第6回  ビジネスシーンにおける スマートデバイスの可能性 講師  西田 友和 氏 (準認定ファンドレーザー) 開催日 2017年12月2日  1 話の目的と自己紹介  本日はたくさんの方に来ていただきありがとうございます。本日参加されているみなさんは、いろいろな職種で仕事をされていると思います。また、そのキャリアも様々だと思います。  その中にはスマートデバイスはかなり使っていますという人もいると思います。また逆に使っているけれども、どうやって使っていいのかわからないという方もいるかもしれません。  そもそもiPhoneとかスマートフォンに乗り換えようかと、まだ迷っているという方も、もしかしたらいるかもしれない。  私が今日お話しすることは、スマートデバイスのHow toではありません。もちろん、最低限のところは話すこともあると思うのですが、それよりも強調したいのは、そういうスマートデバイスを使って、何ができるのかということであり、スマートデバイスを使う目的なのです。スマートデバイスやパソコンはあくまでも道具で、その道具を使って自分がしたいことをどんなふうに実現できるのか。それを私自身の経験を参考にしていただき、是非いろいろな意見を皆さんで、共有していければいいなと思っています。私は講師というよりは、事例を提供する立場のスピーカーだと思ってお聞きいただければと思います。  まずは自己紹介をしたいと思います。私は西田友和といいます。中途障害で中学の時に失明し、以来全盲です。大学を卒業した後に、情報系の一般企業に入社しました。丁度私もそのころにスマートフォンなどを使い始めました。ビジネスの場で、スマートフォンは有効なのではないかという期待が、使い始めたきっかけでした。  いまは転職をしてロゴス点字図書館というところにいます。来年からはそこの館長をすることになっています。今40歳ちょうどなのですが、いろいろな資格試験などを勉強したりするうえでも、スマートフォンやiPhoneを非常に活用できました。その辺りのエピソードも踏まえて、共有できたらなと思っています。 2 使用デバイスの紹介  いまiPhoneやアンドロイドといったスマートフォン、タブレットなどを使っている方、挙手していただけますか? (芹田事務局) ほぼ9割ぐらいの方が使っていらっしゃいます。 (西田) かなりの方がすでに使っていらっしゃるようですが、まだ全然使っていないという人にとっても、これなら使えるかもという可能性を感じてもらえればなと思っています。  私がスマートデバイスを使い始めたのは、2010年でした、iPod touchを試してみて、これならいけるかなと思いました。その後、iPhone4Sというのが2011年に出たと思うのですけれども、そこからiPhoneを使いだしていまに至っています。  今日持ってきたデバイスを幾つか紹介します。いま使っているのはiPhoneとiPadです。iPad はiPad proというのがシリーズでありまして、6月に新しいバージョンが出ました。それで15インチのサイズの物を使っています。弱視の方もいるかと思いますが、いま手に持っているこんなのです。これに外付けのキーボードを付けて使っています。  それとApple watchです。御存じですか? これもAppleが出しているiPhoneで、腕に着けて使います。ちょっと音は小さいですけれども、これは2015年から出ています。初代の物も使っていましたが、先日、シリーズ3というのが出たのでそれを購入して使っています。シリーズ3は、Wi-Fi&GPS&セルラーモデルで、iPhoneがなくても電話ができたり、メールを受け取ったり、通知を受け取ったりすることができる点が売りになっています。それを結構便利に使っています。クラッシックなレザーバンドなんかを着けてスーツなどを着ても大丈夫なような仕様で使っています。  あと周辺器機では、カバンに入れられるポータブルなスキャナー、富士通の製品でスキャンスナップという機器を使用しています。そのほかにも、airPodというブルートゥースイヤホン、iPhoneなどに文字入力するときには、Microsoftが出しているブルートゥースの外付けキーボードを使っています。  そして一応PCも持ってきています。スマートデバイス系の物はAppleの製品が多いですが、視覚障害者にとって、AppleのMacは使いづらいのではないかと思います。私もPCはWindowsを使っています。バイオのモバイルでoffice10が入っています。  家では最近話題のAIスピーカー(スマートスピーカー)を使っています。Googleホームとかアレクサーを搭載したスピーカーです。私はGoogleホームを買って家で使っています。この辺はまだまだビジネスでは改善の余地があると思いますけれども、可能性のあるデバイスでもあるので、その辺の話なども折を見て共有できるかなと思っています。 3 ビジネスで活用できるということ   ビジネスで使うというのが今回のテーマです。仕事・ビジネスに使う。こういったときに、軸となるのはなにか、どういうことなのかなと私なりに考えました。グラフィック系の人とかあるいはプログラミングをする人や企画をする人とか、仕事によって、それぞれ違うと思うのですが、私はビジネスで使えるかどうかを考える時に、切り口というのが必要だと思ったのです。  もしかしたらメーリングリストでも共有されているかも知れませんが、今回は3つの軸で考えてみようと思います。  1つ目は、情報の収集です。つまりインプットです。世の中にたくさんある情報をいかに効率よく、かつ自分の欲しい物を集めてくるか。ビジネスでは重要な要素です。これはやはり外せないのかなと思いました。  2つ目は、情報の管理という表現を使ってみました。マネージメント、マネージするということです。タスクの管理であるとか、連絡帳や予定表の管理などです。またカスタマーや顧客(クライアント)とか個人の情報をいかに管理して効率よく使えるかということもあります。ビジネスでは外せないと思っています。  3つ目は、情報の生産です。生産は産み出すということです。アウトプットと言ったほうが、イメージがわくかもしれません。仕事というのは付加価値をいかに産み出すかということです。与えられたことを実際にやるということもあると思いますが、自分の価値をどう表現していくかという意味で、自分の中にあるもの、集めた情報を含めてそれをどう外に出し、生産物を作っていくか、ということです。  インプット・マネージメント・アウトプット。この3つを、いろいろなデバイスをうまく使ってスマートに美しく効率的にできるかどうかが1つの鍵になるのかなと。あくまでも私が定義した意見なので、もっとこんなイメージがあるという方は、あとで共有くださってもかまいません。  この3つの軸にそって、今日は話をしていこうと思っています。 4 インプット iPhoneを使って新聞を読む  私が2011年にiPhoneを持った頃は4Sといわれる機種でした。ボイスオーバーは付いていたのですけれども、日本語の入力で漢字カナ変換というのができなかった。全部カナ読みだったので、こんなの使えるのかと周りの人にも言われたりしました。ただ、私には目的意識がありました。さきほど、今回の1つ目のテーマであげた、情報の収集です。  実は、2010年に日経新聞が電子化されたのです。電子板の日経新聞です。読んでいる人もいるかも知れません。私は中途失明で結構辛かった中でも、「これができるようになった! テクノロジー万歳!」みたいな経験が幾つかありました。その中で、PCを使えるようになって日本語の漢字仮名文字による文章が作れるようになったことは、結構うれしかったことでした。辞書とかを引けるようになって、メールを書いたり、情報を自分である程度収集できるようになったことが、うれしかったです。  その中でも新聞を読めるようになったというのは、私の中ではインパクトのある大きな経験でした。日経新聞は、広くビジネスに関する情報が掲載されています。ここにいらっしゃる方の中にも、読んでいる人は多いと思います。  私も一般企業で営業や企画もやっていましたので、職場ではそういう話題にもなります。いろいろなクライアントと情報を得る中でも、日経新聞は読めるなら読んだほうがいいし、面白いです。スマートデバイスを使えば、電車の中で朝刊や夕刊が読める。この辺は非常にうれしかった。  また、最近はオンラインの講座が増えてきている。私も30代の時に、中小企業診断士やフィナンシャルプランナーとか、最近はファンドレイザーといって、非営利の団体の資金調達の専門性を問うような資格も受験したのですが、実際それで受かったりもしています。  こうした資格試験は、90年代は点字で勉強しなくてはなりませんでした。しかし、まず点字のテキストはないですし、点訳するといってもそれを点字にする人がいない。かつ新しい情報が結構重要なのですけれども、タイムラグをうめるのが難しい。そもそも、以前はそんなの勉強できなかったと思うのですが、今はオンラインの授業がネットにいろいろあります。そういうものを使うと、自分でも勉強ができます。  いま社会人になってからの学びというのが、非常に注目されています。これだけ時代が変化している中では、仕事に付くことがゴールではないのです。いかに勉強して、自分がキャリアを積んでいくか。これは、見える、見えないは関係なく、必要な考え方だと思うのです。それを実現できるデバイスだということを、私はすごく感じています。期待を持って購入して、そのように使うことができたと思っています。  日経新聞を読んでいる人はいますか、どれぐらいいますか。 (芹田事務局) お一人です。 (西田講師) そうなのですか、なるほど。では、ちょっとデモをして、こんなふうに読めるということをやってみましょう。  私はiPhoneSEという廉価盤のiPhoneを使っています。廉価版でいいのと思われる方がいるかもしれません。しかし、目的と使える機能を考えたら、別に私はこれでも大丈夫かなと思っています。  私がどんなアプリを入れているのか、紹介します。  使っていない方に説明すると、スマートフォンは最初の画面にアプリというものを入れていきます。パソコンでいうソフトみたいなものです。それを使いやすい場所に置いておくのです。人によってどんなものをどこに置いておくかで、この人はこのように使っているのだと、ある種、本棚を見るとその人の興味がわかる、みたいな感じだと思います。ここでは、私自身はどんなアプリを一番最初のページに置いているかを紹介して、あわせて日経新聞のデモなどをやってみます。サウンドのカチカチ音はオフにしていますが、そのほうがサクサク動くためです。  一番上の段は時計です。その右に天気、乗り換え案内、「safari」(ブラウザー)があります。二段目はkindle電子書籍、ibooks、これはAppleが提供している電子書籍です。その隣にボイスオブデイジーがあります。その横にはミュージックのアプリ。これは音楽を楽しむためのもので、Appleミュージックを入れています。  今日のテーマの日本経済新聞は、三段目にあります。これはアプリではなくホームページのURLを貼り付けるという形で置いています。その隣のNHK ニュースは、NHKが出している無料のアプリなのですけれども、これ,結構ボイスオーバーでもちゃんと読みますし、無料のわりにニュースの情報量、質がしっかりしているのでお勧めです。  「アルキキ」というアプリはご存じですか。朝日新聞が提供しているアプリで、電子音声で1日の主要な記事を読んでくれます。情報収集では結構使えます。  「カメリオ」はご存じですか。RSSフィードみたいなテーマを自分で設定したら、そのテーマにあった情報を自動で収集してくれる。このアプリも自分のすきなテーマを25個選べます。興味のあるテーマをいくつか設定しておくと、暇な時にいろいろな情報が得られます。  「アマゾン」というアプリも入れています。私はこれを結構使っていてスマートフォンでアマゾンを使うようになってからは、PCでアマゾンで買い物をしなくなりました。全部スマートフォンでやっています。「appストア」もあります。アプリを入れるアプリです。  「ドラフツ」って知っていますか。これはメモの高機能エディタというアプリです。これはあとで紹介します。  「エバーノート」、これも有名です。これもあとで紹介します。  「Drop box」、これはクラウドの老舗みたいな所で、情報を集めていろいろなデバイスで使えるものです。  「Outlook」もあります。「Outlook」はWindowsではないの?という話があるかと思いますけれども、この辺もあとで紹介します。  「オムニフォーカス」です。「オムニフォーカス」はタスク管理とかプロジェクト管理ができるアプリです。  「Toul」です。これもMicrosoftが出しているタスク管理のアプリです。  「設定」です。これらが最初のページにおいてあるアプリです。意外とシンプルだと思います。知っているアプリもあるし、知らないアプリもあると思います。  あと「ウィゼット」というのが左側にある。ここに自分がちょっと見たい情報を置いておけます。  そこは天気、バッテリー(iPhone・Apple watch)、友達を探す、ドコモのアプリでいま何ギガ使えるかというのも表示できたりします。「マップ」でこの周辺に何があるのかを見る。このような使い方をしてます。  アプリの並べ換えとかは昔に比べてやりやすくなっています。入れていったはいいけれども、整理ができていないというのがあったら、順番を見直すだけでもすっきりスマートになった気がします。  それでは日経を読んでみましょうか。 (以下の日経新聞の読み上げデモです。ここでは割愛します)  情報収集ということでは、気に入った記事などを残して置きたいと思うのですが、そういう時に私が使っているのは、さきほどふれた「エバーノート」というアプリです。記事などをキープしておく方法はいろいろなやり方がありますが、「エバーノート」のいいところは、1タップで全部の記事を保存してくれることです。メモなどではURLだけを張るとか保存とか面倒だったりするのですが、「エバーノート」はそのあたり使いやすいです。  このほかにも、「エバーノート」には様々な機能がありますが、私が便利だと思うのは保存するとどんな端末からもそれが見られるということがあります。また、最近私はスキャンスナップというスキャナーを使っているのですが、これでスキャンしたデータを無線で「エバーノート」に飛ばすこともできます。  「エバーノート」を開けてみます。さっき取ったのがこうやってもう追加されて入っています。こんな感じですぐに保存される。読んでその時に気になったことを、すぐに保存できるわけです。このアプリは 多機能なのですが、私は多機能なものを使いこなす1つのコツは、使いたい機能をしぼるということだと思っています。取りあえず保存できたらいいかなとか、取りあえずやってみて、もっとこうしたらいいというところで、また調べていけばいい。最初から全部をやろうと思わずにまず使ってみるということがポイントなのかと思います。  さきほど「kindle」とか「ibooks」を紹介したと思いますが、電子書籍を買ってそのまま読むということもできます。ビジネス書などには、点訳・音訳されていないものがいっぱいありますけれども、それがかなり読めます。  職場内で、PDFとかパワーポイントの資料をもらったりしませんか。それをibooksとかでビューアーとして読ませることもできます。オンラインの授業とかそういうものでいただいたデータなどを、ibooksに全部入れて通勤の時に勉強に使ったりしていました。  ここまで、情報のインプットについてお話してきましたが、スマートデバイスは、自分の知りたい情報の収集や、勉強において、便利な道具であることを感じていただけたかなと思います。 5 情報の管理と端末の連携  次に情報の管理についてお話します。私が最初にPCを持った頃は、Windowsを使っていたのですが、PC以外の端末を連携させたら便利かと思いました。WindowsはWindowsでメールを見て、iPhoneはiPhoneでまた違うメールを見てというよりは、同じメールをいろいろな端末で見れたら便利ではないかというアイディアです。私が買った頃はMacどうしであれば全部できたのですが、Windowsだとなかなか同期が難しかったのです。そこはかなり改善をしてきています。  さきほど私のiPhoneの最初の画面を見ていただいた時に、メールのソフトは「Outlook」を使っていると説明しました。なぜ「Outlook」なのかというと、私はGoogleのGメールを使っているのですが、プッシュで来た時にすぐに受けとれないというデメリットがある。GoogleのGメールを何とかリアルタイムで受け取れる便利なアプリはないかと探した時に、たまたま見つけたのが「Outlook」だったのです。  「Outlook」はWindowsだなと思って、いろいろ調べると、Microsoftが自社で開発するというより、他社のプラットホームで動かせるソフトウェアを積極的に提供しようという方針でした。Appleでも無料のOutlookを作っており、非常に使いやすいメイラーであることがわかりました。  「Outlook」でいいところというのは、Windowsとの連携というのが、非常にしやすいのです。例えば、Windowsの「Outlook」で、予定表とか連絡帳を管理したものを、全部同じアカウントで同期させるということが簡単にできるようになった。職場のWindowsPCに入れた予定表が、私のiPhoneとかApple watchにもすぐに同期されることができるようになったわけです。 WindowsとApple製品の連携というところで、自分のスマートデバイスの環境が、いろいろな場所で使える可能性が広がったと思ったのです。  あとクラウドですが、私は「Drop box」を好んで使っています。「Drop box」を使っている人はどのぐらいいますか。 (芹田事務局) 7名います。 (西田講師) なるほど、「Drop box」というのは、クラウドと言われているサーバーに自分のデータを全部置いておいて、いろいろな端末でそれを参照したり編集したり閲覧するというようなことを可能にするサービスです。これを使うと、例えばWindowsで使ったデータをその「Drop box」のフォルダに置けば、それがiPhoneやiPadでも見られたりする。こういうシームレスな連携が可能になりました。これはボイスオーバーでも十分使えます。  ここは是非、各端末をどう使うかというよりは、その端末間をどう連携させるかという発想で、自分の仕事と相性のいいサービスをみつけるのが、可能性を広げると私は考えています。 6 情報のアウトプット(生産)  テーマとして最後に掲げているのは、情報のアウトプット(生産)です。情報を生産するというのは、実は私も結構、ここがクリアされるとかなり仕事で使えるのではないかと考えていました。先ほど申しましたように、日経新聞を読んだり、集めた情報をkindle、ibooksを使って管理するところでは、iPhoneは結構使えているという感覚がありました。しかし何かで企画書を書くとか、レポートを書くとか、アイディアをちょっとふくらますところでは、PCのほうがいいのかなと感じていました。  この6月にiPadのプロが新しくなりました。私は全盲なので画面の大きさは関係ないので、大きいiPhoneならば、あまり魅力はないと思っていました。しかし今回はOSがiOS11になり、AppleがiPadをPCのように使えるように開発を進めているというニュースを聞きました。そこでこれをノートパソコンの代わりに使えるのではないかという期待をもって買ったのが、iPadプロだったのです。それで、使ってみてどうだったのかという話をしたいと思います。  iPadプロのモニターは10,5インチでノートパソコンより少し小さいぐらいです。タブレットとしてキーボードなしで使うのもよし、キーボードを付けて使うのもいいのです。弱視の方は、画面があると助かることもあると思います。私には画面の大きさにメリットはありませんでしたが、スペックが高いので、どう活かすかという時にやはりキーボードを付けることが必須かなと考えました。  それでiPadに、外付けのキーボードを付けることで、かなり能率も上がってきたと感じています。iPadとiPhoneの違うところは、iPadはドックというアプリをおけるところが画面の下にあり、そこには13個アプリが置ける。よく使うアプリなどをすぐに呼び出せるというところが大きいです。「スプリットビュー」、御存じですか。同じ画面に2個左右に違うアプリを置けるのです。「safari」を見ながらメモを取るとかメモに書いたものをメールに張り付けるとかが、一画面上でできるところがiPhoneと大きく違うところです。  ノートパソコンと比べると当然バッテリーの持ちもいいですし、長く使えるし、小さいのでちょっとした作業であれば、かなり使えるのではないかという実感を持っています。  作業によるのですが、アプリの中で仕事をするに当って何が重要かと考えた時に、エディタ機能がポイントかなと思いました。文章を作るアプリというものが便利かどうか、ここが非常に重要だと思うのです。メモとかほかのアプリはちょっと使いにくいと感じていましたが、それに代わる便利なアプリを2、3個みつけました。それがiPhoneの最初の画面にあった「ドラフツ」です。  「ドラフツ」は、まだ日本語対応はしていないのですけれども、ただ日本語は使えるし、そんなに難しい構造ではないので、概要だけちょっと説明します。パソコンで文章を作るときは、Wordを立ちあげてファイル名を付けて保存するという流れになります。しかし、「ドラフツ」ではファイルという概念がないのです。いきなりエディットボックスが出ます。そこに書いたものを自由に保存というか、書いた時点で同期されるということです。直感的に書けるという形です。  例えば、書いたものをEメールに送信したりとか、「safari」で検索する時には、メールのアプリを立ちあげて本文に書くとか、「safari」を立ちあげて検索の窓にテキストを書くということが一般的なやり方です。しかし「ドラフツ」を使うと、ここに書いたものをEメールや「safari」とかに飛ばすことができます。それが一番大きいかと思います。  例としてちょっと何か書いてみます。いま「新宿区」と書きました。「ドラフツ」には幾つかメニューがあって、リンクをハイライトしたり段落で簡単に並び変えたり、そういう機能も付いています。これのいいところは、文字カウントが付いている。それで、いま何字書いたか、3キャラクターというと3文字です。  アクションズという所にちょっと入ってみます。Eメールを選ぶとメイラーが、自動的に立ち上がって本文の所に、さっき下書きした「新宿区」が入ってくるのです。私はちょっとおっちょこちょいなので、Eメールを立ち上げたときに間違えて送信を押したり、下書きをしたものをどこにおいたかわからなくなることがあります。「ドラフツ」の中にとりあえず書きたいことを下書きして作っておけば、作ったところでメイラーにもっていける。そういう意味では非常に便利だったりします。  メッセージでも同じことができます。コピークリックボードと言いましたが、クリップボードにも転送できます。ちょっと書いたものを何かしたいという時に、クリップボードに飛ばせます。  「ドラフツ」というのがテキストの窓になっているというイメージです。思いついたものを書いていき、それをEメールに飛ばすこともできるし、Googleで調べることもできる。ファイル名を付けて残すこともせずに、テキストを中心に、いろいろなサービスにアプローチできるのです。私自身はテキストを多く使うので、アイディアを貯め込み、ここにアイディアを流すこともできます。いわゆるWindowsとは違った形で、そのアイディアを貯めたり書いたりすることが実現できることで、私は気に入って使っています。  「ユリシーズ」というアプリもあるのですが、それもファイルという概念がなくて、貯め込んだものを組み合せてファイルを作っていくというエディタです。これも玄人ごのみのアプリとして皆さん使われているし、ボイスオーバーにも対応しています。 7 課題と展望  皆さんといろいろな話をしたいということで、アイディアをいっぱいお出しした上で、私ならこうとか、これはどうなっているのですかという質問を、是非後半では受け付けたいと思っています。最後に課題と展望を、3つ考えてみました。 1つ目は、仕事で使うWindowsとスマートデバイスをいかに連携させるか、ここが可能性を広げるきもだと思っています。皆さんの業務でもそれをイメージしてもらえたらと思います。 2つ目は、iPhoneやアンドロイドでもそうですが、アクセシビリティがどうしても100%ではない部分があるということです。アプリケーションを開発するうえで、アクセシビリティに対応しているかどうかということが、結構重要なのです。安いアプリとかいっぱいあるのですが、あまりアクセシビリティに配慮していなくて、これ使えたらいいのになと買ってみたけど使えなかったという経験が私は結構あります。  開発する側に、もっとアクセシビリティに配慮してほしいという働きかけを、我々ができればいいのかなと。こんなアプリが使えますとか、ビジネスならこんなことができるのではとか。まさに今日の勉強会などはそうだと思います。一般のアプリでもこれだけ使えますと、情報交換するようなフォーラムや勉強会がもっと増えていけば、我々の可能性が、もっと広がるのではないかと思っています。  あと1つは、可能性を広げるためにということで、仕事を個人でやったり管理職であったり、そういう所にはある程度裁量は効くと思うのですが、組識に属してたりすると、その組織のPCと自分のデバイスをひも付けるというところって、見える見えないは関係なく課題だと思うのです。そういう個人デバイスをどう組織のデバイスとひも付けするか。あるいは組織で準備してもらえるか。そこを個々のケースごとに解消できれば、可能性が広がるのかなと思っています。  結論ですけど、スマートデバイスなどの端末とWindowsとかの連携、アプリのアクセスシビリティ対応、そして組織と個人間の問題解消、この辺りが解決されれば、ビジネスにおけるスマートデバイスの活用・可能性は十分あると思うし、これからもどんどん広がっていくのではないかというのが私の意見です。  申し込んでも定員オーバーで来られなかった方もいるくらいなので、テーマとしては面白いと思うのです。是非このような使い方ができるとか、こんなアプリもあるというのを、今日のようにもっともっと共有できるような場が増えていけばいいと思っています。いろいろな端末をここに置いてますので、個別の質問も受けられると思います。是非後半はそのあたりを皆さんで勉強していければと思います。簡単ですが前半のスピーチは以上とさせていただきます。ありがとうございました。