『どこへ行くんや?

─見えても読めへん、読めても見えへん─』

和田 光司 著

体裁:A5判・280ページ/自費出版(下のフォームからご注文下さい。


著者からのメッセージ

読んでくださる皆様へ
 私、和田光司は神奈川県に住む‘働く中途視覚障害者’です。
 この本は、関西に住む親友との出会いから始まります。生後間もない頃に知らずして飲んでしまったヒ素入りの粉ミルクの中毒被害によって、その後の人生での文字の読み書きの殆どを奪われてしまったその親友と、人生の中途で視覚障害者となって見ることの殆どを奪われてしまった私との交流を中心に、彼と旅をした全国各地での想い出や大阪での想い出などをまとめてみました。
 前半はまだ私が免許証を持っていた頃にバイクで全国を旅したこと、中半は免許証を失効し電車やバスでの旅、後半は白杖での旅なども思いつくままに記憶を頼りに書いてみました。
 また、勤務先からの排除や復帰までのこと、先日亡くなった中途失明した母のこと、聴覚言語の障害者だった父のこと、そして、このいい加減な私の生き様など、日記ならぬ年記風にぐだぐだと書きつづりました。
 この本の出版にあたっては、自ら同人誌を主宰している私の職場の同僚に大変お世話になりました。その同僚の全面的な協力と支援によって、同人誌「詩苑」の第75号として出版してもらう事が出来ました。
 去年中には出版をする予定でしたが、ヒ素中毒被害者の親友の写した写真と、全盲の母が書いた習字を本の中に入れることにしたために年内の出版ができなくなりました。出版とはいっても、いわゆる出版社を用いず、あくまでも自前での出版です。
 もしも読んで下さる方がありましたら、感想などをお聞かせいただければ幸いです。そして多くの方々と心の絆が結ばれればと思っております。
和田光司

編集後記より

 和田さんとの御縁をなんと説明すればいいのだろう? 彼が視覚障害者となって私の勤務先に配属された経緯は本文に譲るとして、それまでは人の噂と私の中では彼は眼が悪くなる前は日本中を旅行して歩いたとかローカル鉄道にやたら詳しいとか歌が上手いという程度の認識しかなかった。
 事の始まりは個々の旅行先の話題から、和田さんが「俺、こういう原稿を書いたよ」、「じゃ読ませてよ」という事で読んだ人が面白いと言い、自費出版の情報なども提供したらしい。そこで誤字脱字だけでも校正してくれる人が必要になったようだ。
「細矢さんよぉ、校正できるか?」と和田さんに聞かれた時、私は七十四号の編集を抱えていて、原稿を預かってもすぐには読めない状況だった。職場では同人誌主宰を公言していなかったこともあって、「本職の校正はしたことがない」と断わってから「普通に小説を読むような感覚で読むだけなら」と原稿を預かることにした。それが六月か七月の頃だった。勤務先が同じでも部署が違えば顔を見ないうちに一週間二週間なんてあっという間に過ぎる。そのうち彼の方でも情報を仕入れたり事情も変わって来たのだろう。自費出版を諦めたと聞いて、止せばいいのに私も「ただ活字にするだけなら同人誌という手段もあるよ」と言ってしまった。もちろん彼には彼の人脈があるのだから、彼は聞き流しても良かったのである。
 八月になって、和田さんが私を探していると伝言された時に、校正の催促だろうと思って軽い気持ちで飲みに誘った。折りしも私は前月に受けた健康診断で緑内障の疑いが出て眼科を受診したばかりだった。和田さんに緑内障の知識を分けてもらおうと思ったのだが、校正の催促どころか「いつ本ができる?」と聞く。それでも、私は七十四号を印刷所に入れてから、来年三月くらいをメドに、と呑気だった。夏休みは京都に二回出掛けた。仕事は七月から十月まで二人の病気休暇が出てアルバイトが入り気が抜けない状態だったし、九月になると支部委員を引き受けた労働組合活動も秋闘本番、七十四号の編集は一向に進まず、月に三日は習い事にも通う。まさに身の程知らずの極地。
 八月の終わり頃から和田さんは介護休暇を取られた。私も忙しいままに九月を過ごした。十月になって、和田さんから電話が来た。御母堂が思わしくなく「できればお袋が生きているうちに本を」と欲が出たと言う。七十四号はまだ出来ない。和田さんの原稿を読んでみると予想以上の字数に当惑する。やっと和田さんの原稿の校正に動き出した矢先、たまたま危篤の連絡を受けた場に居合わせ、病院を見舞った。そのまま亡くなられたので、御母堂が意識していたか否かは別にして私が人生の最後に出会った人となるらしい。眼の不自由な人が痴呆の入った肉親を自宅で介護して見送られたということは並み大抵のことではない。私ももう若くはないから時々他人の死に様に出会う。その度に人は与えられた境遇で誠実に謙虚に精一杯生きて初めて安らかに逝けるのだろうと思う。
 結局、私の裁量で文章を校正していいと許可をいただいてフロッピーディスクで預かり、入力した機種と異なる私のパソコンで印刷した。それまでは完成原稿で預かって掲載するのが基本だったのであるが、以前から要望のあることでもあり単に私の勉強不足が徒になっているに過ぎない。和田さんの家で見た永尾さんの写真に引き付けられて十一月にはサークル展の予約をして来た。十二月になってから表紙に使う写真を選ぶのに、やはり写真をやる同人に同行してもらった。それから七十四号を版入し、同時に七十五号の表紙だけを持ち込み、色校正と本文版入は後日という綱渡りのようなことになってしまった。それでも当初の予定より随分と早い仕上がりだと思うが、見苦しい点は平に御容赦願いたい。これもまた、うたかたのような人生のちょっとした御縁であろう。
細矢富士子(同人誌「詩苑」主宰)

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