対象にしたもの
・企業・団体の研修やボランティア講座

3 実施場所
・会場を借りて、「セミナー」に参加してもらう。
・出前セミナーも考える。

4 実施者
タートルの会員が実施。

5 費用
・セミナー参加費を設定する。
・出前セミナーは、いくつかのコースをそろえ料金設定をする。

A 第3回雇用継続支援セミナー
日時:11月17日(水)
会場:中野サンプラザ
昨年の形態を基本とするが、昨年の反省に立ち、7月には広報開始する。
テーマ:「職場において求められる支援は?」

Y 経営担当

今後、タートルの目標・目指すもの、およびタートルの抱えている現状の問題から「相談事業の拡充」、「財政基盤の強化」、「会員確保」、「スタッフの強化」の4つのキーワードを重点項目とし、以下新たな施策を事業の活動の一貫として行います。

○相談拡充の施策
→相談員育成や相談事業の地域拡大。
○助成金情報収集施策
→助成金活用目的における情報収集チームの新設。
○福祉機器展開催施策
→福祉機器展などを実施し、宣伝による業者からの広告収入を得る。
○広報強化施策
→広報担当を立ち上げタートルの知名度を上げる。
○ボランティア人員確保施策
→学生を対象としたボランティア人員の確保を行う。

Z コンプライアンス担当

個人情報保護に対する基本原則を基に、さらにWEBや情報誌における個人情報の取り扱いについて検討する。

平成22年度 特定非営利活動に係る事業会計収支予算書(案)

(表を省略しました。)

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☆☆ トピックス ☆☆

「補装具における遮光眼鏡の取扱指針改正のお知らせ」

平成22年3月31日に厚生労働省から出された「補装具費支給事務取扱指針の一部改正について」(障発0331第12号障害保健福祉部長通知)において、遮光眼鏡が身体障害者(視覚障害)の補装具として適用される際の支給対象者の要件等が見直されましたので、お知らせします。

(旧)補装具の対象者について(種目:眼鏡,名称:遮光眼鏡)
対象者:網膜色素変性症、白子症、先天無虹彩、錐体杆体ジストロフィーであって羞明感をやわらげる必要がある者

(新)補装具の対象者について(種目:眼鏡,名称:遮光眼鏡)
対象者:以下の要件を満たす者。
1) 視覚障害により身体障害者手帳を取得していること。
2) 羞明を来していること。
3) 羞明の軽減に、遮光眼鏡の装用より優先される治療法がないこと。
4) 補装具費支給事務取扱指針に定める眼科医による選定、処方であること。
※この際、下記項目を参照の上、遮光眼鏡の装用効果を確認すること。
(意思表示できない場合、表情、行動の変化等から総合的に判断すること。)
・まぶしさや白んだ感じが軽減する
・文字や物などが見やすくなる
・羞明によって生じる流涙等の不快感が軽減する
・暗転時に遮光眼鏡をはずすと暗順応が早くなる
※遮光眼鏡とは、羞明の軽減を目的として、可視光のうちの一部の透過を抑制するものであって、分光透過率曲線が公表されているものであること。

この改正により、これまでのように支給対象者を4疾患に限定するのではなく、上記の要件を満たす対象者へ適用されることとなり、「遮光眼鏡」の定義も明確化されました。
1)〜3)の要件も、4)の「補装具費支給事務取扱指針に定める眼科医」についても、この改正による変更はなく、この度、要件を明確化する目的から、明文化されたものです。
なお、補装具の給付は障害者自立支援法の規定に基づいて各市町村が行う事務であり、自治体によって実際の取扱いが異なる場合もありますので、各自、現状等をご確認ください。

以上

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編集後記

今号は福祉制度についての講演記録と、遮光眼鏡に関するトピックスを掲載しました。世の中が「チェンジ」する中で、私たちの身近な制度も少しずつ変化しているようです。

昨年度の交流会は、インターネットのスカイプを利用して東京・大阪・福岡の会場をジョイントして開催されました。また、総会の議決権行使も今回からメールでも可能となりました。コミュニケーション手段の発達は人と人との交流を広く便利にしてくれました。
6月19日(土)は通常総会が開催されます。掲載の総会資料を参考になさってください。
皆様の総会へのご出席をお待ちしております。

(理事 杉田 ひとみ)

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