[タートルICTロゴ]  [タートルICTポータルサイトURLのQRコード] タイトル: タートルICTサポートプロジェクト ー5年間の活動成果と課題 ー 認定NPO法人視覚障害者の就労を支援する会(タートル) 山田尚文、伊藤裕美、大橋正彦、神田信、熊懐敬、高原健、松坂治男、吉泉豊春 <スライド1> 1.活動の目的と経緯 84.6%の視覚障害者が困っている職場のデジタル環境! (2020年12月にプロジェクトで実施したアンケート結果より) [目的]  視覚に障害があっても、当たり前に働き続けるために、視覚障害者の就労におけるICTのさまざまな課題に取り組む。 [経緯] 近年のICT技術の進化は、働く視覚障害者の就労機会を大きく広げる可能性がある反面、業務のデジタル化に対応するため視覚障害当事者に負荷がかかるなど、新たな課題が出てきている。 こうした課題を解決すべく、タートルでは2020年11月にICTサポートプロジェクトを立上げて活動している。 <スライド2> 2. 5年間の活動実績(2025年8月まで) (1) ICTグループメールによる情報交換 就労におけるICTに関する課題解決と情報交換の場として運営。 困りごとを投稿すると、参加者の中で詳しい人が解決策を提案するなど参加者間で協力し助け合う好循環が生まれている。 ・2025年7月現在の登録者 412名 ・当事者だけでなく、支援者、協力者など幅広い参加者で構成。 ICTグループメール内で扱われたトピックの例 ・Office製品(Word、Excel、Powerpoint) ・Googleスプレッドシート・ドキュメント ・メール(Outlook、Thunderbird、Myメール、Gmail等) ・コミュニケーションツール(Microsoft Teams、Slack) ・業務アプリ・・社内ツール(サイボウズOffice、Sharepoint等) ・PDFのスクリーンリーダーでの読み上げ ・スクリーンリーダー(JAWS、PC-Talker、NVDA、ナレーター) <スライド3> (2) ICTサロン(奇数月の第1日曜日に定例実施): 22回実施  ICTサロンでは、ITの専門家による講演会やパネルディスカッション、質問を持ち寄って皆で解決していく「なんでも相談会」、ICTに関するトピックを短時間で発表していく「ライトニングトーク」など、さまざまな企画を行っている。 [これまで実施した内容] ・テーマを決めた講演会・パネルディスカッション:  8回  ・第1回 ロービジョンならではのICTの工夫を共有しよう!  ・第2回 スクリーンリーダー徹底解説! 各種スクリーンリーダーの特徴を知ろう!  ・第5回視覚障害者の職域環境向上を目指して・・『ジョブコーチ』が語る就労現場での支援の実際と課題  ・第11回 スペシャリストに訊く〜スクリーンリーダーや視覚支援機能を使うPCのベストプラクティスとは〜  ・第12回スペシャリストに訊く〜スクリーンリーダーや視覚支援機能を使うPCのベストプラクティスとは〜  ・第13回 デジタル庁がミッション実現に向けて取り組むアクセシビリティとは  ・第18回 PC-Talker最前線〜開発者が語る進化と未来展望〜  他 ・ビギナーズサロン/なんでも相談会:  8回 ・ライトニングトーク: 2回  ・NEXT VISIONとの共催就労イベント:  2回 ・その他:  2回 <スライド4> (3) ICTポータルサイトによる情報発信 [主なコンテンツ] ・イベント情報、お知らせ ・活動紹介、活動報告 ・調査報告(アンケート結果等) ・ノウハウ集 ・事例集(インタビュー記事等) ・職場や開発者向け情報(合理的配慮事例など) [タートルICTポータルサイトトップページの画像] (4)アンケートによる実態調査(4回実施) 定期的にアンケートによる実態調査を行い、ポータルサイトで公開している。 アンケート調査内容 実施日 視覚障害者の就労におけるICT環境実態調査アンケート 2020年12月 スクリーンリーダー・拡大機能利用のWindowsPC環境実態調査 2021年11月 視覚障害者の就労におけるICT支援状況調査 2023年7月 職場における視覚障害者のICT実態調査2025 2025年4月 本発表で報告 ※調査報告:https://www.turtle.gr.jp/ict/activity-2/research-report/ [調査報告ページURLのQR コード] <スライド5> 3.職場における視覚障害者のICT実態調査 2025 ・調査の目的:  視覚障害者の就労環境におけるICTの実態と課題を把握する。 ・実施期間: 2025年4月 ・総回答数: 74件 ・回答者の状況: 表1 職種(複数回答あり) 事務系 37 50% 技術系 20 27% 教員 3 4% 営業・販売・サービス 6 8% 理療系 8 11% 専門職 10 14% その他 4 5% 無職 1 1% 注:%は、回答総数74人に対する% 表2 年代 10歳代 0 0% 20歳代 4 5% 30歳代 5 7% 40歳代 20 27% 50歳代 29 39% 60歳代 15 20% 70歳代以上 1 1% 合計 74 100% <スライド6> (1) 職場で困っている項目 職場で使用しているグループウエアや業務アプリなどの社内システム、アクセシビリティに配慮されていないPDFや画像データの把握に苦労している視覚障害者が多い。 図1 職場で困っている項目(回答者数74人:複数回答) グループウェアや業務システムなどの社内システムについて 39 53% OfficeアプリやGoogleアプリについて 21 28% 上記以外のアプリについて 12 16% PDFの扱いについて(中に含まれている画像、表、段組みの把握など) 44 59% 各種画像データの扱いについて 42 57% リモート環境について 10 14% セキュリティによる影響について 21 28% 特になし 9 12% その他 2 3% 注:%は、回答総数74人に対する% <スライド7> (2) 職場で困っていることの具体例(ICT実態調査2025より) @ グループウェアや業務システムなどの社内システムについて 勤怠管理、出張・休暇申請、業務支援システム、SharePointなどがスクリーンリーダー 非対応で使えない。 A OfficeアプリやGoogleアプリについて Google Workspace、Classroom、MsTeams、サイボウズなどで操作が難しい、情報取得が困難。 B 上記以外のアプリについて Visual StudioやAdobe製品などで文字が小さく拡大しても見えにくい。 アプリごとに操作方法が異なり、毎回使い方を覚え直す必要がある。 C PDFの扱いについて(中に含まれている画像、表、段組みの把握など) スキャンPDF、画像形式の図や表、PowerPointのPDFなどがスクリーンリーダーで読めず理解できない。 WindowsナレーターがPDFを読めない。 D 各種画像データの扱いについて eラーニングや社内教育の教材が音声読み上げに対応しておらず、内容を把握できない。 コピー機や電子錠などがタッチパネル前提で音声読み上げがなく、自力での操作が困難。 E セキュリティによる影響について PC-Talkerのアップデートが制限される。 <スライド8> 4.まとめ 1.5年間の活動成果 ICTグループメールやICTサロンなどによる参加者間の情報交換が定着し、困りごとを互いに解決する環境が構築できた。 2.視覚障害者の就労におけるICTの課題(アンケート結果から) 社内システムのアクセシビリティや画像や表、段組みされている等のPDF文書、画像データの把握など、視覚障害者のスキルアップだけでは解決できない課題が現在も継続していることが浮き彫りになった。職場環境に対応できるジョブコーチ等の専門的な支援と職場や社会へのアクセシビリティ理解への啓発が重要。 3.今後の活動に向けて 視覚障害者の就労問題に取り組む当事者団体として、下記取り組みを継続。 参加者間での情報交換や課題解決のための場を継続して提供する。 アンケート等による実態把握と一般への情報発信を強化する。 他団体や関係機関との連携を強化し、継続して課題解決に取り組む。 [タートルICTロゴ] 認定NPO法人視覚障害者の就労を支援する会(タートル) ICTサポートプロジェクト https://www.turtle.gr.jp/ict [タートルICTポータルサイトURLのQRコード]