【表紙】 視覚障害者の就労環境におけるICT支援状況調査 アンケート結果分析と課題 2023年12月 認定NPO法人 視覚障害者の就労を支援する会(タートル) ICTサポートプロジェクト c NPO Turtle 2023. All Rights Reserved. 【目次】 目次 1. 背景 2. アンケートの実施方法 3. 回答者の状況と回答件数 4. アンケートから見えてきた課題 5. まとめ 【スライド3】 1.背景 ・タートルでは、長年視覚障害者の就労に関する相談を実施しているが、  近年、職場のICTに関する相談が増加してきている。 ・2020年に実施した職場のICT環境についてのアンケートでは、  84.6%の人がICTに関して何らかの困りごとを抱えていることが判明した。  ※2020年12月実施のアンケート:https://www.turtle.gr.jp/ict/report/193/ ・困っている要因は、OSやアプリの急速な進化、仮想環境、リモートワークなど  従来とは異なるICT環境の出現などに起因しており、視覚障害者にはこうした  環境変化が大きな負担となっている。 ICTサポートプロジェクトでは、就労におけるICTの課題を解決するために 働く視覚障害者が、どのような支援を必要としているか、 その実態とニーズを調査するためアンケートを実施した。 【スライド4】 2.アンケートの実施方法と回答件数 ・本調査の目的:  視覚障害者の就労環境におけるICT支援状況とニーズの把握 ・実施期間:  2023年6月25日〜2023年7月31日 ・実施方法:  アンケートフォームを用意し、タートルのメーリングリストや、  各視覚障害者団体へメールでアンケートの依頼を行った。 ・回答者数: 95件 【スライド5】 3.回答者の状況 ・職業は、事務系が43.2%と多数を占めているが、他に技術系:13.7%、教員:15.8%、  専門職:14.7%、理療系:7.4%など、幅広い職種の方からご回答をいただいた。 ・居住地域は、東京が26%、東京以外の関東地方が26%と約半数が関東であるが、  それ以外の地域からも幅広くご回答いただいた。 @職業 円グラフ:回答者の職業 事務系:43% 技術系:13.7% 教員:15.8% 専門職:14.7% 理療系:7.4% 無職:2.1% その他:3.2% A居住地 円グラフ:回答者の居住地 東京都:26% 関東地方(東京都以外):26% 関西地方:12% 東海地方:10% 九州地方:8% その他:18% <地方区分> ・東京都: 東京都 ・関東地方(東京以外): 埼玉県、千葉県、神奈川県、栃木県、茨城県、群馬県 ・東海地方: 静岡県、岐阜県、愛知県、三重県 ・関西地方: 大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県 ・九州地方: 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県 ・その他: 上記以外 【スライド6】 回答者の状況(続き) ・約半数が全盲、残り約半数が弱視 (全盲:49.5%、弱視:50.5%) ・視覚支援機能の使用状況については、全回答者(95人)の約90%(85人)がスクリーンリーダーを 利用しており、弱視の回答者のほとんどは画面拡大や色反転を併用している。 B見え方 円グラフ:回答者の見え方 全盲:49.5% 弱視:50.5% C使用している視覚支援機能 横棒グラフ:使用している視覚支援機能 スクリーンリーダー:85人 拡大:44人 色反転:30人 その他:5人 【スライド7】 4.アンケートから見えてきた課題 アンケート結果からは、下記のような課題が見えてきた。 次のスライド以降、各課題について説明する。  課題@: 35.8%が専門機関での訓練・支援を受けたことがない 課題A: 職場の環境に対応できる専門的な支援が不足している 課題B: ジョブコーチなどの専門的な支援には地域差が大きい 課題C: 74%が支援を受けても解決できない課題があると回答、       解決できない課題は、「職場の業務システム」が多い。 【スライド8】 課題@ 35.8%が専門機関での訓練・支援を受けたことがない! 専門的な訓練・支援の有無 円グラフ:専門的な訓練・支援の有無 受けたことがない:35.8% 受けたことがある:64.2% 訓練・支援を受けていない(回答者数:36) 横棒グラフ:訓練・支援を受けていない(回答者数:36) 訓練・支援の必要性を感じなかった:11人 受けたい内容の訓練・支援がない:7人 情報がなく、どこに相談すればよいかわからなかった:6人 業務の都合で受けられなかった:4人 地域や制度の制限で受けられなかった:3人 その他:16人 【スライド9】 課題A 職場の環境に対応できる専門的な支援が不足している! 「職場のICT環境が使えないとき誰に支援を求めたか」と 「職場のICTの課題解決のために誰の支援が必要と思うか」の比較 横棒グラフ:誰の支援を受けたかと必要と思う支援の比較 職場適応援助者(ジョブコーチ)など外部の専門家の支援について、必要との回答が39人に対して受けたことのある人は11人 各選択肢の人数詳細は下記の通り: 職場の同僚・上司:受けた:62人、必要:67人 職場のIT部門:受けた:45人、必要:66人 職場適応援助者(ジョブコーチ)など外部の支援者:受けた:11人、必要:39人 スクリーンリーダー等支援ソフトのメーカーや代理店:受けた:33人、必要:49人 支援を受けたことがない:15人 その他:受けた:15人、必要:24人 ジョブコーチなど専門的な支援が不足 【スライド10】 課題B ジョブコーチなどの専門的な支援には地域差が大きい ・支援を受けたことのある方(11人)の在勤地は、85%(9人)が東京都 ・東京以外の在勤地の方からもジョブコーチ等の支援が必要とのニーズがある ジョブコーチ等の支援を受けたことがある方(11人)の在勤地 円グラフ:ジョブコーチ等の支援を受けたことがある方の在勤地 東京都:9人、82% 愛知県:1人、9% 福岡県:1人、9% 課題解決のためにジョブコーチ等の支援が必要と回答した方(39人)の在勤地 円グラフ:課題解決のためにジョブコーチ等の支援が必要と回答した方の在勤地 東京都:17人、44% 関東地方(東京以外):5人、13% 九州地方:5人、13% 東海地方:3人、8% 関西地方:1人、2% その他:8人、20% 【スライド11】 課題C 74%が支援を受けても解決できない課題があると回答、 解決できない課題は、「職場の業務システム」が多い。 支援を受けたことで課題は解決しましたか? 円グラフ:支援を受けて課題が解決したかどうかの円グラフ 「解決できなかった」4%(3人)と「解決できたものもあるが、解決できないものもあったた」70%(57人)を合わせると74%(60人)が解決できない課題を残している 他に、解決できた:23%、その他:3% 解決できなかった課題(回答者数:63人) 横棒グラフ:解決できなかった課題(回答者数:63人) 職場の業務システム:49人 WindowsやOffice、Googleアプリの機能:33人 グループウェアやメール、Teams等のコミュニケーションツール:29人 職場のリモート環境:11人 スクリーンリーダー、画面拡大など支援ソフトウェア:24人 その他:7人 【スライド12】 5.まとめ アンケートからは、専門的な訓練・支援が必ずしも十分でなく、とりわけ、 業務システムなど固有の就労環境の課題解決につながっていない実態が見えてきた。 その原因としては、 ・ジョブコーチなど専門的な支援ができる人材の不足と地域偏在 ・公務員など職種や地域による制度面での制約 ・職場や周囲の理解不足 ・システムやアプリのアクセシビリティ対応不足 などが考えられrる。 就労におけるICT環境の課題解決には、当事者のスキルアップに加えて、周囲の理解と支援、 システムのアクセシビリティ確保が欠かせない。必要な時に必要な支援にアクセスできる 環境を実現するためには、他団体とも連携し、継続した取り組みが必要である。 【スライド13】 参考: わたしたちが考える課題解決へのアプローチ 視覚障害当事者のスキルアップ、専門家および職場の支援、 アプリのアクセシビリティ改善が不可欠 視覚障害当事者のスキルアップに加えて、ジョブコーチ等の支援者による専門的な支援と 職場の同僚・上司・IT部門の理解と支援が連携して視覚障害当事者を支え、さらに、 アプリのアクセシビリティ改善が加わることで、職場のICTの課題解決につながることを 表している図 【スライド14】 参考情報 ・視覚障害者の就労環境におけるICT支援状況調査の結果:  https://www.turtle.gr.jp/ict/research-report/1606/ ・視覚障害者の就労支援に関する用語:  https://www.turtle.gr.jp/ict/topic/terms/ END 認定NPO法人 視覚障害者の就労を支援する会(タートル)  ICTサポートプロジェクト  https://www.turtle.gr.jp/ict/ タートルICTポータルサイトURLのQRコード c NPO Turtle 2023. All Rights Reserved.